住んでいるマンションの隣に、数年前一軒家が幾つか建った。

 ごく普通の、いわゆる"建売り住宅"なのだが、横並びに軒を重ねるうちの一つに、とても上手に植物を育てている家がある。

 幼稚園の送迎時、買い物や散歩に出かける時など、ほぼ毎日のようにそのお宅の前を通るのだが、いつ見ても綺麗に咲いている花々に目を奪われる。


 私自身は、結構なものぐさ人間なので、植物も手のかからないものを育てるのがせいぜいで、花の配色や背丈、開花時期を考えてどうこう……というのは、とても真似ができない。

 せめて庭だったら、水遣りの心配は減るので多少違うのだろうが、南向きのベランダは水遣りを欠かすと(植物によっては)夏場は特に致命的になる。

 凝り性ではあるので、気が向きさえすればそれなりにはなるのだろうが、如何せん自分が飽き性なのを知っているので、手をかけてあげないと枯れてしまう植物は苦手なのである。

 見ていることは好きなのだが。


 そういうこともあって、今年はまだ何も植えられていなかったプランターに、先月朝顔が入居してきた。

 夫と散歩に出た子供たちが、手に手に持ち帰ってきたものである。


 買ってきたのか、遊びに行った先でもらってきたのかと思ったら、なんと件のお宅からもらってきたらしい。

 出がけに、子供たちが綺麗に咲く花につかまって、三人で眺めていたら、丁度水遣りに出てきた家の方が「よろしければどうぞ」と分けてくれたそうだ。


 せっかくいただいたものだし枯らせては可哀想……と、その日のうちに新しい土を買いに行き、翌日の日曜日、新しいプランターに植え替えてあげたのだが、二つもらったうちの片方は、根がつかず結局枯れてしまった。

 しかし残る片方は、枯れた方の分もと言わんばかりにすくすくと成長し、三日ほど前、見事に花をつけた。


 日々つるが伸びてゆく姿を見ながら、小学生の頃につけた朝顔の観察日記を思い出した。

 幼いあの頃、育てることは嫌ではなかったが、"毎日かかさず日記をつける"ということが酷く億劫だった。


 今もその面倒くさがりには変わりがないが、面倒くさがりなりに毎朝伸びている蔓を見てわくわくする心や、咲いた花の美しさに目を奪われるところも、昔とは変わりがないらしい。




猫も杓子も