朝９時。
わたしは立ち上がり、
外に出ました。

たとえそれが、
大嫌いな動物病院でも。
命を落とすような
旅になったとしても...。
わたしはこの家族から
離れられないのです。

「おはよう、アリス」

「おはよう、パパ」

ましてや、
ママの外来ですもの。

「フー子、運転たのんだよ」

「わかってる」

こうして、月に一度の
ママの外来が始まりました。

血液検査も、
レントゲン検査も、
順調だそうです。

久し振りに、
ママが入院していた頃の
担当の先生に出会い、
検査結果を見せたら、
飛び上がって
驚いていたみたいです...

そりゃそうです。
わたしがママのがんを
食べてるからね...。

ママはわたしに、
病院の綿菓子を
持って来てくれました。

初めて「熊本城」にも
連れて行ってもらいました。

うれしかった。

忘れないよ。

熊本城。

生きていく上で、
何回かは信じられないような
ことが起こります。

この次に、
アリスとママに訪れる
奇跡は何だろうかと、
僕は今、思いを巡らしています。

「ママ、見て！」

「遠くで海が輝いている」

初めての熊本城