犬権 | 続・阿蘇の国のアリス
きょうのママとパパのお昼は...


「らくだ山」さんでした。


「土曜日なのに空いてる...」


「いつかまた、皆ときたいね」


「うん」


パパ
「放し飼いにしていたレイちゃんは
どこにいます?」

「お客様からの苦情で、つなぎました」


パパ
「とても温厚な犬で、
怒ったり噛みついたりする
心配がないレイちゃんが
つながれるなんて...チッ。

放し飼いされてるところが、
田舎らしくていいのに。

ぼくが絶望するのは
国内を旅行する時で、
犬が泊れるホテルなどと書いてある
所に行くと、
彼らが受け入れるのは
小さなペット犬だけで、
大きな犬を見ただけで
ダメダメといわれる。

日本人は生き物に慣れてないんだ」


「そんなこと、言わないの。
これはアリスに...」


「きた、きた」




「ぼくには?」


「バルサ(綾瀬はるか)が歩いた
展望所に行ってみよう」




「何も見えないね...」


あるとき、向こうから
歩いてくる中年の女性が、
ぼくとアリスを見て、
こちらにわかるように
明らさまに不快の念を
表してみせました。


そんなの、
わざわざ見せてくれなくたって、
ぼくにはちゃんとわかっていました。

だってその人はある種の
類人猿にとてもよく似ていたんだから。


すれ違うときは道を譲ろうと
思っていたのに、
しゃくにさわったから、
ぼくたちはかまわず
ずんずん近づいて行きました。

そうしたら彼女は、
大きな手振りで追い払う
仕草をしながら、こう言いました。

「あたしは犬が嫌いだから、
あっちへ行って」。


だからぼくも、
その手振りの真似をしながら
こう言いました。

「ぼくは犬が嫌いな人が嫌いだから、
あっちへ行ってください」


不自然だと思うのは、
それを好きな人の側が我慢をして、
それを嫌いな人の側に
譲らなければならないという
暗黙の構造にこの社会が
なっているということです。

集合住宅で犬を飼っては
ならないという規則など、
社会性が後進国である
ひとつの証ではないか。