5月10日〜14日頃は七十二候「蚯蚓出(みみずいずる)」。
カエルや虫よりちょっと遅めにミミズが土から這い出してくる時季です。
魚や鳥など多くの生きものに美味しく食べられているミミズは、世界各国で古くから釣りに愛用されているように、あらゆる生物のエサとなっています。
なぜミミズが生物界においてそれほど人気なのかというと、ミミズの体のおよそ50~70%が、動物の重要な栄養源であるたんぱく質でできているから!
モグラなどは、1日に自分の体重と同じくらいの重さのミミズを食べるそうです。
ではそのミミズは何を食べているのかと言えば「土」です。
正確には、土ごと微生物などを飲み込んで、栄養を吸収してから、また土ごと排出しています。
体内で耕されたように柔らかくなった土は、植物にとって嬉しいご馳走。ということで植物たちもまたミミズに育てられているといっても過言ではありません。
おまけに、ミミズは死ぬと自分の体をどろどろに分解して、他の土の中の生きものや微生物のエサとなります。
つまりミミズは、地球上のほとんどの生きものに食べられている存在と言えるでしょうね。
そんなに良いなら人間にとっても栄養食になるのではないかと考えて調べてみると、このミミズ、タンパク質だけではなく、ミネラル、コラーゲン、ビタミンなどの栄養価も高く、世界各地で食材として使用されているそうです。
ニュージーランドの原住民の中には、ミミズをシチューのように料理して食べる人たちもいるそうです。
それから乾燥させたミミズは漢方で「地竜」と呼ばれ、昔から解熱剤などとして日本でも使用されています。
ちなみにミミズは生物学的には虫ではなく「環形動物」に分類され、見た目はただのヒモのようですが、よく見ると輪っかがつながったような体の仕組みをもっています。
ミミズの名前の語源は「目見ず」といわれていて、目はなく、体の前後に光を感じる細胞があり、それが目の代わりを担っています。それどころか鼻も耳もありません。
さらに土の中で生きやすく進化した為、骨もなく体全体を自由に曲げられます。
呼吸するための肺もエラもなく、表面の皮膚から酸素を直接とりこんで炭酸ガスを出します。
ミミズには、土の中のわずかな酸素で生きられる特別な血液が流れているそうでミミズってスゴい…
そんなミミズさんは4億年以上も前の地層から化石がみつかっているそうです。
ミミズは それまで海の中にしかいなかった生物が陸上に進出しはじめた最初の生物のひとつと考えられています。
一緒に打ち上げられた海藻の中に潜り込んで、当時の強烈な日光や乾きを避けながら進化してがんばって生き延び、長い時間をかけて土を作ったと言われています。
しかしながら現在、農薬などが原因で微生物がいなくなりミミズが生きていけない土が増えています。
さらに、重金属や薬剤に汚染された土壌に暮らすミミズの体には、汚染物質がどんどん濃縮されてたまっていき、それを食べる生きものたちへ影響していきます。
18世紀頃のイギリスの学者でギルバート・ホワイトという人は「ミミズというのは、自然界の連鎖において、ちっぽけで取るに足らない存在のように見える。しかしいなくなってしまったら、その重要性を思いしらされるだろう」と記しています。
改めて今日は「蚯蚓出」。
土を耕し動植物の生態系に寄与する大切な存在『ミミズ』を思い、人はその生態系の恩恵に与りながら生きてるんだという事を認識し、自然を大切にしていく事の重要性をしっかりと考えていきたいと思いました。