カゲプロ想像小説リライト。第45話。『運命戦』下ごしらえ。 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 第45話。『運命戦』下ごしらえ。



「それで? 結局、あなた達はどんな話で私を面白がらせてくれるっていうの? いいえ、あなた達が私の興味を引けなくて、一瞬で運命の濁流に飲み込まれて、消え去っていくのを見るのも、また一興かもしれないけれどね」

「そのことなんだけど、アウロラ。私達に作戦を考える時間を与えて欲しい」

「何分欲しいっていうの? それじゃあ、3分ね。決まりだわ。

 人間が時間を測る時には大体3分って相場が決まっているのを、私は知っているのだから。何て物知りなんでしょうね!」

 どうでもいいことをほざいているアウロラは放っておくことにして(コイツは本当に運命の女神なんて大層な代物なのか? というのが頭をよぎるけれども、周囲の異常な世界こそが彼女の力を証明してしまう)、『メカクシ団』は円陣を組んだ。

 その輪の中にはヒビヤとヒヨリも含まれている。どうやらこの世界は現実の状況とはあらゆる意味で切り離されているらしく、この世界に入った瞬間に身体の傷や、あるいは意識が落ちていた等の状態も一切消えたようになってしまった。それはまるで、現実とはまるで別の条件下の、例えば夢の世界や『可能性世界』に入り込んでしまったような感触だった。

「それで? 具体的な案があるのか?」

 皆を代表してキドがコノハに聞いた。

「うん。今、必死で考えてるんだけど……アウロラはどうして私たちのことを面白いだなんて、言ったんだと想う?」

 Cが反射的に答えた。

「物珍しかったから?」

「今、明らかに何も考えてない反射速度だったにしては、Cの意見はなかなか良いところを突いていると想う(Cが少しむくれた)。

 そう、アウロラにとって、私たちの存在は好物の悲劇そのものとは言えない。あくまでイレギュラー的な存在である――からこそ、面白かった、ってことが重要なんじゃないか?」

「つまり、私達が悲劇を解決する正義の味方であるということこそが?」

「そうだ。逆にその正義の味方が逆境を乗り越え立ち上がり、それでも悲劇にどうしようもなく屈する、その過程がアウロラには興味深かったんだろう、と推測される」

「コノハ。時間がない。端的に答えてくれ。

 それでお前はこれからのアウロラとの会話をどう展開するつもりなんだ?」

「キド。まず君に最終的な問題の解決は託そうと想う」

「はあ?! 丸投げかよ」

「リーダーらしくそこは格好良く決めちゃってくれ……」

「そんな無責任な……」

「だけど、それまでの策に関しては私に考えがある。

 要するに意表を突き、相手の興味を引き、キドが考えをまとめるまでの時間を稼げばいいってことだ」

「具体的にどうするっていうんだい?」

 カノが首を傾げる。

「悲劇に対抗する正義の味方がアウロラの興味を買ったように――私達は、アウロラに対して、彼女が想いもしなかった本当の目的を言い当ててみせるのさ」

「つまり……具体的にはどうするんですか?」

 マリーが若干焦れたように聞いた。

「アウロラは悲劇を愛する運命の女神として、自分を扱うことに慣れているんだと推測される。

 そこで、まったく違う、例えば性善説なんかを彼女に当てはめて、私たちで勝手に彼女の真の目的なるものを、想定してしまうんだ」

「そうすることによって、アウロラは心外だと想うと同時に、何故そんな想定をしたかに興味を抱くかもしれない……?」

「その通りだヒビヤ。所詮、時間稼ぎの策ではあるが……。同時にアウロラに、本当はそんな目的を持っているのではないか? と問いかけることで彼女からの情報を引き出せるかもしれないという目論見も込みだ。

 皆――よろしく頼む!」

 コノハの言葉に想い想いに頷きながらも、メカクシ団は、自分で設定したにも関わらず、3分間の待ち時間に既に飽いているかのような、アウロラととうとう対峙した。