誘蛾灯 -扉 何も云わず ただ眸に 深い色を宿して あの時 君は そんなにも何を憂いていたのだろう 振り返れば すぐ傍にいるような気さえ 未だ明確に感じるのに 例え 地の果てまで探したとしても もう君は何処にもいない…… 大切なものに 失うまで気付こうとしなかった その報いが この胸の空漠なのだろうか 思ったところで 何も変わることはなく 時は過ぎゆき そして僕は 再び逆光の中に 不可思議な笑みを浮かべた君の幻を見るのだ *** 第一章-再会 へ***