パパはカメラマン | 続・阿蘇の国のアリス
「今日はどこに行こうかしら?」




「ごめん...今日は、
あそ望で水を飲んだら、病院」


「そう」


「薬(脳圧降下剤)がなくなったんだ...」


「それに、台風も来てるしね。今のうちに」

今回の台風18号は典型的な
「秋台風」です。

秋雨前線の影響も加わった大雨と、
速いスピードでの接近に注意が必要です。

似たようなコースを進んだ事例としては、
1999年台風18号があります。

沖縄、四国、北陸西部、東海を中心に
大雨となり、熊本県不知火町では
高潮により12名が亡くなりました。


「テッテレ~♪」


「すごいよ、アリスちゃん!歩いてきた」


「アリスちゃん。
立った記念に、写真を撮らせてね♪」

「先生、私の証人になってね。
阿蘇の国のアリスはここに生きていた。
みんなを愛していた」

先生は隠すことなく泣いていました。


「いつもの。
ステロイドの注射一本と、
点滴を一杯ください」

「なんだか、立ち飲み屋さんみたいだね」


「ワッハッハ!」


診察が終わると、
私の頭にあたたかなものが落ちました。

梅雨の終わりの雨のように、
パパは音も立てずに泣いていました。


涙が私の頭のくぼみにたまっていきました。

私の目からも、
あたたかいしずくが落ちていました。

私たちは泣きながら、
ずっと抱きあっていました。


「私の命の火が
燃え尽きる最期のときまで、
パパはカメラマンになるんだよ」


「大好きなこの目に
私の命を焼きつけてね。

絶対に消えないように
心に刻んでね。

私が生きていたんだって。

深くて強くてやさしかったんだって」