グローバル化・IT化が急速に進んでいるこの世界で、将来を担う世代に必要とされるのは英語力と、そして「第3の言語」たるプログラミング言語なのは論を俟たない。
しかし、だからといって小学校の早い段階から英語教育やプログラミング教育を施そうとする現代の「早ければ早いほど良い」という考えには自分は到底賛成できない。
英語やプログラミングのスキルはツールでしかない。
コミュニケーションは「どう言うか」よりも、「何を言うか」が大切であるのに。
プログラミング等のスキルは「スキルがどれだけ高いか」よりも、それを「どのように、何のために役立てるか」の方がもっと大切なのに。
人間的土台を育むのが教育の第一の役割であるのに、その土台が出来上がる前から、親も学校も一緒になって「英語だ!プログラミングだ!」と手先のスキルを焦って教え込もうとするのは、あまりに短絡的であり危険な発想だと思う。
僕は、決して英語やプログラミングその他諸々のスキルが必要ないといっているわけではない。そうしたスキルを身につける以前に、そのスキルによって表現され、あるいはそのスキルを何に使うのかを決定する主体たる「自分自身」を育てずして、スキル云々の議論は始まらない、と言いたいのである。
中学校で英語を始めて英語を立派に使いこなす日本人はいくらでもいるのである。確かに日本人の英語力に物足りなさは感じないではないが、しかしそれは中学校・高等学校での英語教育を今までのように充実させ続けていけばよいことであり、小学生までは母国語である日本語を大切にして思考を深め、自己と社会の関わり方を学び、自立心・想像力・協働性を育み、一人の人間として立派に成長していく姿を後押ししてほしいと思った。それがすべての始まりであるのだから。
