さあてどうしようかね~

生きる術、俺は知らない。どうやって金を稼いだらいいのか、どう暮らせばいいのか、全く分からない。

うーん。

ふむ。

むむむ。

ん~…。

あっ、



あいつんところ行こう。
少女のところに行けばなんとかなるかもしれん。

そう考えて少女の家へ向かった。
家の場所はあの不思議な夢で覚えている。

あれは本当に不思議な夢だった。
まるで少女のそばにずっといるような、会話しているような夢。
現実のような夢。

あれは一体なんだったんだろうか。

御守りは確かにここにあるのだ。



わからん。考えても無駄だ。
まあ少女が置いていったでいいだろう。
俺はあの子を知っている。

あの日のことは忘れやしないのだからな。
あれから何年たったか。何故今更こんなことを思い出す。

「6年ですね。随分とあなたも頑張りました。誉めてあげますよ。」

医者のフジイが言う。
うるさい。誉めてもらうために頑張ってたわけじゃねーよ。

あれから俺はリハビリ生活を強いられていた。

「まさか回復するとは私は思ってもみませんでしたからね。それぐらいあなたは酷い状況でしたよ。」

なんつう医者だよこいつは。堂々とそんなこと本人に抜かすなよ。
大体コイツはリハビリの時も患者である俺にぬけぬけと買い出しに行かせてやがったからな。

「あなたは無一文だから当然です。それ相応の働きをしてもらわないと。」

患者を労働者と位置付けるやつはこいつだけだろうな。

「まあリハビリの一環ですよ。労働とリハビリが同時にできるなんてすごい合理的じゃないですか?あなたは大して体に障害なんてありませんでしたしね」

フジーの言うところによると俺は精神的な病の方が強かったらしい。
もはや理性がないと言えるほどの状態…。
それからの入院生活はあまり思い出したくない。

「それも今日で終わりですよ。本当にお疲れ様でした。これは勿論私にも言えることですがね。」

フジーは皮肉を笑いながら言う。
余計な一言を言わなければいい医者なんだがな。

「フジーはやめてください。フジイです。」

ああ、分かったよ。
今までありがとうな。本当に世話になった。この恩、絶対忘れないぜ、フジー。
それじゃあそろそろ行くわ。

「お気をつけて。くれぐれも世間に迷惑をかけないようにね。」



何年ぶりか。
外の光を一身に浴びてあたたかさを感じ俺は診療所をあとにした。