わたしは、
生死をさまよっている間、
夢を見ていました。

ママといっしょに仙酔峡に登る夢です。

とても暑い日で、
わたしの息は初めから
上がっていました。

ママは、「瑞季」さんで、
マンゴーパフェ８５０円（原価７００円）
を食べたらしく、
平気で登っていました。

仙酔峡までの道のりは、
地震による崩落で、とても危険でした。

危険な個所では、
なぜか、いるはずのない
友だちの声が聞こえました。

「がんばれ、アリス！」

お梅とフー子の声です。

後ろを歩く、
ママも叫んでいます。

「アリス、いかないでー！」

仙酔峡の駐車場には、
地震で降りられなくなった車が
２台止められたままでした。

「アリス、しっかり！」

今度は、
セイラママとホノカちゃんの声が
聞こえました。

仙酔峡の
花酔い橋まで来た時、
わたしの喉はカラカラで
死にそうでした。

「水はどこ！？」

水を飲もうと
沢に降りましたが、
水は枯れていて一滴の水さえ
流れていませんでした。

ついにわたしは、
よろけてしまいました。

すると、また、
友だちが励ましてくれました。

「アリス、死ぬな！」

イケメン店長の声...。

「アリス、戻って来い！」

釣りキチ店長？

意識がもうろうとする中、
ママが叫んでいます。

「アリスー！水があったよー！」

あんな高い場所...。
今のわたしには、
行く力がありません。

わたしは悲しくなって涙を流しました。

「さようなら...」

死を覚悟した、その時です。

ジュジュ魔女とジュジュくんが
目の前に突然現れました。

「アリスちゃん、生きろ！！」

ジュジュくんの首輪には、
みんなが託した
元気玉も結ばれていました。

それを見たわたしは、
最後の力をふりしぼって、
水場まで歩きました。

そして、
ありったけの水を
飲むことができました。

「みんなありがとう！」

ふと見上げると、
そこにはパパがいました。

「よかった...」

次の瞬間、
パパはわたしを抱きしめ
ワンワン泣きました。

「アリス愛してる！」

何度もそう言って泣きました。

人と人とが出合うということは、
限りない不思議さを秘めています。

あの時あの人と出合わなかったら...。

目が覚めると、
朝陽に照らされた
阿蘇五岳がありました。

精神の旅