
GIFTS
太陽は東の空から昇り 西の空へと沈んでいく
今日も何ひとつ変わらない
いつもの朝を迎えた
西へのそれが時を刻み
あたり一面が夕闇に包まれた
・・・
そのときだった
僕の目の前にある電話が鳴った
ふと 視線を併せてみる
それが映し出す文字に 僕は一瞬固まってしまった

一刹那
ほんの少しの微々たる時間だったのかもしれない
でも 時が止まってしまったのかと思った
ただ 僕の脳は はっきりとその瞬間を覚えてる
・・・
セツナの中に一瞬で想いを巡らせることが出来た
そして 僕は 電話を手にした

案の定だった
その声の主は
電話に描き出された男性のものとは 異なるものだった
胸が高鳴る
今にも溢れ出しそうとしていた僕の声 僕の息
必死で抑えた
・・・
やさしい声だった
とってもやさしい声だったんだ

昨年の師走の空の下
たくさんの荷物を抱えて
僕より年上の息子さんと一緒に訪ねて来てくれた
あれから半月の時が流れた
僕の掌に包まれた銘器から鼓膜を刺激する
やさしい声の主は
その銘器の中に長年しっかりと刻まれた人物の奥さまだ

『今日 声が・・・声が・・・出るようになったんです』
奥さまが誰よりも先に僕に連絡したかったこと
本人も誰よりも先に僕に声を聞かせたかったこと
・・・
嬉しかった
・・・
”僕が一番はじめ”
そんなことはどうでもよかった
彼が 彼の声が戻ったこと
それだけで 涙が溢れそうになった

ICUに3ヶ月 絶望的だった
家族以外は面会謝絶
知っていた でも 2度程行った
家族と一緒なら会うことも出来た
でも それは しなかった
会えないと分かっていても
僕が行く理由を理解出来る人がどれだけいることだろう
また いつの日か 書いてみようと思う
やっと 声が出るようになりました
でも 手は動きません
妻に電話を持ってもらいお話をさせて頂いてます
いちばん最初に
声を聴いて貰いたかったんです
・・・
電話の向こう側の声には
そして
電話の向こう側の世界には
色鮮やかなたくさんの景色があった
降り注ぐ陽の光のような喜び
漆黒の闇に星が瞬いていても見ることが出来ない苦しさ
久しぶりに空を見上げた感動
実は 昨日 妻の誕生日だったんです
・・・私が こんな身体になって迷惑をかけてしまって・・・
でも せめてものプレゼントを出来たのかなと思ってます
今度は 手を動かせるように頑張ります
・・・
ジ○ニーさんにもご迷惑をおかけして申し訳ございません
そして 本当にありがとうございました
今まで お礼すべきことはたくさんありますが
先ず 一番はじめに
あの手紙にどれだけ励まされたことか
お礼を言いたかったんです
私のような者ために お時間をかけさせてしまって
本当に申し訳ございません

生きててよかった
彼がじゃない
僕が生きててよかった
・・・
彼が生きるか
このままで終わってしまうか
確かに大きいことだ
でも 僕は心から信じていた
彼が僕の倍以上生きてた人生
その心の強さ
そして
彼を支える家族の細やかな愛情
彼は 決して ここでは終わらないという確信があった
奇跡は
紡いできた軌跡 紡がれた軌跡
僕はいつだってそう思ってる

生きててよかった
僕だけじゃない
彼が生きててよかった
・・・
僕は 自分が生きている限り こういうものを集めたいんだ
人は ご飯を食べさせてもらう
少し大人になったら
人は ご飯を自分で食べれるようになる
人は サンタクロースからプレゼントをもらう
少し大人になったら
人は 自分でプレゼントを自分のために買うようになる
そう
僕たちが 大人になったら 出来るんだよ
自分のため 大切な誰かのため
お金と時間を遣えるようになるんだ

生きててよかった
彼も僕も
本当に生きててよかった
・・・
こんなに素敵なプレゼントは 他にはない
・・・
心なんか 誰にだってある
心を語ることなんか 誰にだって出来る
キレイな言葉だけでいい
だから 人は涙するし 感動するんだ
あの時は こうだった
あれは こうだった
あんなに したのに
・・・理解して欲しい・・・
僕は ときに 自分がバカだと思うことがある
忘れる
いや 本当は忘れてないのかもしれない 笑
・・・
思い出
縷縷 僕の心に色や景色を刻んでくれているそれは
いつだって キレイなもの
当然のことだ
皆さんは どうだろう
僕だけじゃなく きっと誰しもがそうだと思う
美しいから
思い出せるんでしょ 思い出しちゃうんでしょ

キレイな思い出はあっても
目の前の重圧に押し潰されそうなとき
悲しいとき 苦しいとき 辛いとき
そして
自分の人生 過去 思い出
全てがキレイじゃないと思うとき
ちょっとだけ考えてみたら どうだろう
努力してみたら どうだろう
・・・
人として許されること 生きていて許されること
『キレイを紡ぐこと』
・・・
もう一度 分かりやすく言う
心なんか 誰にだってある
心を語ることなんか 誰にだって出来る
みんな きっと胸の深いところには キレイな花が咲いている
だから
それだけ 語ればいい
今までそう生きてきたなら ずっと続けていけばいい
今までそう生きてこれなかったら 明日からはじめてみればいい
僕は シンプルにそう思う

隣りの誰かにキレイな言葉だけ 言えるようになったら
今度は キレイなものを創るんだ
そんなに難しいことじゃない
そして
この先にも 素敵な世界はある
まだまだ続きはあるんだよ
・・・
僕は 神も仏も信じてない
いや ぶっちゃけ 信じるこも多々あるけど 笑
人が人であり 人で許されること
”創れないもの”と”創れるもの”
僕たちは この両者を与えられた

『向き合うこと』
僕たちは 美しい風景や感動する世界を見ることを許された
でも
僕たちは 美しい人や感動する誰かに語りかけることは許されなかった
・・・
理解出来るだろうか !?
景色は 景色さんが自分のことを見てくなくても 話かけていい
勝手に憧れたり恋をすることを許された
人は 相手が自分のことを見てくれているから 話かけていい
慎むことを知らなくてはいけない
今も昔も そして これからも
永遠に変わることがないルールだ
僕は そう思う

なつかしい声だった
その温かで逞しい声を聞かせてくれた声の主は
とある世界では 超一流の人だ
彼が そうである理由を
盃を交わしながら聞いたことがある
途中で諦める勇気や辞める勇気を持つことだそうだ
継続だけが全てじゃない
・・・
彼が一流でいられる理由
自分が見ていたものが
向き合ってくれていないと感じ
その瞬間から 捨てたものがあったからだ
今まで多大な時間を費やし
努力してきたにも関わらずだ
そして 今
彼の絶え間ない努力は
時を超越し 美しく光輝いている
彼には 向き合ってくれる家族の温かな手があるから
必死に声を取り戻そうと手を動かそうと頑張ってる

生きててよかった
みんな
本当に生きててよかった
・・・
感動をありがとうございました
大切なものを また ひとつ 目に見えるカタチで教えられた
人生には 感動という名の贈り物がある
GIFTS OF LIFE
僕も思い出を言葉を未来を
美しいものたちで紡いでいける
そんな人でありたい
・・・
本当にありがとうございました
今度は 何を届けよう
僕が 今持っている一番美しいもの
koko
そして 彼女と向き合う思い出と言葉と未来
彼女を誰かに届けることは出来ないケド 笑
今日頂いた素敵な贈り物に負けないくらいの感動を
また彼に届けたい
・・・
そう強く思った
TFR
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