「詩人が来てないな」「俺、あいつに語りたい話あったのに」――そんな酒場の声が聞こえてくる。スーツを着こなし、風に髪をなびかせる男、それがこの作品に登場する私のオリジナル詩人・バイロン。
彼の姿はなくとも、その存在は場を満たしている。誰かの心に残り、誰かの人生に踏み込み、そして誰かの物語を聞くために生まれてきた存在。彼を待つ者、忘れられない者、そして「手紙でも書こうかな」と呟く者たち。そのすべてが、詩人の不在を詩にしている。
この絵は「語られなかった物語」へのオマージュでもある。来なかった人、言えなかった言葉、書けなかった手紙。それらは、実は最も美しい詩なのかもしれない