下町・秋津探偵社

作:おきくら 周(あまね)

 

No,37

 東京から関越道へと入り、平日の高速道路を快適に飛ばしている。空は晴天に恵まれ、辺りの山々は、すっかり秋色に映えていた。「先輩、ここまで、意外と早く来られるもんなんですね」と山田は助手席の貴司に言った。「そうだな」と何気なく同調した貴司に、再び山田が「休日であれば、彼女でも誘って、ドライブに来たかったところですよ。残念だな~」と、呑気顔で呟いた。「お前、彼女いるのか?」と、貴司が聞くと、山田は、満面の笑みで、「アハハ、勿論いますよ」と応えてから、「というか、大学時代から付き合ってますから・・・かれこれ、4~5年というところですかね」と、至極、当然という顔で言うと、今度は、何やら、鼻歌を歌い始め、何かを思い出したように(くっくく・・)と、鼻の下を伸ばしながら笑い、やがて、聞いてもいない彼女との馴れ初めやら、デートの際のエピソードやらを上機嫌で矢継ぎ早に語り始めた。

 

貴司は、「しまった、余計なことを聞いちまった」と、自分の恋バナ披露に変わった山田の長口舌に辟易しながらも、やむなく付き合っていたが、やがて、その話にも飽きて、声がBGMのように音としてのみ聴こえるようになると、貴司の思考は、あの三日前のシーンに切り替わった。あれから、例の“スナック、ささやき”のママらから、新たに聴取した内容を基に、被害者の細君である冬木由美子に、事の次第を説明しながら、被害者が、事件前、あるいは当日に、ヨコカワという場所に、出向いたかどうかの確認をとったところ、「はい、確かに、あの前日に、主人は、安中(群馬県)の横川に行っております」と、認めた。

 

更に、その目的としては、「旧蓼科病院時代に親しくしていただいた同僚の方で、4~5年前には既に引退されて、年に一度、恒例の挨拶として伺っておりました」と語った。それらの証言を捜査会議に掛けた結果、重要被疑者と被害者とが交わしていたとされる前回の証言“ヨコハマ“を新たに“ヨコカワ”と改め、その席で目撃された、土産袋“峠の釜めし”と、被害者の妻から聴取した、“群馬県、安中市、松井田町、横川”のヨコカワであろうと特定した。捜査本部は、直ちに群馬県警に連絡を繋ぎ、地元所轄署である安中署に協力要請をすることとなった。そして、急遽、貴司と山田が安中署へと出向いて共同で捜査に当たることとなったのである。

 

山田の恋バナ語りは、まだ続いていたが、車外の風景に、そろそろ高崎ICの道路標識が見えてくると、「おっと、ICだ」と言って話を中断し、それに反応した山田は、そこから高速道路を離脱して国道27号線へと降りた。車はここで、安中方面へと進路をとり、途中で国道18号線へと入り、結局、1時間ほど走れば、例の“峠の釜めし”の横川に行き着くことになるのであるが、その前に、先ずは今回、捜査協力を要請した安中署へと向かう必要があった。このまま、これといって何もない国道を数10分程走行すると道路の奥にそれらしい建物が窺えるようになってくる。やがて、歩道側に沿って黒い鉄柵と簡素な植栽も見えてきた。程なく警察署の出入り口を左折して建物の前方に設けられている一般駐車場へと車を止めた。

 

車を降りて署の建物を見ると都内の警察署とそれ程変わらぬ建物の規模だが、しかし、全体的に敷地は、なかなか広い。建物に向かって左手側には、おそらく署員専用の駐車場だろうか、数十台の自家用車が規則正しく止められていた。そこへ、一台の乗用車が出入り口から入ってくるのを認めると、貴司たちの横に俄かに車を停車させ、慌ただしく窓が開くと、「すみません。ひょっとして、浅草南署の結城警部補と山田巡査のお二人とお察ししますが・・・」と、聞いてきた。おそらく、二人が降りた車のナンバーを視認したのだろう。貴司は、「そうです」と応えると、運転者は、「ああ、今すぐに車を置いてきますので、署内に入ってお待ちください」そう言うと、左手にハンドルを切って、その奥に見える警備車両用の車庫へと徐行していった。貴司は、一瞬、その運転手の助手席側の赤色灯を格納するバッグが見えたので、この署に所属する覆面パトカーと判断した。更に、今の様子から、彼は、おそらく当の案件の担当者と思われた。時計を見ると双方の約束の時間より、30分程早く着いていたので、却っていいタイミングだったと思いながら、言われたように二人は、署のエントランスへと入っていった。

                                      (No,38につづく)

 

注)物語は、一部の場所・人物をのぞいては、全てフィクションです。

 

 

ぱぱ日記

8/11・・・毎日、激暑い日が続いていますね。いかがお過ごしでしょうか?

皆さん、どうかくれぐれもご自愛のほど。

 

8/14・・・どうも、清書のつもりで、アップしてはみるのですが後日、いろいろと変なところに気が付いてしまったりと、その都度、書き直しなど、結構しちゃっています。まあ、おきらく素人小説と思ってご勘弁ください。

 

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やっぱり、高市さんに次期総理をやってほしい。ビジョンがしっかりしていらっしゃる。

全て正論で、日本に希望を持たせてくれそう。

 
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