彼との衝撃的かつ変態的な出逢いと、愛に至る道のりを語っていきます。

 

これは彼との愛の物語


 それは突然だった。夫が仕事から帰るなり話があると言って、スマホの画面を見せてきた。
「オレに言うことがあるやろ」
 それはFacebookのメールだった。とある人物から私と彼の関係やHと遊んでいた頃のことが密告されていた。LINEのスクショを見れば誰の仕業かわかる。Hと遊んでいた頃に口説かれていた男からだった。
 彼とつきあうのを機会にキッパリお断りしたのだが、それを根に持ってのことだろう。
 しかし、来るべきときが来たのだと思った。長年子供のためと我慢してきたけれど、これで離婚するいい機会になると。
 セックスレスで女として見てもいないこと、自分勝手ですぐに怒るところ、家事にも育児にも参加しないこと。それまでの夫への不満を全部ぶちまけて、ほとんど逆ギレ逆襲になった。
「相手の男と妻を連れてこい。話をつける」
 そう言う夫に私は言った。
「彼がどこの誰であろうと関係ない。大切にしなかったものを誰かに取られたって、文句言えないでしょう」
 彼の素性だけは一切明かす気はなかった。この男を殺してでも、彼と彼の家庭は私が守る。そんな覚悟だった。
 しかし案外あっけなく夫の方が折れた。
「お前は言わないだろうな。そんな女だ。出ていけ。今すぐ家から出ていけ」
「わかった」
 即答する私に夫が畳み掛けるように言う。
「子供にも二度と会わせんからな!」
「それはあなたの決めることじゃない。もう子供たちも自分の意思を言える歳なんだから、それは子供たちが決めること。だいたい懐きもしてない子供たちを育てられるの?〇〇(息子)なんかあんたを怖がって話しかけることもできないのに」
 そう言い返して荷物をまとめ始める私を、夫は少しの間黙って見ていた。
「どこへ行くつもりなんだ?」
「車に寝泊まりしてでも漫喫でも、路上生活になってでもいい」
 覚悟なんてとうにできていた。迷いなく言い放つ私に夫が言った。
「そんなことさせられるわけないやろ…。考え直してくれ。出ていくなんて言わないでくれよ。他に男がいたっていい。でもオレも悪いところは直すように努力するから」
 結局このときは逆ギレ女の完全勝利で、逆に夫の方が謝る羽目になって離婚騒動は終結した。

「そうか…大変やったな。でも離婚にならなくてよかったのかも。あっちが離婚しても俺は結婚してやれないからな…」
 彼はそんな少し的外れなことを言ってため息をついた。少々時代錯誤な気もするけれど、昭和気質な彼にしてみれば男は結婚して女を守らなくてはいけないという思いがあるのだろう。
 実際、彼の妻は夜専の仕事をしていても給料は20万に届かないらしい。彼と別れたら生活は厳しいものになるだろう。
 でも私は看護師。離婚したってなんとかやっていける。

 私としては残念ながら離婚に至らず、余計に夫に対するストレスは高まるばかりだった。
 夫がやたらと私に構うようになって、手をつないだりキスしてきたりするのだけれど、もう完全に心が離れている嫌いな男に擦り寄られても気持ち悪いだけ。
 子供の頃から胃腸の弱い私はストレスを受けるとすぐに下痢をする。食欲もなくフルーツゼリーを食べただけでも直後に激しい下痢で、もう粘液しか出ないような状況が2週間ほど続いた。
 それでも夫は心配するでもなく食事の支度を急かしたり外食をしたがったりと、更に私を苛立たせる。
 やっと下痢が治まったと思ったら、今度は顔面神経麻痺を起こした。医者には「ストレスが原因なんだから、仕事休みなよ」と言われながら、「仕事してた方が気が紛れるんですよ」なんて言ってブロック注射を受けながら働いた。
 それでも家での日常は変わらず。仕事に家事に子どもの世話。まとわりついてくる夫のおかげで気の休まる暇もない。
 唯一私の身体を心配してくれる彼の存在だけが支えだった。


 
 


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