かわいそうって感覚について。かわいそうって考えているのは周りだけ?本人も? | 【鹿児島⭐︎動物病院から】飼い主さんとペットの絆を深める心の持ち方接し方を提案 獣医師 浜崎菜央

【鹿児島⭐︎動物病院から】飼い主さんとペットの絆を深める心の持ち方接し方を提案 獣医師 浜崎菜央

鹿児島で動物病院を経営しつつ、飼い主さんがペットに1つでも多くできることを提案できる場として、ペット関連のイベントや講演をしています。
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シニア犬猫に特に多いのですが、

 

この子がかわいそうで仕方なくって・・・

 

という言葉を耳にすることがよくあります。

 

 

私がその子の顔を見たり、様子を伺ったりしている中で、

 

本当にかわいそうなのかな?と思うことがあります。

 

 

本当に、飼い主さんが思っているように、本人は

 

「なんてわたしってかわいそうなんだろう・・・辛い・・・」

 

と感じているのでしょうか?

 

 

シニアになってくると、

 

白内障が出てきて、目が見えづらくなったり、

 

足腰が弱ってきて、歩きにくくなったり、痛くなったり、

 

ひどい場合は、寝たきりになったり・・・

 

もちろん、病気をして弱ってしまったり、

 

いろんなケースで、今までと全然違う生活環境になることってあると思うのです。

 

 

そんな状態になったとき、

 

「はぁ、なんて不運なんだ・・・」

 

「生きてるのが辛い」

 

と思っている子はほとんどいません。

 

 

どんなときも、

 

彼らは自分の状態を受け入れ、向き合っていることが多く感じます。

 

どんなときも、

 

前向きで、飼い主さんとの時間を大事に思っていることが多く感じます。

 

 

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飼い主さんと一緒にいれることを幸せだと思い、

 

飼い主さんのことをサポートしようと思い、

 

毎日前向きに生きようとしている子がほとんどだと感じます。

 

 

 

そんな前向きな子を前に、

 

飼い主さんが「かわいそう」と口にし、後ろ向きな態度を示すと、

 

せっかく前向きな子も、

 

「え?私ってそんなに不幸なのかしら?そんなに悲しいことなの?」

 

と不安に思ったり、残念に思ったりするもの・・・

 

気がつくと、飼い主さんの様子を受けて、前向きな子も後ろ向きになってしまっている・・・というケースも多くあります。

 

 

 

病は気から・・・というけれど、

 

飼い主さんが今ある状況を受け入れていたり、開き直っていたりするお家ほど、

 

病気を負いながらも長生きするように感じます。

 

 

 

私自身も病気をしたので思うのですが、

 

病気に勝とうと思うよりも、病気を受け入れて向き合っていくほうが

 

結果病気を克服したり、共存したりできるような気がします。

 

 

きっと犬猫も一緒なんだろうな・・・と思っています。

 

 

 

先日、病気により、目が不自由になったわんちゃんが診察に来ました。

 

目のために治療をしていても、

 

治療のタイミングが遅かったり、薬にうまく反応しなかったりすると、

 

治らず失明する場合もあるような病気。

 

 

飼い主さんには失明するかもしれないことも含め、何度もカウンセリングをし、状況をお話し、

 

できる治療をすべてやりつつ、経過観察という形をとっていました。

 

 

まだ治療経過中で、よくなるかどうかわからない時点で、

 

飼い主さんが

 

「目が見えなくなったらかわいそう。」

 

「目が見えなくなる前に死んじゃったほうがいい。」

 

と口にしたのです。

 

 

 

今はまだ失明するかわからない状態。

 

最善を尽くしているのだから、目が良くなることを考えましょうと伝えるも、

 

「生きていてもかわいそう・・・」

 

と繰り返されるので、

 

私は続けてこう伝えました。

 

 

 

シニアになって白内障が進み、失明する子たちもいます。

 

でも、失明しても、不幸せそうに見えたことはありません。

 

失明しても、耳や鼻がきく。

 

残された感覚は今まで以上に敏感になるし、それを使って上手に生活していく。

 

辛いと思って引きこもってしまった子はあまり見たことがありません。

 

常に前向きで、残された感覚を使って、今までと変わらず過ごすケースがほとんど。

 

 

 

確かに目が見えなくなって、障害物にぶつかることはあると思います。

 

でも、散歩に行けなくなるわけではないんです。

 

不安に思うかもしれないけれど、

 

散歩は必ず飼い主さんと一緒。

 

飼い主さんが声かけしながら、障害物を避けながら、誘導し散歩すればいい。

 

一緒にそうやって乗り越えていくことで、もっと絆は深まると思います。

 

 

彼らは一緒にいることを幸せに思ってるんです。

 

たとえ目が不自由になったとしても・・・

 

それでも飼い主さんのそばにいれることを幸せだと思っているものです。

 

 

そんな中、

 

飼い主さんが

 

「目が不自由になってかわいそう」

 

「目が不自由になる前に死んじゃったらよかったのに」

 

なんて言ってしまったら、そのほうがショックだと思います。

 

人に置き換えて考えてみたら、どうでしょう?


目が見えなくなる前に死んだほうがいい


なんて言うことないですよね?


不自由に思うことはあっても、


目が見えなくても生きられます。


苦労はするかもしれないけれど、生きようとする。


むしろ、生きるためにどうするか考えるはず。

 

大事なことは、見える見えないではなくて、

 

もし見えなくなったら、どうやって乗り越えていこうか?と向き合うこと、

 

それが一番なんだと思いますよ。

 

 

二人で乗り越える方法を考えて、二人で楽しく幸せに過ごす方法を考えること、

 

それが一番。

 

 

だから、かわいそうと言わず、一緒に頑張ろうねと言ってほしいです。

 

と。

 

 

 

大事なことは・・・

 

そうなってしまったことを悲しむことではなく、

 

そうなったことを受け入れて向き合うこと。

 

 

どうしてうちの子だけ・・・と悲しむのではなく、

 

一緒に乗り越えて、楽しく過ごせる方法を考えること。

 

 

 

私はそうだと思っています。

 

 

 

そして、本人がどう思っていて、どうしたいと思っているのか?

 

それに沿って私たちはサポートすべき、ベストを尽くすべきと思っています。

 

 

 

これは、ペットだけでなく、私たち人間でも言えることだと思っています。

 


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体が不自由だからかわいそう・・・というふうに考えるのではなく、

 

そのことをどう受け止めてどう生きているか、

 

それを見つめてほしいと思っています。

 

 

障害があることで傷付いたことがない人はいないと思うんです。

 

でも、それでも、障害があることを受け入れて生きていく。

 

私たちが想像がする以上にたくさんの苦難があると思うのです。

 

その前向きな姿に対して、

 

かわいそうに・・・

 

というのは間違っていると思っています。

 

かわいそうと思うのではなく、

 

私たちはどう動くべきか?


どうサポートすればいいか?

 

そこが大事なのだと思うのです。

 

 

このニュアンスってすごく伝えるのが難しくて、

 

なかなか文章で表せないままになっていたのですが、

 

私は診察で先ほどのケースに遭遇したときに、

 

「あ、これって障害者に対しての心のハードルと同じ感覚だ」

 

と思ったんです。

 

 

かわいそうと思うこと自体がハードルを作ってしまう。

 

本人はそう思っていなくても、周りがかわいそうと過剰に思い接する。

 

それは、障害者への心の壁、ハードルになってしまってると思うんです。



どう接したらいいかわからない。


何もわからない。


だから、声をかけない。接客できない。


それ自体、大きな心の壁のように感じます。



同じ人間なのだから、もし困ってそうなら、まずは一言。


なにかお手伝いしましょうか?


でいいと思うのです。


何も理解してなくても、


手探りでも、


声をかけて、お互いの気持ちを伝えながらやっていく。


それでいいのだと思っています。


対応が完璧にこしたことはないけれど、


でも、不完全でも、一言声をかけて、


不慣れだけどサポートしたい


その気持ちは必ず相手にも届くと思うのです。



まずは、かわいそうと考えるのではなく、


前向きに過ごすその姿を受け止め、サポートできることをする。


ペットであっても、


人であっても、


かわいそうと思うのではなく、


1人でも大丈夫かもしれないけれど、2人だともっと助かるとか、


サポートがあって助かるとか、


そう捉えられるようにできないかな?と考えたり思ったりすること、


それは大事な心のバリアフリー化だと思っています。


いろんな場面でいろんなケースがあるから、


すべてのペット、すべての人に当てはまらないかもしれないけれど、


こう思う気持ちは


少ならからず悪い影響は与えないと思っています。