彼との衝撃的かつ変態的な出逢いと、愛に至る道のりを語っていきます。
これは彼との愛の物語
秋も深まって夜には寒いくらいになってきた頃、いつもなら無理を言わない彼が急に会いたいと言ってきた。
いつも快活でお喋りな彼が、口数少なく俯いている。疲れ切ったような顔をして、何か話の糸口を探すように黙り込む。
私は彼の手を両手で包み、優しく撫でて彼の言葉を待つ。
「俺とつきあうなら、話しておかなきゃならないことがあってね…」
重い口をついてやっと出た話はこうだった。
彼は私の前にも、妻がありながらつきあっていた女性がいた。その女性を妊娠させてしまったのだと言う。私が懸念した通りのことが起きていたのだ。
彼は既婚者。彼女の方が独身でも、簡単に産み育てることはできない。同意の上で中絶させて別れたのだと言う。
それが1年ほども経った今になって連絡をよこしてきた。中絶費用は折半で支払ったのだが、やはり全額払ってもらいたいと言うのだ。
10万円程ではあるが、月の小遣い4万の中から急にそんな大金を用意することもできない。しかし彼女はすぐに支払わないならデートDVで訴えると言ってきた。
「もう嫌や…。しんどい」
「元から別れたいって言うと、死んでやるとか言ってキツい女やった。もっと早く別れてればな…」
彼の頬をつたう涙を見て、私は胸が苦しくなった。彼は悪くないとは言えないけれど、それでも彼を責める気にはならなかった。
彼の頭を抱えるようにして抱きしめた。
「つらかったね。それはしんどいよね」
私の腕に身体を預けたままで、彼が小さな声で言う。
「軽蔑するやろ?俺のこと嫌いになった?」
「そんなことない!」
咄嗟に口をついて出た言葉だったけれど、紛れもない本心だった。
確かに妊娠のリスクも考えずに衝動に任せて中出ししてしまう彼は軽率である。しかしそれを拒否しなかった彼女にも責任の一端はある。彼だけが責められるのは間違っていると思った。
確かにあの迫力で請われれば断れないのもわかるけれど、彼は嫌がるものを無理やり圧し通すような人間ではない。相手に責任を押しつける前にしっかり自衛することが必要なのではないのか。断固として断るなり、私のようにIUDでもピルでも使うなり方法はあるのだ。
彼に危なっかしいところがあるのは確か。放置プレイに喜び勇んで参加するし、覗き好きの露出狂だし、衝動を抑えられないし…
そんな彼の危うさはわずか2ヶ月ほどのつきあいの私でもわかるのに、自分は何もせずにただ彼を責める彼女に怒りさえ感じた。
何より、こんなにも優しいひとを苦しめることが許せなかった。
しばらくはただ彼を腕に抱いて、眠る子供を撫でるように優しく彼の頭を撫でていた。そして決心した。
「そのお金、私が用意する」
10万くらいのお金ならなんとかなる。一刻も早く彼を救いたかった。
しかし彼は頷かなかった。
「そう言うと思ったから、話すの迷ったんや。大丈夫。給料前借りしてなんとか5万くらいは用意できそうだから、あとは自分でなんとかするよ」
「でも急ぐんでしょ?」
それでも彼は首を縦には振らなかった。
ここから私の必死の説得が始まる。