父は、節分の豆まきが大好きでした。
「鬼は外、福は内」
近所中に聞こえるのではないかと思うほどの大きな声で、玄関先から庭へ、勢いよく豆をまいていて、
私はいつも恥ずかしくて、「そんなに大きな声でやらないで」と言っていました。
それでも父は、毎年変わらず、力いっぱい声を張り上げていました。
今思うと、まるで家族の一年分の厄を、自分の声と豆に全て託すかのようでした。
父がいなくなって、はじめて迎えた節分。
豆は用意しましたが、いざその時になると、家の中は驚くほど静かでした。
父のようには声を張り上げられない。
まく豆も、遠慮がち。
あの大きな声が、少しうるさいと感じていたあの時間が、
実は家の中に温もりを作ってくれていたのかなぁと、父がいなくなってから、はじめて気づきました。
節分は、鬼を追い払う日。
でももしかしたら、あの豆まきは、
家族が一年、無事でいられるようにと願う、父なりの祈りだったのかもしれません。
静かな節分の夜、
聞こえなくなった声を思い出しながら、豆まきをしました。



