がんになった、どうしよう。

私は普段、北海道テレビに務めており、報道記者やドキュメンタリーのディレクターを長く担当しております。実は、自分が病気になる前から乳がん患者の取材を続けており、ピンクリボン活動は私のライフワークです。

46歳で両側乳がんにり患、 その11年前には母が乳がん、さらに私が18歳の時には父をスキルス胃がんで亡くしています。 私はこれまで、遺族、患者を支える家族、当事者、そして取材者として、4つの視点でがんという病気に向き合ってきました。

よく、「がん」という言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になる、と言いますが、あれは本当です。

私自身、家族の病との向き合いをそばで見ていたので、「がんのことは知っているつもり」でした。 でも、いざ自分のこととなると、話は全然違いました。 治療技術は日進月歩です。「知っている」と思っていた知識は、あっという間に過去のものになっていました。

特に、病気になったとき、私たち患者は「体の変化」と「心の変化」に同時に直面します。 診断された瞬間から、私たちはどうしようもなく深く、深く悩みます。 そしてその悩みは、治療の選択や、生活への不安と複雑に絡み合っていくのです。

そんなときに頼りになるのがこのガイドだと思います。

『国立がん研究センターのがんになったら手にとるガイド』です。2025年12月12日に発売。12年ぶりの全面改訂です。

 

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がんになったら手にとるガイド

 

 「おまかせ」から「一緒に考える」へ

 

 

いまの治療は、「先生、全部おまかせします」という時代ではありません。治療の選択肢が飛躍的に増えたからです。その方のがんの性格やタイプ、できた場所。

患者さんのライフスタイルや、大事にしたいこと。年齢や環境による優先順位。これらによって、最適な治療は変わります。 医師は標準治療をもとに提案をしてくれますが、最終的には「シェアード・ディシジョン・メイキング(共有意思決定)」。つまり、医師と患者が情報を共有し、納得して「自分で選ぶ」ことが求められます。

何をチョイスして、どうジャッジするか。 そのために不可欠なのが、「知識」です。

知識がないと、先生の話を聞いても「何を質問すればいいのかわからない」と立ちすくんでしまいます。 迷いや不安を抱えながらも、納得して治療を進めるためには、まず「聞くこと」ができなければなりません。 自分にとって何が一番大事なのかを整理するため、そして先生と対話をするために、「頼れる正しい基礎知識」が必要なのです。

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執筆に関わった先生方 右端が筆者

https://ganjoho.jp/public/qa_links/book/public/tenitorugaido.html

 

本で買っていただきたいところなのですが、なんと、、ダウンロードもできます!

 

不安になると、すぐにスマートフォンで検索する方は多いでしょう。私もそうでした。 でも、ネットにあふれる情報の中から、本当に自分に合っているもの、正しいものを選び取るのは至難の業です。

だからこそ、最初に手に取るものは、ネットではなく、「安心して頼れる、正しい知識がギュッと詰まった一冊」であってほしいと、心から思います。

今回ご紹介する冊子の大きな魅力は、「記録ができる別冊」がついていることです。 メモ欄や質問項目に至るまで、「次の誰かのために」という想いで、非常に丁寧に患者さんの声を反映して作られています。

 

冊子の特徴としては心の問題が前の方に書かれていること。 治療もそうなのですが、まず私たちが抱える不安や心の悩みに寄り添ってくれています。そして、患者さんの生の声が入っていること。リアルな声がたくさん詰まっています。

「みんなも困ってるんだ」「私だけじゃないんだ」と実感できる温かさがあります。

お金の話から逃げないこと。会社だけでなく、自治体の助成や医療費控除など、なかなか聞きづらいデリケートな情報もしっかり教えてくれます。これは、企業の人事担当の方や、両立支援に携わる皆さんにもぜひ読んでいただきたい視点です。

もちろん、最新の分子標的薬やゲノム治療、遺伝子パネル検査といった最先端の情報も、優しく解説されています。

 

 北海道から伝えたいこと

 

「地域での情報格差(情報過疎)」は大きな問題です。 全国には良い相談場所があるのに、その存在が知られていないことが多いのです。 でも、この冊子には「ここにも助けてくれる場所があるよ」という、地域への温かいまなざしがあります。

困った時に「ここに何か書いてあるかな?」と見返したり、先生との対話の準備に使ったり。 この冊子は、きっとあなたの「道しるべ」になるのではないでしょうか。(表紙に灯台の絵が描いてあるのですが患者さんなどの患者市民パネルでの投票で選ばれています)


この本は、「誰ひとり取り残さないがん対策」という大きな目標のもとに、様々な視点から、とても丁寧な言葉の配慮をもって書かれています。

治療の道は長く、全てを一気に理解するのは大変です。 でも、大丈夫です。困ったときに、この一冊を開いてみてください。

 

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筆者