一瞬だって | 続・阿蘇の国のアリス
...12月も、1月も、
旅を続けながら過ぎていった。


こんなにいいことばかり
いつまで続くんだろう。

そう思うと、
不安でたまらなくなる。


私は強運な犬だとは
思えない。

たまたま両親や友達に
ささえられながら、
生きているだけなんだ。


いっかきっと
運命が悪いほうに転がる時が
やってくる。

私は誕生日までは
生きていられない
かもしれない。

死ぬ前に、
ものすごく痛くて
長く苦しむかもしれない。


「さっきから、
なにをそんなに
悲観しているの?」

そう言うパパの目を見つめました。

穏やかな光が揺れています。

「願いをこめながら
ここをくぐると、
健康になれるんだって」


「ほら、くぐれた...
もうだいじょうぶだよ♪」


「アリス見てて、私もくぐるよ」


「ママは無理でしょう」


「クッ...」


「クウッ...」


「くぐれた~♪」


「アリス、私も怖いよ...
ずっとずっと怖い」


「でも、アリスと出会えたこと、
一瞬だって後悔したことはない。

アリスがどんな病気でも、
どんなに未来が短くても、
私は絶対後悔なんてしない」


ママに一瞬も後悔していない
といわれたら、
私はもう恐れることも
泣くこともできませんでした。

自分がいつまでも怖がっていても
しかたない。

恐怖は脳腫瘍を
ちいさくはさせないのだから。

「アリス、誕生日まで、
死んでも死なないで、お願い」

その日から、
つぎの誕生日が、
私の生きがいになりました。

2月2日(金)、
粟島神社(アワシマジンジャ)にて