五ヶ瀬川の鮎やな | 続・阿蘇の国のアリス

午後から、

五ヶ瀬川(宮崎県)の

下流にゆきました。


「川水流やな」さんで

食事をするためです。


ここは鮎料理専門店で...



毎年秋になると、

パパがよだれを垂らしながら

ママを誘う場所です。


というのも、

パパの一番の大好物は、

アユの塩焼きで一度に30匹

食べたこともあるほどなのです。



それに、

全国の鮎を食べ比べる

「利き鮎会」に参加することが

パパの夢だそうです。



アユの塩焼き、ミソ焼き、甘露煮、

南蛮、背ごし、うるか、アユ飯と、

ほんとうにアユづくしです。



たくさん食べているうちに、

たくさんハエが集まってきました。


パパは自称ハエ捕りの名人で、

とまっているハエなら

簡単に掴むことができます。


この時も、

ママの頭にとまったハエを、

手掴みしたくなる衝動に

かられたのですが、

ママが小さく

「やめて」と言ったので、

おとなしくしていました。



食堂の広間からは

鮎を捕るための

「鮎やな」が見えました。


食後に、早速いってみました。

「昨年は流されてなかったのにね...」


鮎は、夏の間、

上流から中流で、

川底の石に付着した

藻を食べて成長します。



秋になり、

水温が低下すると、

産卵のために

下流へと下り始めます。


この習性を利用して、

川を堰き止めて鮎を捕るのが

「鮎やな」です。



私とママは流れてくる鮎を

しばらく待ちましたが、

鮎は流れてきませんでした。


「ちぇっ!」

残念そうにしている

ママを見ていたら、

私は居ても立ってもいられず、

川にとびこみました。


「ママ、鮎を捕まえてあげる!」


私は川の中を

引っかきまわしましたが、

五ヶ瀬川の流れは強く
鮎を捕まえるどころか

流されそうになりました。

「ママ、ごめんね。

生きている鮎を

見せてあげられなくて...」


私は謝りました。

するとママは、

慈しみのある微笑で

私に投げかけました。


「アリスちゃんありがとう。

大丈夫だから...

また来年、皆でこれるから」