前回ブログはモスラについて語りましたが、ゴジラやモスラ、その他様々な怪獣を登場させている作品だけが東宝特撮ではありません。
特撮映画では他にもおもしろい作品がたくさんあるわけなんですが、その中でも私は個性的なメカや架空の超兵器などが活躍する作品が好きです。
それらは侵略してきた宇宙人を相手に戦ったり、世界を征服しようとする敵国と戦う内容だったりします。
そんなワクワクするようなメカニックや人物たちのアツい戦いが描かれている作品について、今回は語りたいのですが、やはり私が好きな作品を第一にあげるならこちらです!
『地球防衛軍』(1957年 監督:本多猪四郎 特技監督:円谷英二 出演:佐原健二、白川由美、河内桃子、平田昭彦、志村喬、土屋嘉男 他)
天体物理学者の白石亮一(平田昭彦)は恋人の広子(河内桃子)に冷たい態度をとり、心配する同僚の渥美譲治(佐原健二)にも胸の内を明かさない。
その夜、奇怪な山火事が起こり、亮一は失踪する。
譲治は亮一が残した、謎の惑星「ミステロイド」の研究論文を安達賢治郎博士(志村喬)に届けるが、それは途中で終わっている論文であった。
その後、村では山崩れや怪しげな巨大ロボットの襲撃があり、円盤状の飛行物体が現れる。──
☆まずは地味にカッコいい自衛隊…ではなく防衛隊
数々の特撮映画作品に自衛隊は登場しますが、この本作の自衛隊ならぬ防衛軍の戦闘シーンがなぜか地味にカッコいいです!
『シン・ゴジラ』ではリアリティ重視で、簡単に自衛隊が武器を使用しない設定ですが、そんなルールなどお構い無しの昔の特撮映画!
こちら『地球防衛軍』の防衛隊は、宇宙人ミステリアンが操る巨大ロボット・モゲラに向かってあれやこれやと武器を使いまくります。
機関銃に迫撃砲に火炎放射器と──、
火災が起きれば水を放てと言わんばかりに遠慮なく撃ちまくります!
田舎の緑豊かな田園地帯にこの様は、一瞬だけランボーを思い出します。
空想科学の超兵器うんぬんの前に、まず前半は20世紀型の火器兵器のオンパレードです。
いい意味でのやりすぎ感で、ここまでやってくれる姿勢に勇ましさを感じます。
地球防衛軍の防衛隊なんですね!
服装などからしてその姿が様々な怪獣映画に登場する自衛隊と変わらないものだから、同じに見えてしまいます。
よって端から見るとまるで自衛隊が容赦なく国内でバンバン火器兵器を使いまくっている構図なので余計に凄まじいです。
★奇抜で個性的なメカニック
自衛隊…いやいや!防衛軍が使用する、現実に存在する兵器とあわせて目を引くのは、やはり超兵器を中心とした架空のメカニックたちです。
まずはいきなり取りあげるのですが、本作の目玉とも言える地球防衛軍側の兵器"マーカライトファープ"
マーカライトジャイロと呼ばれるロケットで目的地まで飛んで行き、投下されてからキャタピラで移動していくそのインパクト。
そのマーカライトジャイロがまたド派手なルックスで、決してカッコいいとは言えないのですが、何せ兵器としての威力があります。
よって高度なテクノロジーを持つ宇宙人に対する地球人の下克上の構図を表すことに一役かっています。
このマーカライトファープという兵器の呼び名は英語で表すと"Marker light FAHP"で、"FAHP"のところはFlyingAttackHeatProjectorの頭文字を取った造語とのことです。
『ゴジラvsスペースゴジラ』ではモゲラを"MOGERA"と表記して登場させていますが、あちらもこのマーカライトファープの名前に通じているアイデアなのかもしれません(→記事参照)。
そして防衛軍の航空機型の戦艦である"α号とβ号"
データでは2基のプロペラがあるようで、そのプロペラがどこにあるのかわかりにくいです。
『ゴジラ』(1984年)に登場するスーパーXと同じく垂直離着陸機ということになりますね。
このα号とβ号は見た目は同じように思われますが、搭載されている機能はそれぞれ異なります。
さてミステリアンの方はというと、彼らの兵器やメカニックもユニークでおもしろいです。
まずはそう!"モゲラ"
ミステリアンが操る、ミステリアスで怪しげな巨大ロボットです。
目から光線を放ち、村を攻撃しながら歩くその様は不気味でもあります。
平成VSゴジラシリーズで特技監督を務めた川北紘一氏はやはり本作に強い思い入れがあったのですね!
先述の『ゴジラvsスペースゴジラ』では、Gフォースが操縦する対ゴジラ用戦闘マシンという新たな設定でモゲラを登場させています。
そしてミステリアンドームに関しては強力なビームと、防衛軍の通常攻撃ではびくともしない装甲もさることながら、インテリアのほうが惹きつけられます。
…と言っても今の感覚で見たらちょっとチープかも知れませんが…
そして交差点になった通路を斜め上からのカメラで映した構図は造形美を感じます。
と、招き入れた地球人にご丁寧に言うとおり、見るからに寒そうなシルバーの景観。
☆怪しげな宇宙人ミステリアンの描写
こうしてメカニックの描かれ方についてサラッと語りましたが、もうそんなことよりも何よりも、視覚的にインパクトが強すぎるのが宇宙人ミステリアンの格好です。
初見で私が個人的に思ったのは──
「ちょっと待てよ、これって東宝の作品だよな?…東映の戦隊ヒーローじゃないよな?」
──う~む、あの勢いでグリーンとかピンクも現れないか…
ダボッとしたマントの姿をしばらく見ていれば、さすがに戦隊ヒーローとは全然違うなと思えてきますが、階級ごとに色分けされているという発想は実にわかりやすいです。
その見た目もさることながら、言動がとにかく怪しげで地球人へのアプローチが不気味なミステリアン。
これは宇宙人を取り扱った映画で他にはないであろうキャラクター描写で、そこが当時にして秀逸です。
たいていの映画に登場する宇宙人とかエイリアンと呼ばれている者たちは、地球人に友好的か最初から敵意を露にしているかだったりします(あるいは地球人になりすまして社会に溶け込んでいる)。
対して本作に登場するミステリアンは、地球人に危害を及ぼす姿勢で現れながら、いざ面と向かって話すと実に物腰が柔らかく、それが逆にコワい。
こういう宇宙人の描かれ方は他の作品で言えばX星人が近いですが、あちらは地球人への友好的なコンタクトから本性を現すまでの行程がずっとわかりやすいです。
だいたい山火事起こすわ、巨大ロボットで襲撃するわ、民家がある土地を陥没させるわで、その時点で許せない奴らです。
たったそれだけ?
かと思いきや、地球人の女性との結婚を許可してほしいと言い出し、先に数人の女性たちを拉致するとあって、やっぱりジワリジワリと地球を乗っとる企みが見え隠れしだします。
見た目は強そうには見えないですが、自分たちが住んでいた星を核戦争で滅ぼしてしまうという巨大な過ちを犯してきた者たちです。
核兵器を使うほど好戦的には見えないのですが…
ところでこの色分けされたマント姿のミステリアンのうち、赤い格好の統領を演じているのが土屋嘉男さんなのですが、X星人統制官よりも顔がわかりにくいです。
青白いメイクだけでなく、ヘルメットで顔がほとんど隠れています。
進んでクセのある役を演じることを好んでいらした俳優だけにさすがです!
声だけ聞くと確かにX星人統制官の人だと、なんとなくわかります。
★空想ゆえに想像力が冴える風刺
『ゴジラ』では水爆実験によって誕生した怪獣と、原水爆に並ぶ恐ろしい兵器になりうるオキシジェン・デストロイヤーといった架空の兵器を登場させることにより、空想の中で顕在化される風刺メッセージが表されています。
その『ゴジラ』から3年後に公開されたフルカラーの本作『地球防衛軍』もやはり科学者の活躍や彼らの目線で、核兵器への警鐘を鳴らすメッセージが冴え渡っています。
核戦争によって故郷の星を自ら滅ぼしてしまい、新しい居住場所を開拓するために星から星へ放浪するミステリアン。
そのヘルメットの下には核兵器による後遺症でケロイドになった素顔があります。
さらにはなぜ地球人の女性を欲するのか。
それはやはり生まれてくる子孫が放射能汚染により異常を持っているために、地球人の優良な遺伝子を必要としているためです。
あの地球人に対する物腰の柔らかい姿勢から、戦争さえ起こさなければ善良な宇宙人だったようにも思えます。
地球人よりも先に高度なテクノロジーを得ていた者たちが自らの過ちで居住場所を失くし、またしても武力行使に頼らなければならない。
宇宙人という、ヒトの形をしたもう1つの知的生命体を反面教師に持ってくることで、怪獣以上の説得力を帯びています。
地球に迫った驚異を前に、地球側の軍もまた核兵器の使用を検討に入れたときに、志村喬さんが演じる安達博士がこう言います。
「いかなる理由があるにせよ、原水爆の使用はいけません。それこそミステリアンの二の舞、地球の破滅です」
憎むべき対象を打ち負かして一件落着というだけでは終わらないラストシーン。
『ゴジラ』の山根博士の役と同様、やはり志村喬さんの演技で見せる飾り気のない堅実な見解を持つ科学者の言葉が作品に静かな余韻をもたらしています。
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