明治座創業150周年記念 舞台『赤ひげ』


映画やドラマでも映像化されてきた、山本周五郎先生の小説「赤ひげ診療譚」。あの名作が明治座さん150周年記念の舞台に✨


主演となる船越英一郎さんは、なんと還暦を越えてからの舞台初挑戦をなさる。そして新木さんのご出演、石丸さんの演出という事で大変楽しみにしておりまして、幕が上がりました10月28日より明治座さんへ足を運ばせていただいております。


本日11月3日。4度目となる観劇時、何度もじんわり涙が溢れてきて。何故だか帰ってからもそれが続いています。鈍化している自分の心が時間差で反応して、痛みとか歓びとか、熱い想いが溢れてくるみたいな不思議な感覚。

船越さんは「坂本冬美さんが演じる主題歌『人間賛歌』が最大のライバルだ」と仰っていましたけれど、やっと少しだけその意味が分かった気がします。


「命と向き合う」

これは医療だけの話しではなく、一人一人の「生きる」を題材にした、観客も含めた誰しもにとっての物語なのだなぁと私は感じました。

2時間半、舞台上に居る全ての人々が日々を生きている。そのどこを切り取って観るのか、感じるのか。人其々違うとは思うのですけれど、明治座さんだからこその「未来」や「生きる糧」を貰って帰れるような...「演劇」だからこその面白さや希望を感じることが出来る作品なのだなぁと。


まだ原作も読めていない俄者ですが感想をぽつりぽつりと。ネタバレご容赦ください。
本当に素晴らしい舞台なので是非お時間あればご覧になってくださると嬉しく、感想の前に公式情報こちらでございます。

 

🎥初日公演・公演後合同取材会(JIJIPRESSさん)
※本編が少し見れてしまうのでご注意ください

📝初日公開・公演後合同取材会(スマートボーイズさん)

🎥開幕前のコメント動画リスト

📝制作発表会(スマートボーイズさん)

📚船越英一郎さんインタビュー(婦人公論さん)

すごく良い記事なので是非ご覧いただきたいです

📚新木宏典×崎山つばさインタビュー(前編・後編)

 

 

📌公式情報とチケットはこちら

東京・明治座 2023年10月28日(土)~11月12日(日)

大阪・新歌舞伎座 12月14日(木)~12月16日(土)

 

客席から見た景色

 

初日公演、上手の最端席で観劇させていただいた私の心には、保本登というキャラクターがどーーーんと入ってきたのです。それはもちろん新木さんを応援しているということもあるのですけれど、この上手だったからこそ、な気がして。お席によって見える部分が変わってくるこの舞台の面白さでもあるなぁと思うのです。

そう、舞台セットが凄くってまずびっくりしました。
廻り舞台は二重盆になっていて、外側は長屋、内側は養生所になっている。内側は登場人物たちが手動で動かしてらっしゃるのだそうです。それがまた日々の「労働」を意味する石丸さんの演出なのだ、とアフタートークで教えていただきました。


そしてその江戸の人々が暮らす日常が、照明によって太陽や月に照らされて、美しく映える。時が経つのを感じるんです。

例えば、とあるシーン。部屋の中には医員見習い。その外には赤ひげ先生が佇んでいる。上手席から見ると部屋に灯る橙色の明かりのもと「語られる見習い医の夢」に胸を熱くしますし、下手席から見ると青白い月の光に照らされて一人佇む「赤ひげ先生の心中」に想いを馳せることができる。もちろん正面席からは全体のお話しの流れが分かるようになっていて…一つの世界に複数の断面が存在して、時間経過がある。


私たちが其々に想いを抱えて生きているように、舞台上のキャラクターも一人一人に過去や今があって、時を刻んで未来を思い描いている。それがこの素晴らしい舞台セットだからこそ飲み込みやすくなっているのだなぁと。

ちょっと話が逸れますが、観劇後に友人たちと語らいあった際、自分は赤ひげ先生の言葉には同意できない、正論ではあるとおもうけれど...と話してくれた聡明な友人が居て、とってもいいなと思ったんです。実は私は逆で、観れば観るほど赤ひげ先生の言葉に涙し、救われている。それがなんかよくて、こんな風に語り合うことが大切なのだなぁと思ったりしました。


見習い医の皆さんも個性豊かで、公演を増すごとにその個性が輝いていっている気がします。

今日の森先生、すごく素敵だったなぁ。農村に生まれた彼が医者を目指す。さぞかし赤ひげ先生に恩義を感じてそして心酔してきたと思うのですけれど、従順な彼が少しずつ自分の夢を持ち成長してゆく。その変化が、序盤からのこつこつと丁寧なお芝居で繋がっていって、猪野さんとっても素敵でした。

津川先生も素敵ですよねぇ。言いにくいことをズバッと言っても憎めない人柄。飄々としていて、なんでも器用にこなして生きてゆくのだろうなぁという未来が、保本先生と出会うことで変わってゆく。その変化が、ほんの一瞬熱くなって保本先生の袖をつかむくらいの熱量から見て取れたりして。

このシーンかは分かりませんが、崎山さんが「トライさせてください」って言うと新木さんはいつも「いいよぉ☺️」ってすごい優しい顔で言ってくださるんですよ〜、って昨日のアフトで仰っていました。そうやって崎山さんが作り出した新しい津川先生なのだろうなぁなんて。あのシーンもとても印象に残っています。

保本先生はピュアで懸命で。

夜明け前に道を照らす恒星のようでした。
はじめは子供っぽくて口が先に出てしまうおぼっちゃま。でもしゅーんと反省しちゃうくらい、心が真っ直ぐで一生懸命なのが伝わってくるから、徐々に成長してゆく姿に自然と心を寄せてしまう。嬉しくなってしまう。

第一幕は特に、皆んなの言葉に登くんがどう感じているのか、怖がっているのか強がっているのか、愛おしく思っているのか...心境の断面を丁寧に伝えてくださっているように思えます。だからこその希望となる瞬間。第一幕のラストが胸アツで...。とても好きなシーンです。

観る度に、あぁ今の新木さんは保本先生として生きているんだなぁって印象が増しています。新木さんのピュアさや深みがうっすら滲んで見えるように感じる時があって、その「新木さんだからこそな豊かなもの」があるから保本先生はより生き生きと輝いて、悩み笑い、懸命に生きて見えて、愛おしく思えるのだなぁなんて。演じてる演じてないとかじゃなくて自然...というか。そんな風に思うのは私の勝手な思い込みですし、事実私は何も新木さんのことを知らないし分かってないのですが。
「何度見ていただいても飽きの来ない演劇を目標としておいている」
そう仰っていたことに、巡り巡って通じてゆくのかなぁなんて勝手に妄想しています。

アフトで武岡さんが仰っていましたが、裏では新木さんにっこにこでいらっしゃるそうで、「平吉さんの臨終後に袖から来る時もにっこにこ歩いて来ますよね(笑)」って言われていました。「哀しいシーンだぞっ」って船越さんが突っ込んでくださってたのですけれど、「良いシーンだなぁって思うと笑顔が出ちゃうんですよねぇ」って新木さん答えてらして、なんだか良いなぁってほっこり。

そうそう。今日二階席から観劇してハッとしたのは、お客様が笑いやすいような、ほぐしてくれるようなお芝居をしてくださっていること。これはこの物語にはとても重要なことで、ともすると重くなってしまう空気を私たち観客が温かくすることが出来るし、そうなるようにしてくださっている。医者は病気を治すだけじゃないという台詞がありますが、役者さんは演じるだけじゃないのだなぁと改めて。
「お客様の反応に新鮮さを失うことなく出来ている」そう仰っていたけれど、そうなるようにしてもらっていたのだなぁとしみじみ。

そして去定先生。
舞台にいる誰もが挫けそうになりながらも生きていて、踏ん張っていて…去定先生もその一人なのだなぁと感じました。トップに立つものは孤独、そう思うのですけれど、守るべき人が居て、その守るべき人たちに救われているのだなぁと。

切磋琢磨する見習い医たちが日々成長し、去定先生へ伝えた熱い言葉。
今日のあのシーンは本当に胸が震えました。
森先生から伝播して、三人の熱波がまぁるい和になって。去定先生へ届く。

保本先生が去定先生に、自らを恥ずかしいと吐露するシーンも、すごくすごく胸に残っています。今日の、自分自身に問いかけるような声色。丁寧に真摯に。変化の第一歩。
全部が繋がっていて、すごく温かくって。それに泣いてしまうのかもしれない。人が紡ぐ人の物語ってすごいなって震えています。

好きポイント羅列しちゃうのですが。
私はお常さんとお雪さんが大好きです。あの明るさと強さに、養生所はさぞかし助けられているだろうなぁと、想像するだけで私まで幸せになってニコニコしてしまう。ご飯と笑顔で養生所にパワーを与える人たち...すごい。尊敬。
長屋の女性たちもみんなパワフルで朗らかですよね。でもきっとそれが生きる術なのだろうなぁなんて。自分は恵まれた環境で甘えているなぁと。

おとよちゃんが大きく手を振るシーンも大好き。
ふふっと笑みをこぼすくらい、長坊は何度も何度も振り返って手を振ったのだろうな。江戸の空は綺麗だろうなぁ、なんて勝手に想像しています。


保本先生と長坊のやりとりも全てが微笑ましくて、同い年なのかな?って思っちゃうくらい(笑) ほっこりして大好きです。身体は小さいけれど早く大人にならなくちゃならなかった長坊。もぅほんとその心情に泣いてしまう。

おかねさんの叫びもすごかったなぁ。どれだけ辛い過去があったのか。あの一言だけで真に迫って、身勝手だ~なんて軽くは言えない重さがある。負の連鎖を断ち切れない環境で育ったのだろうな。でもその暗い人生の中で、あの芯の強いおえいちゃんが生まれる奇跡。子ってすごい。おかねさんを救ってくれる最大のギフトがおえいちゃんなのだ。すごい。

そのおえいちゃんの子供を宝物のように喜ぶ皆を、嬉しそうに慈しむようにひっそりと遠くから眺めている人が居るんですよね。毎日毎日盆を回し、時を刻む竹造さん。うぅ、思い出して泣けてきます。

きっとその昔「生きろ」って去定先生は言ってくれたのではないか。なんて。その頑張って生きた先に、あの景色があるのかなぁなんて。

そう、赤ひげ先生の背中は大きかったです。
長年会社員をしてきた自分としては、こんな風に「徒労」が糧になるのだと、それが無駄ではないと言える環境を作らなくちゃいけないのだなぁと襟を正すばかりでして…。タイパを気にする若い子たちにもその大切さを伝えるには、根気強く自分が見せるしかないし環境を作らなくちゃいけないのだなぁと。言うは易く行うは難し..ですが(笑)

赤ひげ先生が最後に仰った台詞。

これはこの物語の言葉であり、演劇人の皆さまの言葉なのだなぁと勝手に受け止めて有難いなぁと思っています。あのラストシーンは演劇だからこそ、明治座さんだからこそ、と感じました。

ありがとうございます。


日々どうしようもできないこともあって、別れもあって。そんな中でもちょっとの希望を見出して幸せに繋げられるかは自分自身。
頑張らなくちゃなぁと。

あんまりに今日の公演が素敵だったので、つらつらと綴っていたら朝を迎えてしまいました😂
また明日...いや今日の公演を楽しみにしています。

一座の皆様が健やかで幸せでありますように。
祈って応援しております🍀


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📷景色