
■Billy Hallquist / Travellin’■
前回取り上げた Kevin Odegard の「Silver Lining」に参加していた Billy Hallquist のセカンド・ソロ・アルバムです。 流れで取り出した、このアルバムはクレジットを見ると「Silver Lining」と密接な関連があることがわかりました。 その密接さは、時・場所・人で表すことができます。 「天地人」みたいですが、まずはそこを確認していきたいと思います。
このアルバムが制作されたのは 1975 年、まさに「Silver Lining」と同年です。 レコーディング・スタジオも同じミネアポリスの ASI Studio 、プロデューサーは異なるものの David Rivkin がエンジニアでクレジットされています。 おそらく彼がこの ASI Studio のオーナーなのでしょう。 参加ミュージシャンも、Larry Ankrum や Joe Stanger、Bruce Kurnow などが重なっており、「Silver Lining」に収録されていた Kevin 作の「Roseport 5:05」もカバーされているなど、この2枚のアルバムの関係性の深さがうかがえます。 後ほど触れますが、メロトロンが使われている楽曲が 1 曲あることも共通点となっており、興味深いところです。
クレジットには、Kevin Odegard から、『ビリー、僕らは今夜どこにいるのだろうね? サウスダコタ、それともミネソタかな?』というコメントが寄せられており、2 人がスタジオでのセッションのみならず、ライブハウスをツアーしていたと思われることも発見でした。 では、アルバムを振り返ってみましょう。
結論から言うと、ここまでくどいくらい比較した Kevin Odegard の「Silver Lining」をはるかに凌駕する作品だと思います。 Billy Hallquist の曲作りのほうが奥深く余裕もあり、曲の構成力や緩急の使い方に長けていると感じるのです。 特にラストを飾る「Ballad Of A Poor Man」と「Glaciers」の流れはかなり上手に練られています。 8 分 28 秒もの長尺の前者では、プログレのように曲調を変化させつつも、組み立てとつなぎが上手に考えられていますし、「Glaciers」へとつなぐ曲間の短さもナイスです。 その「Glaciers」も緩急が変化し、フルートやサックスのソロが主役かのように活躍します。 このインスト重視の指向性は同時代のイギリス的 SSW の匂いを感じます。 イギリス的といえば、Keith Gause によるメロトロンが活躍する「Pass Me By」の佇まいも同様です。 余計な検索ですが、1975 年の ASI スタジオには、メロトロンが 1 台常置されていたのでしょう。 こんな楽器を 1 曲のために移動させたりはしないはずです。
アルバムのなかで親しみやすい名曲と言えば、「Travellin’」や「Pay The Penalty」があげられます。 とくに「Travellin’」はクレジットにはないものの、A 面ラストで Reprise され、繰り返されるサビをもう一度楽しむことができます。 この曲でバックコーラスをつけているのは Kevin Odegard なのですが、♪Travelin’ makes me high. Watch the world go by the window♪ というフレーズが耳を離れません。 自分の保有しているレコードの盤質があまりよくないため、音がかすれてしまうのが残念でなりません。
最後の Billy Hallquist について触れておきましょう。 彼の関連作品としては、1972 年発表のファースト・ソロアルバム、そして 1960 年代に参加していたグループ Thundertree での 1 枚がありますが、ともに CD で復刻されています。 まだ入手していないので、ともに未聴です。
また、まさかと思いましたが、Mill City Records で検索してみたところ、公式サイトが存在しました。 レーベルというよりは機材屋さんのようなページでしたが、この「Travellin’」も年内には CD 化を予定しているとのことです。 自分の盤質が良くないだけに気になります。

■Billy Hallquist / Travellin’■
Side-1
Travellin’
Pay The Penalty
Pass Me By
City Life
Roseport 5:05
Travellin’
Side-2
Peaches
Bonnie & Odie
Ballad Of A Poor Man
Glaciers
Produced by Al Heigl
Recorded at ASI Studios, Mpls., Minn.
Engineered by David Rivkin
Mixed at Sound 80, Mpls
All songs, words and music by Billy Hallquist
Except ‘Roseport 5:05’ by Kevin Odegard
Billy Hallquist : 6-string, vocals, electric 12-string
Al Heigl : 12-string, 12-string slide, 6-strig, harp
Rick LiaBraaten : drums
Rick Miller : bass
Kevin Odegard : backing vocals, 6-string
Joe Stanger : backing vocals
Jim Hauck : backing vocals
Carrie Caldwell : backing vocals
Keith Gause : mellotron
Larry Ankrum : piano, flute, sax
Bruce Kurnow : harp
Ron Wydell : jaws-harp
Bill Hinckley : fiddles, mandolin, foot
Blueberry Bill : banjo
Mill City Records MCR-7501