アメリカの統治下にあった琉球では、1952年7月17日に≪印紙歳入金納付法≫が施行されます。続く9月8日には≪印紙税法≫が制定されて、琉球全土で印紙制度が統一されました。

 

戦後から1948年7月までは郵便制度が、そして1952年7月までは印紙制度が、【宮古】【八重山】【奄美】などの各地区で独自に運営されていました。

 

その内の収入印紙を見てみると、制度が統一される前に収入印紙制度が残っているのは【宮古】【八重山】の2地区だけでした。

 

八重山地区では【印紙税納付印】や【印紙税納付済証】が用意され、宮古地区では戦前の昭和切手に【収入印紙】の文字が押印されて使用されました。これらは【暫定収入印紙】と呼ばれています。

 

宮古地区で利用された、昭和切手に押印された収入印紙が一枚だけありますのでご紹介します。

ネットの普及していない40年以上前の事、地方の私には見かける機会はありませんでしたが、琉球煙草の研究で大変お世話になった方に貰いました。

 

3銭、5銭、20銭、25銭、30銭、40銭、50銭の7種類が見られるようです。

 

 

 

           1948年11月1日   宮古地区  5銭収入印紙

 

       

                               押印された文字

 

 

 

 

 

 

                    正刷収入印紙 

 

印紙制度が琉球全土で確立された、1952年7月17日に発行された収入印紙を【正刷収入印紙】と呼びます。B円の時代で、円単位で印刷されました。8種類が発行されています。使用期間はB円が廃止されて、ドルが通貨となる前日の、1958年9月15日までです。

 

 

 

 

                  壱円収入印紙 使用例

実際の使用例は、全て40年以上前に琉球煙草の研究で大変お世話になった方に貰ったものです。

 

                  1956年3月5日

 

 

 

 

                  1954年11月4日

 

昭和と印刷されていて、二本線で消されています。領収証自体は戦前に印刷されているのでしょう。

 

 

 

 

 

 

           1952年7月17日~1958年9月15日

 

      

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

    高額収入印紙の【五百円】【千円】の二種類は、およそ2年後に発行されました。

 

           1954年4月16日~1958年9月15日

 

        

 

以前、B円紙幣をご紹介した時に千円は当時としては大変高額で、千円券を残しておいた島民は少ないと書きましたが、こちらの収入印紙も同様です。他の額面に比べて未使用の現存数はかなり少ないと思います。大勢の収集家を持ち、コレクションの対象となる切手とも違いますし…。

 

 

 

B円は、琉球の戦後復興に必要な物資を本土から安く円滑に輸入するため、アメリカによって本土の【円】より3倍の価値を持たされていました。【千B円】は、本土の三千円に当たります。現在の貨幣価値に換算すると、3万円~5万円程度ではないかと思います。

 

高額なのでほとんど残されていないと思います。個人がコレクションとして保管しておくことはほぼ皆無と言えそうです。大きな会社などの事務所の引き出しなどに、忘れ去られて残っていた程度ではないでしょうか。40年以上前の事ですが、沖縄の切手商を探し回って漸く全8種を揃える事が出来ました。

 

 

 

 

 

 

 

                    ドル交換

 

             1958年9月16日~1959年1月2日

 

1958年9月16日より、B円が使用禁止となり通貨がドルに変更されます。この日から同じデザインで、額面が縦書きになった新しいドル表示の収入印紙が発行されました。B円と同じく、8種類が発行されています。発行期間がわずか4か月と短い上に裏糊が省略されていて、これは暫定印紙と言う事でしょう。

 

       壱仙、参銭、五仙、拾仙、五拾仙、壱弗、五弗、拾弗と表示されました。

    1959年1月3日よりデザインが変更されますので、僅か4か月の発行期間です。

 

デザインが同じなら色も同じ、数字の表記も同じです。これも40年以上前の貰い物で、私はこの一種類しか所持していません。当時もっと集めたいと思いましたが、沖縄の切手商でも見かけませんでした。

 

 

因みに、【仙】は【¢】を日本読みした当て字です。復帰当時は中学生でしたが、沖縄出身の学生時代の友人も【せん】と呼んでいました。「復帰前はコーラが10センだった」と発音していました。もちろん10セントの事です。セントの簡略語で、沖縄では「10セン」とか「50セン」とか、通称になっていたのかもしれません。

 

二人で話している時の事で、アメリカの小さな10¢硬貨(1ダイム)1枚で買えた壜コーラが、復帰後には30円になり10円硬貨が3枚必要になったので値上がりしたと感じたのだそうです。

 

次回は、私の手元には僅かしかありませんが新しいデザインの収入印紙をご紹介します。