たまにある家族との食事会が嫌だ。
たまらなく嫌だ。
ウチの家族は基本的に仲が悪い。なのに無理矢理あつまって食事しようとする行動がもう最悪だ。不自然すぎる。子供の頃から兄弟たちは仲が悪く、両親も絶えず喧嘩していたし、叔父叔母甥姪などとは疎遠。一年に一度会うか会わないか。そんな交わりの薄い一族だ。
それがたまに、たとえば叔父の家にたまたま親族が集まった時に「食事にでも行くか」となる。そこにいない親戚まで呼んで。どこかへ食事しに出かけようというのだ。これがうざい。
何がうざいって? 言っておくがウチは貧乏だ。時間が経って子供たちが社会人になり、それぞれが働くようになって収入も増えた。だから昔よりはそれぞれが金を持っている。でも、大金持ちってわけじゃない。貧乏だ。
その証拠に、家族での食事会をするのに、やたら高い店に行きたがる。一万円以上もするコースのあるステーキ屋。ひと串がファミチキの三倍くらいもする串揚げ屋。小鉢の小料理が定食屋の高い方のランチくらいする高級和食店。そして、家族全員の会計が残業代込の俺の月収より高い高級中華料理店。あほみたいに高い店ばかり行きたがる。
そうして、誰が金を出すかで大騒ぎする。自分が出さないと言うので騒ぐんじゃない。「自分が出す」と意地を張り合って騒ぎ始めるのだ。見栄を張ってカッコをつけたがる。大した金持ちでもないのに、財布にかき集めた金を見せつけあって「自分が出す」と言い合いをはじめる。
仲が悪いくせに。貧乏なくせに。意地を張り合う。
俺は、その馬鹿な芝居を離れたところから見てる。参加しない。できない。俺は今でも貧乏だから。こんな馬鹿みたいに高い店の料金なんて払えない。でっかい皿に冗談かと思うようにチョボチョボとしか食べ物が乗ってない高級料理店の代金なんて俺には払えない。だいたい奴らは本当にこんな店で食べて美味いと思っているのか? 味なんか分かりゃしないだろ、貧乏人の舌なんだから。こんな量で足りるわけない。同じだけ払えば牛丼やカツ丼が何十杯も食える。もったいない。
俺は子供の頃と変わらずに貧乏だ。大した稼ぎもない。だからそれに見合った生活をしている。朝は食べたとしてロールパンかクロワッサンを2個だ。昼は食べないか食べてもコンビニのサンドイッチを一包みだ。夜は家でごはんパックをレンジで温めて1個食べるか、たまに贅沢して牛丼屋の定食を食うか。これだけだ、俺の食事は。
俺の食事で一番の贅沢は牛丼屋の定食だ。それかラーメン屋のチャーハンセット。いずれも千円はしない。それでも俺は贅沢だと思っている。貧乏人のくせに一皿何千円もする料理を食うもんじゃない。ああいう高級料理は捨てるほど金を持っている金持ちが食べるものだ。俺たち貧乏人が食べるものじゃない。
貧乏人が間違えて高級料理店なんか使うからいろいろとギクシャクしはじめる。もともと険悪な空気を持っている親族のゴタゴタが再燃する。お互いに悪口合戦が始まる。どっちの子供がどの学校へ行ってるとか。仕事でこんなことしたとか、あんな人に会ったとか。どこの国へ旅行に行って来たとか、あの高い遊園地へ去年は何回行って来たとか。
見栄を張る。ない金を出したがる。味も分からないような高い店で食いたがる。そうした貧乏人のアクのようなものが滲み出てくるウチの家族の食事会。本当に嫌だ。
貧乏でいいだろ。貧乏で何が悪い。何も悪いことはしていない。貧乏人は貧乏人らしく、少しの金を使って何とか生き抜いて行くべきだ。俺はそうしている。そして、これからも貧乏なままだろう。生まれた時から貧乏なんだから。