ヒメゴトとバニラスパイダー。 | 墜落症候群

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墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。



Amazon:ヒメゴト~十九歳の制服~ 7 (ビッグコミックス)

 あまり批判系の記事ばかりでもつまらないので、昨日読んだ面白い漫画の話でもしてみようかと思う。一番下の弟に借りて読んだ。これと、あとバニラスパイダーという独特な漫画を読んだために、昨日一日はあまり執筆をすることもなく潰してしまって罪悪感だったけれど、それはまあ俺のせいであって漫画の面白さのせいではないだろう。でも本当に面白かった。



Amazon:バニラスパイダー(1) (少年マガジンコミックス)

 バニラスパイダーは、人に寄生する宇宙人に水道の蛇口で殴りかかるという、血潜り林檎と金魚鉢男という現在の連載が気になるところで終わっているのに続きが出ない阿部洋一という漫画の書いた作品で、打ち切りにあったらしいんだけど(とはいえ最後は駆け足ながらきちんと作品としてまとまっている)、現在はAmazonを見る限りでは絶版にもなっているらしい。
 この人の作品は独特で、絵柄からなのかなんなのか、独特のズレた感覚と懐かしさのようなものを感じる作風だと思う。
 とはいえ、単純な面白さ、熱中して夢中になって読めるという作品の娯楽度という意味では上の方のヒメゴトの方が面白かった。
 十九歳の制服という、何とも言えないちょっと古臭い感じのサブタイながら、その19歳、つまり大学生という制服が必要ではない彼らが制服を着る理由が、きちんと物語の内容と関連しているところはなかなか活かしていると言えよう。
 高校生の時の制服をボーイッシュな自分がそれでも女の子であることの証のようにしてそれを着込んで自慰に励む女の子、年上の女の人に貢いでもらいながら自分の理想である女の子になるべく着飾ってやまないイケメン男子、大学新入生でも指折りの箱入りお嬢様と見せかけて援交で自分が15歳と偽っていつまで通用するかを試すセーラー服の彼女など、青年誌だけど完全にエロい方向にも片足を突っ込んでいる漫画ではある。
 エロいんだけど、エロが主体ではないというか、ボーイッシュ女の子がオンナノコっぽく振る舞えるのを、女装男子が手伝う奇妙な女友達関係など、結局それぞれの人物が心の奥底で求めているものがテーマとなり、この三人の関係は二転三転して変遷する。
「ええ、ここでこうなるの!」
 みたいな感じで読んでいてゾクゾクするような、漫画に浸りきるような面白さを久々に感じた漫画だった。ただ何となくその感覚は五巻くらいがピークだったのかな。六巻で少し落ち着いてしまった気がする。関係性がドラマティックになるというよりは、最初の方でメインっぽかったボーイッシュ女の子をある種の聖域みたいにして、ちょっと盛り下がってしまったからなのかな。でも七巻まで読み終えて、やっぱり続きが気になるなあ、と思うのだった。次巻が最終巻かな。
 モバMANでの連載作品って、一番有名になったのはノゾキアナだと思うんだけど、あちらは風変わりとはいえあくまでシンプルにメインヒロインと主人公の関係を描き切った、ある種の王道作品だとすれば、こっちは何が飛び出すかわからない、ドロドロともつれあったような関係性が魅力かな。俺はこっちの方が面白いと思う。
 なんか最初はちょっと地味かなあ……と思っていたんだけど、関係性が重なるにつれてすごく魅力的になっていった。続くと面白くなる漫画って、やっぱいいよね。
 俺はボーイッシュ女の子が主人公みたいな感じで読んでいるんだけど、果たして最終巻、どんな決着が付くのかな。