前回、【缶入り】で販売されていた〈パイプたばこ〉の《桃山》と《飛鳥》をご紹介しましたが、

〚日本専売公社〛が販売していた【缶入り】のたばこはもう1種類あります。

 

円筒形の缶に詰められた、50本入りレギュラーサイズの《ショートピース》です。そこで今回は、

缶繋がりと言う事で《缶入りピース》に巻かれたラベルの変遷をご紹介します。

 

〚日本専売公社〛の時代には、《ピース》は両切り10本入り〈レギュラーサイズ〉と、フィルター付き20本入り〈ロングサイズ〉の2種類がありました。そして、両切り〈レギュラーサイズ〉には50本入の《缶ピース》が用意されています。

 

 

〈ロングサイズ〉は《ロングピース》と呼ばれ、両切り〈レギュラーサイズ〉は《ショートピース》と呼ばれます。発売当初は濃紺地に3本の細い唐草模様のラインが上下に描かれたデザインでした。

 

昭和27年(1952年)4月からデザインが変更され、アメリカのデザイナー ≪レイモンドローウィ≫ 氏による、今も馴染みの深い(オリーブを咥えた鳩)のデザインに変更されます。

 

 

 

《ショートピース》は、昭和21年(1946年)の発売当初は10本入りの小箱でした。そして2年後の昭和23年(1948年)から50本入りが登場しています。

 

50本入りは、発売当初は10本入り小箱を大きくしたような四角い箱入りでしたが、同じ年に四角いブリキ缶に変更されました。デザインは缶に直接印刷されています。

 

昭和24年(1949年)7月から円筒形の缶入りに変更され、現在も継続されている丸缶の形態となりました。それまではデザインが缶に直接印刷されていましたが、この時から丸缶に紙のラベルが巻き付けられています。

 


 

その後、昭和27年(1952年)4月から(オリーブを咥えた鳩)のデザインとなります。開口部は薄い金属で密封され、缶の蓋に爪が付いています。爪を移動して薄手の開口部に差し込み、蓋を回転させる事で缶切りのように開封します。

 

昭和27年(1952年)からデザインは変わらずに踏襲されていますが、〈健康表示〉や〈証票変更〉などの〚日本専売公社〛による大きな変更のほか、ラベルの糊付け白抜きに変化も見られます。

 

 

              珍しいたばこの〈値下げ〉

 

昭和25年(1950年)と昭和26年(1951年)には、戦後の狂乱物価が安定してきた事も言えるのかも知れませんが、それぞれ理由があって2年続けての値下げが実施されています。

 

昭和25年(1950年)は在庫処理の必要性からの値下げだったようで、昭和26年(1951年)は減税措置からの値下げだったようです。パイプたばこ《桃山》《日光》と、販売中の(紙巻きたばこ)が値下げされています。

 

 

昭和25年(1950年)には、両切りたばこの《光》《新生》《ハッピー》《憩》《ピース》の5銘柄と併せて、パイプたばこ《桃山》《日光》の2銘柄が値下げされました。

 

昭和26年(1951年)には、口付きたばこ《朝日》と、両切り《光》《憩》《ピース》の4銘柄に併せて、パイプたばこ《桃山》《日光》の2銘柄が値下げになりました。

 

両切りたばこの《光》《憩》《ピース》と、パイプたばこの《桃山》《日光》の5銘柄は2年連続で値下げが実施されています。

 

 

《ピース》は昭和31年(1956年)にも、積みあがった在庫処理のために値下げが行われました。〚専売局〛〚日本専売公社〛を通して唯一と言える、同じ銘柄で3回の値下げが実施されています。

この時には、両切りたばこの《富士》と併せて2銘柄が値下げされました。

 

 

 

 

 

 

 

             50本入 両切りピース

 

              旧デザイン【唐草ライン模様】

 

①昭和23年(1948年)     角型 紙箱    売価 300円

②昭和23年(1948年)頃    角型 ブリキ缶

③昭和24年(1949年)7月    丸形 ブリキ缶

 

 

        デザイン変更【オリーブを咥えた鳩】

 

①昭和27年(1952年)4月    丸形 ブリキ缶 旧【桜証票】

②昭和28年(1953年)4月頃   丸形 ブリキ缶 新【専証票】

③昭和43年(1968年)5月1日   定価改定 (50本)を丸で囲む

④昭和47年(1972年)7月    健康表示印刷

⑤昭和49年(1974年)9月    金付けを金インクに変更

⑥昭和50年(1975年)7月    ≪np≫マーク印刷

⑦昭和55年(1980年)6月    証票変更

⑧時期不詳             ラベル白抜き位置 左側

 

 

       販売期間中に、判明しているだけで以上のような変更が見られます。

 

証票は昭和28年(1953年)4月より変更され、【桜証票】から新しい(専)の字をモチーフにした【専証票】が導入されています。

 

      

 

昭和43年(1968年)5月1日の一斉定価改定のために、入数が(五十本入り)の表記から新価格品では算用数字の(50本)を丸で囲んだ表記に変更されました。

 

登場した時期は不明ですが、糊付けの白地部分が左側に移動したラベルがあるようです。糊付けする部分、ラベル両端の重なり方が逆になっています。

 

 

 

 

 

 


昭和41年(1966年)頃の缶です。父親が《いこい》と併せて《ショートピース》を吸っていて、自宅では洋品店の時代に価格ラベルなどを保管するために《ピース》の空き缶を利用していました。

たばこのパッケージを集め始めた昭和50年頃に倉庫を探したら、4缶ほど残されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ②昭和28年(1953年)4月頃   丸形 ブリキ缶 新【専証票】

  昭和43年(1968年)5月1日   入数表示 変更のため中止

 

証票が新しい(専)の字をモチーフにしたデザインに変更されたラベルです。ラベル上下の金ラインが、右側に見える糊付けの白地部分の手前で途切れています。

 

                                          

  【専証票】                五十本入            金ラインなし

 

    ↓                     ↓           ↓

                      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

③昭和43年(1968年)5月1日   定価改定 (入数 50本を丸で囲む)

 昭和47年(1972年)7月    健康表示 印刷により中止

 

昭和43年5月1日に〚日本専売公社〛の時代で初めて実施された一斉定価改定の時に、新価格に対応した製品として新しく用意されています。入数の表示が変更されました。

 

縦書きの《ピース》の文字の下に印刷された入数が(五十本入り)から、丸い囲みの中に(50本)と算用数字で書かれています。

 

上下の金色ラインが糊付け白地部分まで印刷されています。このラベル以降は、〚日本専売公社〛の時代は同じ印刷が続きます。上下の金ラインは〚日本専売公社〛の最後まで糊付け白抜き部分に印刷されているようです。


 

                       ↑             ↑

                   (50本)を丸で囲む          金ラインあり

 

                        ↓            ↓

                                

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ④昭和47年(1972年)7月    健康表示 印刷

    昭和49年(1974年)9月    金付け 変更のため中止

 

縦書きで〈健康表示〉が印刷されました。金色部分の印刷は発売当初から続いている〈金付け〉です。この後2年ほどで〈金インク〉に変更されます。これは全ての銘柄に共通する変更です。

 

                        

                    健康表示 印刷〈金付け〉

 

                        

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ⑤昭和49年(1974年)9月    金付けを金インクに変更

   昭和55年(1980年)6月    証票変更により中止

 

これまで〈金付け〉で印刷されていた部分が〈金インク〉に変更されました。この変更は〈金付け〉が使用されていた全てのパッケージで、同時に実施されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ⑥ 昭和50年(1975年)7月    ≪np≫マーク印刷 (2ヶ月程度)

 

    昭和50年 12月 18日 (缶にシール貼付)     定価改定   定価 375円

 


昭和50年(1975年)5月1日に値上げが予定されました。そこで沖縄たばこと《おおぞら》を除く銘柄に、新価格に対応するため  ≪np≫  マークが印刷されます。ところが国会を通過せずに値上げは見送られてしまいます。

 

印刷は2ヶ月程度とごく短期間の販売でしたが、そのまま旧価格で販売されていました。この印刷にはコレクター以外、一般の喫煙者はほとんど気が付かなかったのではないかと思います。

 

口付きたばこ《朝日》はもともと値上げが予定されていませんでしたので印刷されていません。

 

                       

                   ≪np≫マーク印刷

 

                       

 

 

 

 

 

結局昭和50年12月に値上がりしましたが、その時には新たに赤いシールが缶のラベルに貼付されています。この時の値上げ率は高く、5割もの値上げとなりました。他の銘柄は外装セロファンに貼付され、セロファンのない旧3級品は直接パッケージに貼付されました。

 

 

 

昭和51年3月から ≪np≫ シールを貼付しないことを周知するポスターです。たばこ店の店頭に貼り出されました。サイズがB4判で長さが38センチ近いのでスキャナーに収まりません。

 

上下2枚の画像を張り合わせたので色の違いがありますが、1枚のポスターです。このポスターは、自宅と同じ商店街にあるたばこ店で貰いました。

 

 

 

昭和52年12月には法改正が実施されます。そこから値上げは国会の承認が必要なくなり、管轄大臣の認可で公社が独自で行えるようになりました。〚日本専売公社〛に限らず、〚日本国有鉄道公社〛国鉄の運賃も同じです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ⑦昭和55年(1980年)6月     証票変更

   昭和60年(1985年)4月 1日   社名変更により中止

                          〚日本たばこ産業株式会社〛となる

 

〚日本専売公社〛の証票が変更されました。これまでの(専)の字をモチーフにしたデザインから、煙のような雲のようなデザインになりました。これまでの証票らしいイメージが一新されています。

 

  

 新証票

 

 

 

 

 

 

      〚日本専売公社〛の時代に実施された《50本入 ピース》の定価改定

 

      昭和23年(1948年)        発売      定価 300円

      昭和25年(1950年 ) 4月  1日          定価 250円(値下げ)

      昭和26年(1951年 ) 4月  1日            定価 200円(値下げ)

      昭和29年(1954年 ) 4月  1日          定価 225円

      昭和31年(1956年)  3月  1日          定価 200円(値下げ)

      昭和43年(1968年)  5月  1日          定価 250円

      昭和50年(1975年)12月18日          定価 375円

      昭和55年(1980年)  4月22日          定価 450円

      昭和58年(1983年)  5月  1日          定価 500円

 

 

 

 

〈両切りたばこ〉では、50本の缶入りたばこと言うのはそんなに珍しい事ではなかったようです。

 

〚日本のたばこデザイン〛を見ると明治時代の《エアーシップ》大正時代には記念たばこ《ピース》昭和に入ると《サロン》《チェリー》《光》などが、円筒形の50本入り丸缶で登場しています。