『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の良いと思う所 | Blu-ray DVD Amazonビデオ 劇場最新作より、映画の感想・レビュー!

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『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が公開され、その後映像ソフトが発売されてからしばらく経過しました。

何かと不評だった作品で、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のシリーズと比較してしまうレビューも見かけられます。

では、本作はどこから見ても駄作だったのか?

時間が経過した今、個人的に本作が好きな私が改めて良かったと思う所を述べてみたいと思います。

『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』(2021年 監督:ヨハネス・ロバーツ 出演:カヤ・スコデラリオ、ロビー・アメル、ハナ・ジョン=カーメン、アヴァン・ジョーギア 他)

 

 

【あらすじ】──製薬企業アンブレラの本拠地であった街・ラクーンシティは企業の撤退により廃れていた。

この街で恐ろしいことが起きているかもしれないことを知ったクレア(カヤ・スコデラリオ)は、ラクーン市警の警察官で兄のクリス(ロビー・アメル)に警告するために街に戻ってくる。

一方ラクーン市警では、アンブレラの創設者・スペンサーの館で起きた猟奇殺人事件の捜査に行った特殊部隊S.T.A.R.S.のブラヴォーチームとの連絡が途絶えていた。

クリスらS.T.A.R.Sアルファチーム、クレア、新人警官のレオン(アヴァン・ジョーギア)はアンブレラらが引き起こした恐るべき惨劇を目の当たりにする。──


☆原作ゲーム初期にあったホラーへの回帰のためにB級感は必要だった

ミラ・ジョヴォヴィッチ主演作との大きな違いとして、本作は原作ゲーム初期にあったホラー路線が前面にあります。

作品の良し悪しは別にして、ここは観た人はみんな異論はないだろうと思います。

ミラ・ジョヴォヴィッチ主演作は、派手でスタイリッシュなアクションをスローモーションなどを駆使して魅せる豪華な演出である反面、初期のラクーンシティを舞台にしたゲームの持つ怖さがまるでありません。

純粋にゾンビが襲ってくる恐怖感を再現するにあたって、こういう大作映画で見せるような、ヘタすれば『マトリックス』みたいなアクションやカメラワークはむしろ邪魔です。

その点において、このヨハネス・ロバーツ監督の作品は派手な編集に頼らず、起きている惨状を固定カメラに近い視点でありのままに見せる様が、初期のゲームにあったプレイヤーキャラクターをラジコン操作するあの恐怖感を再現しています。

またミラ・ジョヴォヴィッチ主演作は6作品通して観ればわかりますが、作品を追うごとにストーリーが地球規模の壮大な世界観で展開していき、ますますホラーからかけはなれていきます。

3作目ではすでにマッドマックスの世界です。

私が初めてゲームで遊んだのはバイオハザード2でしたが、あのラクーンシティという小さな街で、まだ事件のことが世間に知られていないという舞台設定での恐怖感こそ、このシリーズの元々あったホラーとしての持ち味だと思います。

その意味でもヨハネス・ロバーツ監督によるこの『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は正に初期の原作にあった、小さな街で繰り広げられる閉塞的な世界の惨劇を見事に再現しています。

これまた批判の的になった、各キャラクターの描写に関しては、確かに気持ちはわかります。

そしてゲームの1と2を1つのストーリーにまとめてしまったことによる内容のムリヤリな変更も否めません。

しかし、実写でやたらキャラクターをオリジナルのまま再現しようとしすぎると、実のところ安っぽいコスプレ祭りになりかねないという欠点もあります。

またストーリーの方はというと、予算と製作期間さえあれば確かにゲームの1と2を分けて映画化できるだろうし、原作からの変更なしで描くなら脚本も一から練り直す必要もないはずなので、その辺をもしオリジナルに忠実にしていたとしても何も驚くことがなかったでしょう。

それよりも先述したような、初期の頃の原作ゲームにあるホラーらしさの正体に光をあて、ロバーツ監督がいかにそのエッセンスの再現にこそ忠実であったかというところに目を向けると、本作の良さが感じられるのではと思います。

キャラクターやストーリーを原作に忠実にするよりもずっと難易度の高いところに力を入れている作品と言えます。

そしてこの徹底したホラー路線のために、何かと不評の原因となったB級っぽさが実は必要だったと私は考えます。


★続編あるなら再登場を望むぞ、レオン!

原作ゲームで遊んだことのある方はバイオハザードの中でどのキャラクターが好きですか?

私はやはりバイオハザード2が初だったのもあってレオン・S・ケネディです。

クリスやジルのようなS.T.A.R.Sのメンバーではなく、新人警官としてラクーン市警に配属されて早々、とんでもない目に合います。

それでもゲームの方のレオンは正義感に溢れ、いきなり強力な武器も使いこなしながら得体の知れない惨状を潜り抜けるヒーローです。

バイオ4では体術で敵を蹴散らす身体能力も見せます。

そういうレオンを知ってる者としては、この映画に登場するアヴァン・ジョーギアが演じるレオンのなんと頼りないことと、落胆するのではないでしょうか?

甘いマスクのハンサムガイであること以外はあまり再現度は高いと言えません。

しかし、だからこそ私はこっちのレオンも応援したくなります。

実際、新人警官であればこっちの方が現実味ありませんか?

総じて本作の登場キャラクターは、ゲームと比べたらみんな人間らしさがあると言えますが、レオンもその1人です。

続編があるのであれば、彼には再登場を願います。

さすがに合衆国エージェントになっているのは想像し難いですが、ショットガンの使い方が分からなくてクレアに譲った警官がラストはロケットランチャーをぶっ放すところまで成長する勢いですから、本作中ではジルを越えるスーパーコップの素質が実のところありそうな気がします。


☆振り返るゾンビとリッカーの再現度の高さ

本作でロバーツ監督は、人間をカッコ良く描くよりもゾンビやクリーチャーをリアルに描くことに力を入れているように思います。

街の住人たちがゾンビになる途中の病的な描写は、ゲームでも各所で日記に綴られている演出はありましたが、視覚的に見せることはあまりありませんでした。

それを敢えて視覚化しているところはリアリティがあります。

警官たちが客として集まるカフェのオーナーが、完全な人間らしさをまだ保っていつつも目から出血するシーンに、これから始まる恐怖を暗示させる様式美を感じさせられます。

また、クレアが兄・クリスの家で目撃する隣人親子の演出は、企業の過失による生物災害に蝕まれながら見捨てられた街の絶望感がよく表れています。

髪が抜け落ちて、おそらく皮膚のかゆみに襲われているのであろう母親の哀れさと不気味さは全くもってホラーです。

完全に人間の意識を失ったゾンビに関しては、ゲームの1作目に登場するあの有名な振り返るゾンビの再現性の高さに、ロバーツ監督の「これを見せたかった」と言わんばかりの意気込みを感じます。

 

 

さらには取り分けゲームの再現で力を入れているであろうリッカーの描写。

あれこそミラ・ジョヴォヴィッチ主演作に登場したものよりも圧倒的に再現性が高いです。

やはり本作はジルやクリス、クレアやレオンといったプレイヤーキャラクターを花形に描くよりも、ゾンビやクリーチャーの方に花を持たせることで、よりホラーの色を強めていることを最初から考えて制作されているのだろうと思います。

人間がやたら強くてヒーローっぽく敵を軽々やっつけてしまうのではなく、普通の人間が恐怖を目の当たりにして、弱いなりにも皆で力を合わせて脱出しようという、あのジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画に近い感覚です。

結果!バイオの名を使って製作する必要のない普通のゾンビ映画になってしまったという意見もあるかもしれませんが、リッカーやゾンビ犬を登場させただけでなくGウイルスを打ち込んだウィリアム・バーキンも登場します。

そこにもしもハンターやタイラントまで登場させるとやりすぎで、その点では本作はあれもこれもと雑多にならないプレーンなゾンビ映画としての恐怖と、その他のクリーチャーを適度な数だけ登場させてゲームの世界観への忠実さを保つこととのバランスが取れているという見方はできます。


★続編ありそうな気になるシーンとラスト

駄作なのですでにもう続編は観たくないという意見もあります。

そもそも続編を想定して製作するのであれば、最初から1と2を分けて製作しても良かったと思えますし、それを1本の作品にしてしまったのは1本だけで完結させるためという見方はできます。

しかし本作は続編がありそうなシーンがあるのも事実です。

まず、クレアとレオンがアンブレラの研究資料が置かれた地下で目にする映写機の映像。

ゲームの1と2を原作にしている本作において、なぜ『バイオハザード コード:ベロニカ』のネタが使用されているのか?

それはやはり、続編につなげる伏線と見ることができそうです。

ゲームのナンバリングタイトルで言えば、『バイオハザード3 LAST ESCAPE』は時系列として1と2の間にあるので映画化する余地がなく、アンブレラと戦うストーリーの続きとしては正式な流れを組むコード:ベロニカが続編として映画化されるとしたら不思議ではありません。

レオンが合衆国エージェントとして活躍する『バイオハザード4』へいきなり跳ぶよりはあり得そうな話しです。

単純に続編が作られるか否かで考えた場合では、やはりあのエンドクレジットで見せたエイダとウェスカーの絡みが続編製作の可能性を感じさせます。

続編作る気がないなら、わざわざあんなシーン必要ないでしょうというのが私の見方です。

しかしロバーツ監督が無理矢理でも小ネタを見せたかっただけという可能性もある上に、後半から南極を舞台にするあのコード:ベロニカを実写映画化するのは容易いことではなさそうなので、実のところはなんとも言えません。

反面、あれだけのボリュームあるゲームを映画化すれば壮大な作品ができそうです。

バーキンの次はアシュフォード兄妹が立ちはだかるという内容であれば、あの映写機の双子を写し出すシーンに意味があると言えます。

そして主役はレオンではなく、クリスとクレアにはなりますが、こちらもちょうど兄妹の視点に絞ってストーリーが展開される意味ではおもしろそうです。

ちなみに私はコード:ベロニカをプレイしたことはありますが、難易度高すぎてクリアできていません。


──さて、いかがでしょうか?

個人的に『バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が好きな私の視点でムリヤリ推してみる文章を書いてみました。

誤解のないように付け加えますと、比較対象のために否定的な発言をしてしまっているミラ・ジョヴォヴィッチ主演のシリーズも私は映画作品としては優れていると思っています。