むかしむかし、
あるちいさな村に
魔法使いの少年がいました。
少年は村で唯一の魔法使いだったので、
村人たちは少年を宝のように思っていました。
少年は、村の困りごとがあると、すぐに魔法で解決しました。
食べ物がなければ、この上ないほどおいしそうな食べ物を出すことも出来ました。
まずしい人たちは皆、少年に頼っていました。
村の一番の美人も、村で一番のお金持ちも、
村で一番のお医者さんも、
みんなが少年に会いにいきました。
けれど、少年は孤独でした。
寂しい気持ちでいっぱいでした。
少年は、家に帰っては一人で毎日泣いていました。
なぜでしょう?
少年には友達が一人もいませんでした。
村人は皆、少年の魔法には興味がありましたが、
少年のことはよく知りませんでした。
友達になる人もいませんでした。
村人にとって、少年は人間の男の子ではなく、単なる輝く宝でしかありませんでした。
少年は孤独で、孤独で、頭がおかしくなりそうになりました。
友達が欲しくて欲しくて、たまりませんでした。
そして、自分が孤独なのは、魔法のせいだと思い、
魔法を捨てました。
少年は、普通の人間の男の子になりました。
すると、村人たちは大混乱しました。
少年に「なぜ魔法を捨てたのか」と怒鳴り狂う人もいました。
泣きながら、「唯一の助けがなくなった」とわめく貧しい人もいました。
少年に、石をなげる人もいました。
そして、一人の村人がこういいました。
「お前はもう必要ないんだ。 価値がなくなってしまった」
少年はひどく悲しみました。
そして、自分は人間でいてはいけなかったことに気づきました。
そして、ある夜、少年は
静かに泣きながら毒入りの葡萄酒を飲み、
二度と目を覚まさない眠りにつきました。
おしまい。
