小学校低学年の頃。
普段はノーメイクの母が、時たま学校行事や冠婚葬祭に出る為に、口紅やらアイシャドウやらで装っている姿を見るのが好きだった。
綺麗な色を使って、遊んでいるように見えたからかも知れない。
自分を着飾ることに、興味を覚える子が増える中高生時代。
社会人になれば、幾らでも化粧をする機会があるというのに、少ないお小遣いをつぎ込んでまでしようとは欠片も思わず、その少ないお小遣いの殆どを本代画材代に回していた。
社会人となって二十歳過ぎ。
着るものには多少のこだわりや執着が出てきたものの、メイクには相変わらず興味なし。
スキンケアすら適当に済ませて、それでもさして問題のなかったよき時代。
――数年前。
ふと気付くと、疲れが顔に出ている自分。
人が見てそうは思わなくとも、自分がそう感じてしまうことが難点。
思い立って、いつもは適当に済ませていた化粧に、少し時間を割いてみる。
十年前に数回試して、そのたび「……どこの人?国籍不明ね」となっていたアイラインを丁寧にひいてみた。
……おぉ、普通に見える。
ついでに、化粧品会社のお姉さんにほどこしてもらった時、やたらと縁どられてしまったのを見て以来、いまいちする気になれなかったアイシャドウも塗ってみる。
……すごい、大人に見える。
(いや充分過ぎるほど年齢は大人なのだけれど)
段々楽しくなってきて、チークだのマスカラだの、普段はファンデーション+口紅+アイブロウくらいだった顔に、色々塗ってみると、あんなに疲れていた顔が元気になったように見えた。
そして、今。
幼稚園の送り迎え時、どんなに時間がなくてもささっとメイクをしていく自分がいる。
疲れが溜まっている時でも、多少なり元気に見えるように。
『化ける』にはほど遠い拙い化粧でも、まあ『粧い』程度にはいけてるだろうと思いつつ。
いつの日か、一度くらい『化けて』もみたいと思う今日この頃。
……いつの話になることやら。