雪舞う成人の日となった翌朝。

 友達との雪遊びを、楽しみに思いながら登校した長男は、がっかりした顔で帰ってきた。


「危ないから、校庭に出ちゃいけないんだって……」


 なんでも雪が完全に消えるまで、校庭は使用禁止(校庭方面への立ち入りも駄目らしく、長男は育てていたミニ人参を心配していた)だとか。

 私が子供の頃は、先生交えて雪合戦だとか、雪だるま作りくらいは普通にしていたのに……。


 この方針、少なくとも近隣小中学校は全て同様らしく、子供が集まる場所なのに、校庭はどこも足跡ひとつない雪が、少しずつ少しずつ解けていっている。


「危ないから駄目って、それで何でもかんでも規制して、本当にそれで子供の為なのかしらね」


 幼稚園のお迎え時。

 思わず呟いた私に、他の小学校へ上の子を通わせているママが笑った。


「そんなの方便よ、うちの学校は『校庭の維持管理の為』って聞いてるもの」


 確かに、台風などで大雨が降ると、しばらくは使用中止になる。

 雪の場合も、あり得ることだろう……とは思ったが、それならそれで何故子供に『危ないから』などと、いかにも子供たちの安全のため、のような御託を並べるのだろう。


 濡れた状態で踏み荒らされて、でこぼこになった校庭は、確かに使い勝手の悪いものかも知れない。

 きちんとした競技をする時には、綺麗に平らに整備された地面の方が、やりやすいには決まっているとも思う。


 けれどその為に、子供たちが自由に雪遊び出来るような、貴重な場所と機会を奪ってしまうことには、何も疑問はないのだろうか。

 近所の公園では遊べるがどこも小さく、しかもすぐ外側をひっきりなしに車が行き来している。


 少し離れたところにある大きな公園は、子供だけで行ってはいけない(少なくともうちの小学校地域からは)と禁止。

 更に、低学年から習い事を幾つもしている子も多く、そもそも下校後に遊べる面子も限られている。


 南関東のこのあたりでは、ここ数年は(遊べる程の)積雪自体が、ほとんどない。

 校庭で思いっきり遊べるのなら、それが一番のように思えるのに……。



 学校がうるさくなった一因には、昨今騒がれているような、一部の親たちの影響も、勿論あるのだろう。

 怪我をしそうな状況を作らず、整備する手間を省けるなら、大人にとってはとても楽だ。



 けれど、子供がのびのびと遊べる環境や、貴重な体験を出来る状況を、こんな諸事情でなくしてしまうことを、無性に寂しく感じてしまう。



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