佐野洋子のエッセイはストレートな視線と物の言い方が好きでよく読みます。
風呂から上がって寝る前に一編読んだりすると、いい気分転換になります。

それらのエッセイとは異なり、この本は母親との関係を真正面からつづった本です。

「一度も好きでなかった」母親との小さい頃からの記憶と、痴呆になり介護施設にはいった母親に対する思い、そして母親が最期を迎えるときになって初めて母親との関係を消化できた過程がつづられています。

肉親は知らなくてもいい事を知ってしまう集団なのだ。家族だからこそ互いによくも悪くも深いくさびを打ってしまうのだろう。

ややもすれば感情過多になりがちな主題にもかかわらず、著者の視線と筆致は相変わらずまっすぐで、そこが本書を凄みのあるものにしています。