会社の地方工場で、子会社による模擬査察(EU-GMP)があり、通訳として同行した。


当局のGMP査察は、通常、プロの通訳を使う。

ただ、模擬査察の場合は、コストの問題やら何やらで社内で調達する場合が多い。


通常、GMP査察は2手あるいは3手に分かれ、3-4日かけて行う。

だから当然、私だけでは手が回らないから他にも通訳が必要になるけれど、最近は、

「英語が得意」な現場担当者が選ばれて、交替で通訳に当たることが増えてきた。


GMP監査はGMPガイドラインにのっとり、システマティックに行われるため、通訳が本業でなくても現場が分かり、英語が得意な人間なら、数回同行すると、大体の要領はつかめるらしい。


で、服装の話。


最近の査察では、私は黒いスーツを着て、他の「通訳」は(製造現場の)制服や、よりカジュアルな服装というケースが増えてきた。


そうなると、気づいたのは

-他の担当者は名前で呼ばれ、

-私は名前を憶えてもらえないまま「通訳さん」と呼ばれるのだ。



社員証を首から下げているのだけど。


でもまあ、それだけ「黒いスーツ」が分かりやすいということだろう。


ということで、連日、黒スーツを着続けた。


しかし、もともと黒を着慣れない私。



3日で、飽きた。



プロの通訳さんは日常的にこのような格好で、大変だなあ。。。

ある日。


隣の部署のAさんから、「グローバルマニュアル」の英訳依頼がメール送付されてきた。



何の説明もなく、ただ「お願いします」としか書かれていないメールに対して、


「納期はいつですか」とメールで聞くと、


私は事務局のBさんに、日本語原稿を作成して雨音さんに翻訳依頼してと言われただけで詳しいことは知りませんという返事が返ってきた。


Bさんに聞くと「私は事務局だから関係ない。」と言われた。



そんなわけないだろう。



ムカついたけど、放っておくわけにはいかない。



そこいらまわりに聞いた結果、やっとこさAさんの上司であるC部長から、納期とマニュアルの主旨を聞くことができた。



要するに、

・某グローバル会議体で、C部長を含むエライサン達が、今期の目標としてグローバルマニュアルの作成を決めた


・作成は、会議体には参加していない、エライサンの部下Aさんに投げられた


・投げられた部下は嫌々日本語原文を作成し、社内翻訳に投げた。


・事務局(Bさん)は、会議隊の目標の進捗は管理するけどマニュアルの作成には直接関与しない(=「関係ない」)

 ↑いやどう考えても関係あると思うのだけど。



翻訳者にとって、「依頼者」が「誰」ということは、さほど問題ではない。


ただ、

依頼に対して責任を持てる人じゃないと困る。

納期・納品形態など、最低限の情報を提供できる人じゃないと仕事が完結しないのだ。



こういう依頼が増えると困ると、上司同席でBさんに説明を試みたが…。



いちいちめんどくさい人だな といいたげな反応が返ってきただけだった。



ストレスの元と分かっていても、拘りは捨てられない。


嫌々作成されたマニュアルは日本語が乱れていて訳しにくかった。



思い入れのある人に作ってもらえば、依頼してもらえば、もっと素敵な英文マニュアルに仕上がるだろうに。




依頼者って大事だと思うんだけどな。。。。



アメリカからの来客をランチに連れ出した時のこと。


ある女性が、

この足元の邪魔なのはいったい何なの?ヒールがひっかかるしつまづくし。

道路にもゴムのがいっぱいあるでしょ、困っちゃうわ」と言い出した。


なんとそれは「点字ブロック」のことだった。


「目の不自由な方が安全に歩けるようにするものだから、踏まないでまたぐものなのよ」と教えると、


「全く見方が変わった」と感動していた。


点字ブロックなんて、どこの国にもあるものだと勝手に思っていたけど

アメリカでは「見たことがない」と言われた。



アメリカは広い。


普通の道路に点字ブロックを置いていたらキリがないだろう。



日本は障がい者にとって、不便な国だと思っていたけど



実際は思うほど、悪くないのかもしれない。



当たり前だと思っていたことが、実は当たり前でないことがある。