王女の父は病気で亡くなりました。
その時のよくある、不思議なお話です
父が骨癌から血液の癌も発症して、
昏睡状態にあった時のこと。
今日明日も知れぬという日々が1週間くらい続いて、
ずっと付き添っていた母と、
王女とY子ちゃんが交代しました。
父は若い頃に胃癌、
その後に事故で半身不随となり、
大好きだった山歩きに行けなくなり、
辛い日々を過ごしていました。
半身不随になったことで骨癌に気づくのが遅くなって、
痛みに気づいた時には、
痛みを止めることしか手立てはありませんでした。
死は捕らわれた体からの魂の解放。
そう思っていた王女とY子ちゃんは、
哀しんだり嘆いたりはもちろんなく
もうすぐ父が人間を卒業できることに対して、
よかったよかった、いいな〜、やっと体から出られるね
などなど、
父の枕元の椅子に座って、
ふたりでわいわい盛り上がっていました
すると。
看護師さんがたたっと入ってきて、
「何かありましたか! 〇〇さんの容体に変化ありました⁉️」
「いえ 何も変わりません……」
「今、ブザー押されたでしょう」
「いえ 押してません…」
「 そうですか。〇〇さんのお部屋のランプが点灯したので来たんですけど、何でもないならよかったです。
何かあったら言ってくださいね」
王女とY子ちゃんは顔を見合わせました。
「…………」
ボタンはベッドの、父の頭の上に置かれていました。
王女もY子ちゃんも押していません。
でも……、
ランプが点いたのなら、
それは父がしたのでしょう
昏睡状態にある人の枕元で、
けっこう大きな声でわいわいと盛り上がって話していたので、
ちょっとうるさいからやめて
──と
看護師さんを呼んだのかもしれません
お父さん、ごめん
Y子ちゃんがいうには、
魂はすでに体から出ているから。
だそうです。
父は陽気な人だったので、
王女たちをからかったのかもしれないです
病院でのよくあるブザーのお話でした