12時のノーティス様 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

「ノーティス様♪ お前には飽きたから死んでくれ」
 俺はサブマシンガンを周囲に乱射した。しかし、
「それは残像だ」
 お決まりのセリフを彼は吐き、そして、いつの間にか背後に回ると、俺の首を締め、意識を落とした。

 目を覚ますと、俺は鉄製の椅子に鎖で拘束されていた。これまたどこかで見たようなシチュエーションである。
「報告しろ。しないと殺す」
「やだね♪」
 ノーティス様は電動ドリルを取り出すと、俺が恐怖を浮かべる暇もないままに、その先を俺の右眼に突っ込んだ。あががが、ががが……いやこれ右目見えなくなるじゃん? っていうかそういう問題じゃなくて死ぬじゃん? いいのかそれ、いいのかよそれ……つぃぃぃぃいいいん、っていう音がしばらく頭の中で響いていたけれど、それも止んで、すっかり虚ろになった俺の右眼に何かが入り込んできた。
 それはホワイト・バイタル・ワームで、いや名称とかは俺が今つけただけでテキトーなんだけれど、多分俺を自由自在に動かす、自白剤以上の効果を持つ何かなんだろう。
「それで? 報告は?」
「はい……ノーティス様……。12時まで、ほぼ執筆は遂行されました……その他の行動に費やした時間は、13分です」
「その内訳は?」
「2度程お手洗いに行きました」
「ふむ……だがお前は、4時間のアルバイトの時、2回もお手洗いに行くか? それも13分も費やして?」
「いいえ……そんなことはないでしょうね……ノーティス様」
「ほぅらな。まだ甘い。お前は甘ちゃんだ。クソッタレなのさ。食べるからトイレにも行きたくなるんだろうがよ。食べるな。もっと食う量を減らせ。食べると眠くなっちまうだろうが」
「その通りですね……」
「ちなみにどんな文章を書いた?」
「ここ4時間程の文章執筆の内訳は……コメント返信等、自分の考えた文章を打つ『思考』の時間が1時間5分、タオルケットをもう一度・小説版の書き写しが2時間4分、あとは、自作の書き写しを55分行いました。最後のは、これまでコンビニの休憩時間等に書いてきた紙媒体の《正義ゲーム》本編を、パソコンに打ち直したということです。これで紙媒体の既存執筆分は、全て電子化されました」
「んで、どうだった?」
「酷く疲れました……」
「舐めんな! お前は、ホントはその自作を書くことをずうっと続けなくちゃいけないんだからな! カテゴライズで言えば、商業作品の書き写しなんざ、ただのお遊びなんだ、それを忘れるんじゃねぇ!」
「ひぃい……わかりましたすいません」
「それじゃあ、今回の報告はこんなところか♪」
「そうですね♪」

 ……………………。

「なんかさ~……ハイテンションになって書いているのにいきなり奴隷根性丸出しとか疲れるんですけど~~~」

「あ? 何か言ったか? 今度は左眼が空っぽか?」

「い、いえ何でもありません……今度は16時ですね……ノーティス様……」