昭和42年(1967年)5月15日に発売された《泉》は、昭和40年(1965年)6月1日に登場している

《エムエフ》と同じメンソールたばこでした。12本入りと言う端数の出る特徴的なパッケージで、〚日本専売公社〛による〈紙巻きたばこ〉の販売品としては初めての入数です。

 

〚日本専売公社〛ではほとんどのたばこが10本入か20本入で、僅かに《ハイライト》《おおぞら》《ベルミニ》が25本入、また《ミニスター》の30本入のほか《ピース》の50本入が存在します。

 

戦前の〚煙草専賣局〛の時代には、大正9年に《両切り 朝日》が22本入と言う入数で販売されていました。他はやはり10本入か20本入ばかりで、多い数では50本入、100本入が見られます。

 

第二次世界大戦 前後の物資不足の時代には、終戦の昭和20年を挟んで3年間ほど《両切り 朝日》がバラ売りされた事もあったようです。販売は10本単位だったようですが……。

 

 

 

《泉》の販売価格は、発売当初は12本入で50円でした。1級品の《ホープ》《ピース》より安く、2級品の《ハイライト》《エムエフ》よりは僅かに高いと言う、2級品に近い中間的な価格でした。

昭和43年5月の定価改定で60円に値上がりして1級品と同じ価格帯になります。

 

昭和44年5月には製造中止となり、昭和42年の発売からちょうど2年の販売期間で姿を消しています。私は〚日本のたばこデザイン〛で写真を見るまで全く知らない銘柄でした。ないものねだりなのですが、学生時代には一度は〈12本入のメンソールたばこ〉を吸ってみたいと思ったものです。

 

 

 

〈フィルターたばこ〉の仲間は横文字が多いのですが、昭和41年(1966年)8月発売の《わかば》から《こはく》《やまと》と続き、今回の《泉》まで和風の名前が4銘柄 連続しました。

 

《泉》は漢字一文字の銘柄です。明治時代から〈口付きたばこ〉や〈両切りたばこ〉に一文字の銘柄がいくつか見られ、〈フィルターたばこ〉でも忘れた頃に登場しています。

 

〈フィルターたばこ〉では《泉》《蘭》《峰》《雅》と続き、昭和59年7月には〚日本専売公社〛としては最後の一文字銘柄となる《匠》が発売されました。5銘柄が数えられます。クロスライセンスの銘柄や輸出銘柄にも《燦》《都》《碧》《祭》などの〈フィルターたばこ〉が見られます。

 

 

 

《泉》は〈メンソールたばこ〉で、薄荷成分は葉タバコに含ませています。昭和48年7月に発売された《ミスタースリムメンソール》以降は薄荷成分をフィルター部分に含ませていると言う事です。

学生時代に《日本橋たばこサービスセンター》で伺っています。

 

当時は《泉》を所持していませんでしたし現物を見た事もなく、業者を探して購入するまでの気持ちを全く持っていませんでした。琉球煙草の研究でお世話になった方からパッケージをいただいた時に、『小さっ!』と感じた記憶が残っています。

 

 

 

こちらのメンソールたばこ《泉》は、フィルターたばことしては、同日発売の《こはく》《やまと》に続いて発売された〚日本専売公社〛による12番目の新製品となります。

 

 

 

 

 

                     

 

   昭和42年(1967年)5月15日   12本入  定価 50円

   昭和44年(1969年)5月      製造中止 

 

12本入と言う事で、かなり小さなパッケージです。封緘紙もずいぶんとスリムに作られています。

たばこ店に他のたばこと並んでいた様子はどんな雰囲気だったのでしょうか。興味があります。

 

 

デザインは今見るとレトロでいかにも昭和と言う感じがします。しかしこの頃のパッケージはどれも昭和のたばこデザインの文化を具現する証人であり、日本のグラフィックデザインの進化を語る大切な存在と言えるのかも知れません。

 

明治〚煙草専賣局〛の時代から〈口付き煙草〉には和風の絵模様が多く、〈両切り煙草〉には洋風のグラフィックデザインの要素を取り入れた銘柄が多く見られます。

 

私は個人的には、たばこのデザインとしては明治時代の〈口付き煙草〉の絵模様が好きです。しかし(売り物=商品)として考えると……、やはり現代では受け入れられない事でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          〚日本専売公社〛の時代、《泉》で実施された定価改定

 

        昭和42年(1967年)   5月 15日  発売       定価    50円

        昭和43年(1968年)   5月   1日         定価    60

 

《泉》は僅か2年間の販売ですが、丁度昭和43年に実施された一斉 定価改定の時期と重なります。

 

 

 

昭和43年(1968年)5月1日に、専売公社として初めての一斉値上げが実施されました。旧価格品と新価格品を区別するために、銘柄によっていくつかのパッケージ変化が見られます。

 

● 封緘紙のデザインを変えずに、暫定的に印刷色を変化させる。

  《ホープ》《ピース》《ルナ》《ハイライト》《ハイライトデラックス》《mf エムエフ》

  《ひびき》《トリオ》《スリーエー》の、9種類の暫定封緘紙が確認できます。

 

  《ハイライト》と《ハイライトデラックス》は、《ハイライト25》の封緘紙と同じデザインで

  (25)の数字のない色違いです。この暫定封緘紙が《ハイライト25》に引き継がれます。

 

 

 

 

● 定価改定の丸型の小さなシールをパッケージに貼付する。

定価改定のシールは全6種類が用意されたようです。印刷色と併せて中央の星の数がそれぞれ違います。たばこの値上げ価格によって違うようです。ただし、赤色=星1個は共通用なのだそうです。

 

 

こちらは赤色で中央の星が1個です。他に赤紫色=星1個、青色=星2個、オリーブ色=星3個、

レモン色=星4個、また中央に星の代わりに〈輸入たばこ〉と書かれたタイプを加えて6種類です。

 

はっきり分かりませんが、改定額が星1個=10円、星2個=20円、星3個=30円、星4個=40円なのだと思います。星の数で10円~40円までの値上げ金額を表しているようです。

 

《泉》の新価格品は、10円の値上げなのでパッケージに〈赤紫色=星1個〉、あるいは共通用の〈赤色=星1個〉のシールが貼付されていたと考えられます。

 

 

 

昭和43年(1968年)5月1日の定価改定は、たばこのフィルム包装が広く普及する前の事です。

定価改定のシールは、まだ多くの銘柄でパッケージに直接貼付されていたと思われます。

 

しかし《ハイライト》では昭和35年(1960年)の発売当初からセロファン包装されていましたが、パッケージにはシールの貼付が見られます。他の全銘柄に対しても、セロファンが装填される前に直接パッケージにシールを貼付していたのでしょうか?。

 

 

この2種類の方法が採られたようです。銘柄によって違うようですが、当時小学生だった私には詳しい事は分かりません。学生時代にも《たばこサービスセンター》で伺っていませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

これまで〈フィルターたばこ〉を発売順に12回、13銘柄ご紹介してきましたが、パッケージの種類が1枚だけなのは初めてです。この先、時代が下ると《試験販売》で1枚だけの銘柄も増えます。

(《オリンピアス》も1種類だけですが同じ名前の〈両切り〉と併せて発売されています)

 

 

 

 

次回は《泉》発売から2ヶ月後に新発売された《ハイライト》の上位互換《ハイライトデラックス》をご紹介します。2級品の《ハイライト》に対して1級品の製品として13番目に登場しています。