昭和43年(1968年)8月20日、新しいレギュラーサイズのフィルターたばこ《エコー》が発売されました。今回は《エコー》に見られるパッケージの変遷をご紹介します。
昭和35年に《ハイライト》が初めて〈ロングサイズ〉で登場してからは、フィルターたばこでは
〈ロングサイズ〉の新発売が数多く続きましたが、《エコー》は〈レギュラーサイズ〉です。
〈レギュラーサイズ〉とは、それまでの両切りたばこと同じで短いサイズです。〚日本専売公社〛で初めてのフィルターたばこ《ショートホープ》に次いで二銘柄目の登場でした。
《エコー》は3級品として販売されましたので、価格は安く設定されています。外装セロファンも
装填されませんでした。《いこい》など、これまでの安い両切りたばこの喫煙者が〈フィルターたばこ〉へ移行する事を想定して発売したようです。
〚日本専売公社〛では1級品から3級品まで用意していましたが、葉タバコの使用部位によって区別されています。葉タバコを全て使い切るためです。
1級品は柔らかい上質な部分、2級品はその他の部分が使われ、3級品は葉の中央にある葉脈部分とか葉タバコの中でも低質な葉や、1~2級品の刻みクズなどが使用されたと聞いています。
昭和43年の発売当初、《エコー》は2種類のパッケージデザインが用意されて試験販売が実施されています。実施場所は〈静岡県〉と〈宮城県〉と言う事です。
パッケージを集めようと思った高校生の頃、私は地元の専売公社支局へ出向いて色々と尋ねていました。その時に職員の方からテストマーケットのパッケージをいただいています。珍しいパッケージなので、感激した事を今でも覚えています。
《エコー》の地色は、発売当初は黄色系統の地色でした。しかし昭和47年頃にはオレンジ色系統の地色に変更されています。それほど目立つ差ではないし、それぞれのパッケージで濃淡が激しいので、色の違いが分かり辛く区別する人は少ないようです。
《エコー》は昭和43年5月に実施された、〚日本専売公社〛で初めての〖定価改訂〗後に発売された銘柄です。〖暫定封緘紙〗や〖定価改訂シール〗などの変化がない、最初のパッケージです。
こちらのレギュラーサイズ《エコー》は、フィルターたばことしては前回ご紹介した《ルナ》の発売から9ヶ月に登場した、〚日本専売公社〛による15番目の新製品となります。
昭和50年(1975年)頃、当時集めていたたばこは全て開いています。1972年に刊行された〚日本のたばこデザイン〛にペーパーの展開写真が掲載されていて、面白いので真似をしてみました。
試験販売でパッケージのデザインは2種類用意されましたが、ペーパーのデザインには変化がなく、
こちらの1種類だけです。ペーパーには品名だけが印刷されていて、シンプルなデザインです。
サイドに四桁の数字が印刷されています。上二桁は製造工場の番号で、下二桁はその工場の製造機械の番号だと聞いています。37番工場の16号機と言う事です。製造履歴が分かる数字の記載が始まったのは、昭和44年(1969年)5月からです。
手元で確認している《エコー》の変化
① 昭和43年(1968年) 8月20日 (静岡)(宮城)でテストマーケット
② 昭和43年(1968年) 8月20日 全国展開 両サイド白抜き 56㎜.
③ 昭和45年(1970年) 9月 両サイド白抜き 59㎜. に変更
④ 昭和47年(1972年) 7月 健康表示 印刷
⑤ 昭和50年(1975年) 7月 ≪np≫ マーク印刷
⑥ 昭和50年(1975年)12月 定価改定 暫定封緘紙《ハイライトの封緘紙》
⑦ 昭和55年(1980年) 6月 証票変更
⑧ 昭和58年(1983年)10月頃 製造年月日 印刷
⑨ 昭和59年(1984年) 封緘紙部分の白抜き 17㎜. と広くなる
レジスターマーク印刷
〚日本専売公社〛の時代の定価改定は最後にまとめて掲載しています
エコー
①昭和43年(1968年)8月20日 20本入 定価 50円
〈静岡県と宮城県で試験販売〉
昭和43年 製造中止
〈静岡県〉と〈宮城県〉において、2種類のパッケージが並行販売されて試験販売が実施されました。こちらは採用されず、試験販売の期間だけで姿を消しています。
デザインは音波が広がるイメージでしょうか、いかにも昭和的なデザインです。昭和初期に発売されていた〈口付き煙草〉《響》の、工場のサイレンが響き渡るデザインを彷彿とさせます。
高校3年の時、地元の専売公社支局の職員の方にいただいたパッケージです。専売公社支局にたばこパッケージに付いて質問に伺った時、若いのに煙草に興味を持って調べている事が珍しいと言う事でいただきました。地元は静岡なので試験販売されていた地域です。
②昭和43年(1968年)8月20日 20本入 定価 50円
昭和45年(1970年)9月 フラップ白地変更のため中止
試験販売ののち、こちらのデザインが採用されて全国展開されました。両サイドの糊付けフラップに見られる白地の長さは 56mm.と短いサイズです。1970年に他の銘柄と併せて変更されています。
地色は黄色味の強い色で印刷されました。
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白地 56㎜ 白地 56㎜
③昭和45年(1970年)9月 フラップ白地 59㎜ となる
昭和47年(1972年)7月 健康表示のため中止
両サイドの糊付けフラップに見られる白地の長さが 59mm.と長くなりました。1970年9月頃より白地の長さが統一されています。この頃はまだ黄色系統の地色です。
レギュラーサイズは 59mm. となり、ロングサイズでは 70mm. です。この時期に販売されていた【U字Ⅱ型包装】の全銘柄に共通しています。
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白地 59㎜ 白地 59㎜
④昭和47年(1972年)7月 健康表示印刷
昭和55年(1980年)6月1日 社章変更のため中止
昭和47年9月よりサイドに健康表示が印刷されました。最初に私が購入したのはこのパッケージからです。昭和50年(1975年)10月頃に購入しています。同じ年の7月に印刷された ≪npマーク≫ は既に販売していませんでした。
この頃にはオレンジ色系統の地色になっています。昭和45年~昭和47年の間に地色が変更されるようですが、正確にいつ頃だったのかは分かりません。〈健康表示〉が記載された以降は濃淡が激しくて、同じオレンジ色系統でも初期の黄色系統に近いような濃い彩色も見られます。
⑤昭和50年(1975年)7月 ≪np≫マーク印刷
昭和50年 12月 18日 (外装セロファンにシール貼付) 定価改定 定価 70円
昭和51年 2月まで (外装セロファン白開封テープ 3級品は暫定封緘紙)
昭和50年5月1日にはたばこの値上げが予定されていました。そこで沖縄たばこと《おおぞら》を
除く銘柄に新価格のマークが印刷されますが、国会を通過せずに値上げが見送られてしまいます。
口付きたばこ《朝日》はもともと値上げが予定されていないので印刷されていません。
npマークの印刷されたパッケージはごく短期間、何事もなく旧定価で普通に販売されていました。この印刷にはコレクター以外、一般の喫煙者はあまり気が付かなかったと思います。
底面に ≪np≫ マーク
↓
結局、たばこの値上げはこの年に実施されます。昭和50年12月18日には《朝日》を除く全銘柄の
定価改定が実施されて、5割もの値上がりとなりました。新価格の製品には、新たに赤い丸型シールが用意されています。外装セロファンに昭和51年2月まで貼付されていました。
こちらのシールは外装セロファンのない3級品のたばこ《エコー》では直接貼付されていました。
また外装セロファンのある銘柄では、暫定的にセロファンの開封テープが白色に変更されましたが、セロファンのない3級品には《ハイライト》の封緘紙を暫定的に使用しています。
昭和51年3月から ≪np≫ シールを貼付しないことを周知するポスターです。たばこ店の店頭に貼り出されました。サイズがB4判で長さが38センチ近いのでスキャナーに収まりません。
上下2枚の画像を張り合わせたので色の違いがありますが、同一ポスターです。このポスターは自宅と同じ商店街のたばこ店で貰いました。
昭和52年12月には法改正が実施されます。そこから値上げは国会の承認が必要なくなり、管轄大臣の認可で公社が独自で行えるようになりました。〚日本専売公社〛に限らず、〚日本国有鉄道公社〛国鉄の運賃も同じです。
⑥ 暫定封緘紙
昭和50年(1975年)12月18日に定価改定が実施されます。赤く丸い定価改定のシールが貼付されましたが、3級品の《しんせい》《わかば》《エコー》は暫定封緘紙が用意されました。
⑦昭和55年(1980年)6月1日 社章変更
昭和58年(1983年)10月頃 製造年月日印刷のため中止
1980年6月1日より専売公社の証票が新しくなりました。【専】を図案化したデザインから、煙のような雲のような形に変更されています。
他の銘柄では、多くが1977年~1978年頃からサイドの糊付け部分にレジスターマークが印刷されています。《エコー》はかなり遅く1983年に製造年月日が印字されてもまだ印刷されていません。
⑧昭和58年(1983年)10月頃 製造年月日印刷
昭和59年(1984年) 白抜き幅変更のため中止
〚封緘紙部分の白抜き幅変更〛
確か1983年の10月頃からだったと思いますが、パッケージに製造年月日が記載される事となりました。一般的には外装セロファンに印字されていますが、3級品でセロファンのないパッケージには直接印字されています。
こちらは製造年月日が印字されて間もなくの頃のパッケージです。底面に製造年月日が印字されたのですが、まだレジスターマークは印刷されていません。封緘紙部分の白抜き幅は 14mm.です。
58.11.14 と印字されています。(昭和58年11月14日)
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白抜き横幅 14㎜
⑨昭和59年(1984年) 封緘紙の白抜き幅 17㎜
レジスターマーク印刷
昭和60年(1985年)4月1日 社名変更により中止
〚日本たばこ産業株式会社となる〛
昭和60年1月16日製造のパッケージです。封緘紙の糊付け部分の白地幅がこれまでは 14mm.でしたが、17mm.と広くなりました。両サイドの白地部分にはレジスターマークが印刷されています。
60.1.16 と印字されています。(昭和60年1月16日)
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白抜き横幅 17㎜
〚日本専売公社〛の時代、《エコー》で実施された定価改定
昭和43年(1968年) 8月 1日 発売 定価 50円
昭和50年(1975年) 12月 18日 定価 70円
昭和55年(1980年) 4月 22日 定価 90円
昭和58年(1983年) 5月 1日 定価 110円
《エコー》は〚日本専売公社〛の3級品たばこです。
〚日本専売公社〛の時代のパッケージ変化はいくつか見られます。これは他の銘柄でも同じ事が言えます。共通した変化を挙げておきます。
● 昭和45年9月頃から、U字Ⅱ型包装ではサイドの白地部分の長さがレギュラーサイズ 59㎜
ロングサイズは 70㎜ となる。
● 昭和47年7月から、サイドに健康表示が印刷される。
● 昭和49年9月から、金色が彩色されている銘柄では、金付けが金インクに変更される。
● 昭和50年7月には、ごく短期間、パッケージに ≪np≫ マークが印刷される。
● 昭和51年6月から、順次レジスターマークが印刷される。多くは昭和52年以降です。
● 昭和55年6月から、公社のマークが変更される。
〚日本専売公社〛の時代はパッケージの印刷もキッチリとしていて、印刷会社による変化が見られません。そのためこちらの大きな変更は共通しているし、各銘柄の変化もしっかり管理されています。
昭和58年10月頃より《ゴールデンバット》《しんせい》《わかば》《エコー》では、パッケージに製造年月日が印字されています。《しんせい》と《エコー》はその頃にレジスターマークが印刷されるようになりました。
また昭和59年には《しんせい》《わかば》《エコー》の封緘紙の糊付け部分の白抜き幅がそれまでの 14mm.から 17mm.へと広くなっています。他の銘柄は確認できないので不明です。
パッケージの変化ではなく、定価改定などによる外装フィルムの変化。セロファン包装の第一号は
昭和28年からで、高級たばこ《富士》の新発売の時だったそうです。
● 昭和46年頃から、 外装セロファンが広く普及する
(旧3級品にはセロファン包装がありません)
● 昭和50年12月から、3か月間、外装セロファンに ≪np≫ シールが貼付される。
(セロファンのない旧3級品は直接シールを貼付)
● 昭和51年 2月まで、ごく短期間、外装セロファンの開封テープが白色となる。
(セロファンのない旧3級品は暫定封緘紙)
● 昭和58年10月頃 外装セロファンに製造年月日が印字される。
(セロファンのない旧3級品は直接パッケージに印字)
外装セロファンが装填されなかった〈旧3級品〉の銘柄とは、両切りの《ゴールデンバット》と
《しんせい》、フィルター付きの《わかば》と《エコー》の4種類です。
日本たばこ産業株式会社
1985年4月1日
1985年4月1日、〚日本専売公社〛に代わって〚日本たばこ産業株式会社〛が発足します。私がたばこのパッケージを集めていたのは〚日本専売公社〛の時代ですが、社名が変更されて収集を全くやめてしまったわけではありません。
全てを集める事はなくなりましたがふと思い立った時などに購入していましたし、友人からもパッケージを貰っていました。しかし《エコー》は発足当初のパッケージが1枚もありません。
〚日本たばこ産業株式会社〛になると健康表示の文字が横書きになり、バーコードが印刷されました。それまでの(製造年月日)が(賞味期限)にも変更されています。
発足から3年後の1988年2月頃から、古くからの〈ロングサイズ〉に多く見られた幅の広い封緘紙が狭くなり、全銘柄で細い封緘紙に統一されます。
封緘紙を比較しました
〚日本専売公社〛の時代にも1976年以降は ≪キングサイズ≫ 以上では細い封緘紙になりますが、
≪ロングサイズ≫ は太い封緘紙が使われていました。1988年2月頃より全ての銘柄が細い封緘紙に統一されます。
封緘紙が細く統一された事に伴ってパッケージの白地も変更されました。《しんせい》《わかば》
《エコー》の3銘柄は封緘紙の糊付け部分の白抜き幅が 17mm. と広かったのですが 、14mm. に戻されています。
JT
1990年頃~1997年頃
1988年10月以降は【JT】のネームが導入されます。【JT】と印刷されるのは1990年頃からです。【JT】になるとパッケージの基本デザインは同じですが、文字表記が目まぐるしく変化しています。【JT】の印刷当初は、サイド上部に大きく【JT】と書かれています。
この期間にはパッケージに価格記号が印刷されていました。アルファベットと数字を組み合わせていますが、数字が定価を表しています。アルファベットは製造日か賞味期限の記号だと思います。
1997年頃より
1997年頃から【JT】のロゴが小さくなり、社名と並べて表記されます。これまで見られた定価記号は削除されました。
初期のロゴの大きなパッケージはありませんが、【JT】のロゴが小さくなって社名表記と並んだパッケージは購入していました。偶然、ふと思い立って購入していたのだと思います。パッケージが
厚くなり、艶紙になっていました。
2003年12月9日にリサイクルマークの導入が決定されます。こちらには、既にリサイクルマークが印刷されていました。2005年よりサイドの〈健康表示〉が正面に移り、大きな文字で書かれる事でデザインが縮小されます。
賞味期限 H.14.10月 (2002年10月)
賞味期限 H.15. 5月 (2003年5月)
2016年6月以降には、3級品の税率優遇措置が徐々に廃止されて3級品は姿を消します。販売中の4銘柄だった《ゴールデンバット》《しんせい》《わかば》《エコー》にはセロファン包装が装填されます。同時に、両切りの《ゴールデンバット》《しんせい》はフィルターチップとなりました。
2018年12月には《しんせい》が製造中止になります。2019年10月には、《わかば》《エコー》
《ゴールデンバット》の3銘柄がシガーに生まれ変わりました。紙巻きたばこはいずれも製造中止になっています。
《ゴールデンバット》はシガーに変更されたと同時に北海道の限定品となり、全国販売が中止されました。この3銘柄は海外に受注され、国内生産はしていないようです。北海道の限定販売となった
《ゴールデンバット》ですが、2022年11月で廃止されています。
次回は《エコー》の発売から半年後の昭和44年2月に登場した《セブンスター》をご紹介します。