ママの外来の日2 | 続・阿蘇の国のアリス
南阿蘇のあらゆるものが
白いベールに包みこまれた
冬の日の朝…


ママは今年2回目の
外来に出発しました。


ママが分子標的薬を
飲み始めて、
まもなく一年が
経とうとしています。

薬物療法だけでは
限界があり、
主治医は当初、
目標(薬の効果)は一年と、
私たちに伝えていました。


それだけに、
ママもパパも
不安でいっぱいで…
にせモンにも
ついて来てもらいました。


南阿蘇は雪だったのに、
街に来ると晴れていました。

「僕がいるから大丈夫!」


病院に入る時は、にせモンが。
病院を出る時は、パパが、
ママの手を
強く握っていました。


「ママお帰り…」


病院を出た三人は、
ホテルのビッフェにいきました。






食事が終わると、
今度は、
「全国健康保険協会」に
高額医療費制度の
申請にいきました。

これがないと、
ママの一ヵ月の薬代は
90万円になります。


申請の後、三人は、
近くの「水前寺成趣園」まで
歩きました。


そこには、
「来年も生きて必ず見るんだ…」


と、ママが心に誓った、
梅の花がポッポッと
咲いていました。


「ママ…梅の花見れたね」


「うん」


その時のママは、
泣いているようでした。


それは、
腫瘍マーカーが増えて、
悲しかったからなのか…


それとも、
梅の花が見られたことへの
喜びだったのか…


私にはわかりません…。

ただ、
帰りの車の中で、
私たちが手を握り合った
ぬくもりだけは、
いつまでも忘れないでしょう。


南阿蘇に帰ると、
雪はまだ降り続いていました。


白いベールは、
辛い記憶をうっすらと
覆いながら、
私に「生きろ!」と
ささやいているようでした。