はい、こんにちは!中原です。

 

今回のテーマは「正常性のバイアス」です。

 

簡単に言えば、「みんな自分だけは死なないと思っている。」ということです。

 

そういうと、「いやいや、そんなこと思ってないよ」って反論がきそうですが、本当にそうですか?

 

なら、「じゃあ、あなたは今日死ぬと思って生きてるんですか?」と聞き返すと、たいていの人は、「いや、そんなわけないですよ」って答えてきます。

 

さらに突っ込んで、「じゃあ明日死ぬと思ってるんですか?」と聞くと、「いや、明日って言われても・・・」ってなりますよね。

 

これが1年後でも10年後でも答えは変わりません。少なくとも健康な人に聞きさえすれば・・・。

 

でも実際は、人間に限らず、生き物なんていつ死ぬかわからないわけです。死因も様々で、それが交通事故かもしれないし、何かの病気かもしれないし、そして地震かもしれません。

 

阪神淡路大震災や東日本大震災で亡くなった人の中に自分が地震で死ぬなんて考えてた人がどれくらいいたでしょうか。1%もいない気がします。

 

これがいわゆる「正常性のバイアス」というやつで、辞書的には、「どのような人間の心理にもある程度存在するとされる「認知バイアス」の一種で、目の前の物事が異常な状態を示していても、比較的大きな状態変化がない限りは正常であるとみなしてしまうこと。」などと書かれています。

 

これは、その人が賢いとか愚かとかそういう問題じゃなく、等しくほぼ全ての人間に備わっているもので、備わっていない人がいたら、逆にその人の方が「正常」ではないということにもなります。

 

なぜなら、日常生活における心理的なストレスを軽減するため無意識に行われるものなので、これがないと杞憂の逸話ではありませんが、もしかしたら明日隕石が落ちてきて死ぬかも・・・などと心配しなくていいことまで心配しなくてはならなくなり、精神を正常に保つことができなくなるからです。

とはいえ、この正常性のバイアスがクセもので、災害時などの非常事態には被害を拡大させる結果を招いてきました。

 

有名なのが韓国の大邱(テグ)で起きた地下鉄放火事件です。

2003年2月18日に、韓国の大邱市で起こった地下鉄火災で、多くの乗客が煙が充満する車内の中で口や鼻を押さえながらも、座席に座ったまま逃げずに留まっている様子が乗客によって撮影されており、正常性バイアスが乗客たちの行動に影響したという指摘もあります。

 

これは、車内放送で「安全です。」などの放送が流れたり、周りの乗客が逃げなかったため、誰も逃げなかったことが被害を拡大させ、最終的に198人もの犠牲がでました。

 

また2005年のアメリカで起きたハリケーンカトリーナの災害では、約2割の人が避難しなかったために災害に巻き込まれましたが、避難しなかった人たちは「逃げなくてもいい」という信念を持っていたそうです。

 

避難しなかったのは主に老人で、過去にニューオリンズではハリケーン「ベッツィ」、「カミール」という「カトリーナ」に匹敵するハリケーンの来襲を受けていた歴史があり、これらのハリケーンでニューオリンズが暴風雨に耐えたことを老人たちは知っていたため、彼らは「今回も大丈夫」という信念を持ったとされています。

 

ここまでの話でも、多くの人にとっては他人事です。

なぜなら、今、あなたが、住んでいるところは、地震など起きたことがないからです。

 

そこに住んでいる時間が長いほど、安心感を持っていることでしょう。

 

筆者の住んでいる下関などは、長いあいだ地震被害がなかったこともあり、以前話した老人が

 

「下関は災害に無縁なところで、今まで70生きてきたけど大きな地震なんてなかった。だからここは安全なところなんだ。」

 

とおっしゃっていました。

 

ですが、本当にそうでしょうか?

 

地震の周期は何百年とか何千年といった長い期間で起きます。

 

その中のたった70年という短い期間に「たまたま」起きなかったからといって、今後も2度と起きないと誰が言えますか。

 

多くの場合、年長者の経験とは人生に役立ちますが、「正常性のバイアス」に限っては逆効果をもたらす場合もあります。

 

日本にいる限り、地震に限っては、「来る」と思って備える必要があります。

 

次回は、何故日本に地震が多いのかについて書きたいと思います。

 

大邱地下鉄放火事件