急な衆議院の解散による総選挙を週末に控えた2月4日、立春の日に、参議院議員会館の会議室で「女性のリーダーシップと平和」と題するフォーラムが開催されました。全国フェミニスト議員連盟の国際フォーラムです。講師は男女半々の議会を持つメキシコの駐日大使メルバ・プリーア氏。国際部会の尽力による招聘です。部会長の三井マリ子氏に誘われて、友人と一緒に参加しました。三井さんによると、メルバ大使は、ずっとジェンダー平等、多様性、インクルージョンの三本柱を掲げ、大切にしてきた方だそうです。
メルバ大使は、小さくはない会場の前方に立ち、力強く話し始めました。「簡単に諦めないでください。次の世代になるかもしれないけど、社会は必ず変わります。これまでも、私たちの前に、きつい階段を登ってきた人がいます。私たちは母の、母は祖母の肩に乗ってきたのです」と。同じ場所に立っていたりせず、会場を歩き回りながら、私たちの表情を確認しながらお話をしてくださいます。私たちひとりひとりの肩に手をかけながら。 確かに、それより前は今よりもっと、ずっと、女性が生きにくい時代だったはず。私たちが歩み続けることでしか、次の世代が救われる道はありません。
メキシコでは、2024年に初の女性大統領が生まれました。クラウディア・シェインバウム氏が就任したのは2024年10月1日です。実は、日本で石破茂首相が就任したと同じ日でした。新しい内閣を発表していた。メルバ大使は、メキシコより先に日付変更線をまたぐ日本で、発表された男性ばかりの石破内閣の顔ぶれが、その数時間後に発表されたシェインバウム氏の男女半々のキャビネットの写真と対比的だった、と話します。日本の閣僚は男性ばかりで写真は黒っぽいスーツばかり。政治も楽しくないですよね。女性が多いと対話が多く、明るい、とは、この講演の後に日本の話をしてくださった「戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の菱山南帆子さんも言っていました。
メキシコに女性大統領が生まれるには、ちゃんと段階がありました。すこし前までに国会議員の女性比率は50%を達成していたのです。1995年に14%だった女性議員比率は、2003年にクオータ制30%を取り入れて 16%まで増え、2008年の40%クオータ制、2014年の50%パリテ制を経て,2021年に50%を達成しました。憲法にも候補者数の男女同数の原則が謳われていますし、比例代表制の名簿は男女交互のジッパー方式と、選挙制度の工夫によって用意周到に準備し、成し遂げたものでした。メルバ大使は、ジェンダーギャップ指数の順位が発表される度に、日本のメディアは騒ぎますよね、と少し笑いながら言います。毎年、1位か2位上がったり下がったり、理由を探してニュースになります。高市首相が誕生したから、きっと来年は上がるのでしょう。でも、「そんなことで一喜一憂するのは意味がない、そもそも指数や順位にミラクルはありませんよね」といいます。ジェンダー平等を目指して、法整備をしながら、社会を変えながら、変わるものだから。そうしないで、社会は急に変わったりはしないのです。 日本では、「クオータ制」というだけで、女性に下駄を履かせるな!と叫び、導入の見込みはほとんど見えません。「ジェンダー平等を目指そう」というと、すでに男女は平等だ、と叫ぶ政治家も多い。ジェンダーギャップ指数はまやかしだ。という声も大きい。ジェンダー平等を目指そうという共通認識を作ることさえも危ういのが、今の日本だといえます。
メルバ大使はさらに、「日本のかわいい文化はよくない」と、先日あった高市早苗首相との食事会でのエピソードを話してくださいました。そばにいた人たちが首相のアクセサリーの話をしてたというのです。首相との食事会で、靴や服、人の見た目の話をすることに違和感を覚えたと。首相が男性だったら、アクセサリーの話などするでしょうか?「女性が皆、プリンセスになりたいのではなでしょう?力を持つ人になりましょう、大事なのは『クレーシャス、ビューティフル、インテリジェント』です」と。 愛想をふりまき、気持ちを隠して笑顔で応対する「かわいさ」で人を判断する社会はいらない。私たちは思いやり深く賢く、人も地球も大切にできる人間でありたい。そう思わせるメルバ大使の凛とした後ろ姿に、見とれるばかりでした。
最後に、メキシコも少しずつ変わってきた。けれど、いまだに女だからという理由だけで殺される女性が後を絶たない現実があるのも事実、と、自国の変わらない家父長制とマチズモの文化を憂える言葉もありました。それぞれの国にそれぞれの課題はあります、と。女性への暴力についても、共通の問題です。私たちは、女性への暴力撤廃を叫び、ジェンダー平等を叫び、社会を変えていく動きを止めるわけにはいきません。