9月某日、豊田市美術館で開催されている「クリムト展 ウィーンと日本1900」に行ってきました。19世紀末のウィーンを代表する画家グスタフ・クリムトの油彩画(日本では過去最多の25点以上)を中心とした展覧会です。

 

 

 

 

 クリムトの没後100年を記念するこの展覧会では、初期の自然主義的な作品からウィーン分離派結成後の黄金様式の時代の代表作、甘美な女性像や風景画などを鑑賞することができます。また、クリムトと同時代にウィーンで活躍した画家達の作品や、彼が影響を受けた日本の美術品なども合わせて展示されています。

 

 

 

 

 この記事ではクリムトの代表的な作品と、彼以外の画家も含め個人的にいいなと思った作品を前・中・後編に分けて紹介していきます。

 

 

 

 

 作品の前にまずはクリムトという画家の簡単な説明を。グスタフ・クリムトは1862年、オーストリアのウィーン郊外で生まれました。父親のエルンストは彫版師で、クリムトは1876年に博物館付工芸学校に入学しています。卒業後、弟や友人と共に「芸術家商会」を設立し、主に劇場装飾の制作で高い評価を受けました。
 
 装飾家として名声を得ていたクリムトですが、1894年にウィーン大学大講堂の天井画制作を依頼されたことである論争に巻き込まれます。彼はこの件で保守的なクンストラーハウス(美術家組合)と対立し「ウィーン分離派」を結成。結果的に、分離派は展覧会や出版を通してモダンデザインの成立に大きな役割を果たしました。
 
 
 
 
『ヘレーネ・クリムトの肖像』 1898年

グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)作
 
 
 最初の一枚はクリムトの弟エルンストの娘、ヘレーネの肖像画です。今回の展覧会で私が一番実物を見るのを楽しみにしていた作品でした。ヘレーネが6歳の時に描かれたものだそうですが、年齢よりも大人びた印象を受けました。首元がタイトな白いドレープドレスと、当時としては珍しかったであろうボブスタイルが何ともキュートです。
 
 多くの人が持つクリムトのイメージとは違い、この作品にはほとんど装飾がありません。少女の顔はリアルに描かれていますが、ドレスは流れるような軽いタッチです。髪の繊細な描写と(ある意味)大雑把な衣服の対比がありながら、不思議と違和感のようなものは感じません。横顔の肖像画というとルネサンス期の貴婦人を描いた作品のイメージが強いですが、ここで描かれているのは幼く愛らしい少女です。
 
 ヘレーネが生まれて間もなく弟のエルンストが急死し、法律上クリムトが彼女の保護者だったそうです。クリムトにとっては娘同然の存在だった彼女がシンプルに、かつ精密に描かれていて、愛情がありながらもクリムトとヘレーネの微妙な距離感も感じるような作品でした。
 
 
 
 
『女ともだちⅠ(姉妹たち)』 1907年

グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)作
 
 
 かなり細長いカンヴァスに黒い毛皮のコートを着た女性二人が描かれている一枚。クリムトが浮世絵の美人画から着想を得て描いたとも考えられています。個人的にはどことなく「鳥居清長」が描く長身の美人と重なるものがあると感じました。画面左下の市松模様のような柄も浮世絵によく見られるパターンだと思います。
 
 黒いコートが画面の大部分を占める中で、右上に描きこまれたカラフルなパターンが印象的です。彼女達の顔は青白いですが頬の血色は良く、唇は赤。モノトーンの画面にそういった差し色が浮かび上がっています。この作品の第一印象はとにかく「お洒落」で、彼女達のミステリアスな雰囲気がとても魅力的でした。
 

中編へつづく