「心に残った本ランキング1位」なんていう帯に引かれて
和菓子のアンと言う本を読んでみました。
さらりと読める少女マンガみたいな感性の本ですね。
主人公は手に職も無ければ、
専門学校に行くほど好きなものも見つからない、
勉強も好きじゃないし、いきなり就職というのもピンとこない
ついでに体形は150センチで57キロと言うぽっちゃり・・・
これは、誰かに似ている、
そう私の暗黒の青春時代とそっくり、
まあ少女漫画の設定そっくりですが・・・・
だから小さなシンデレラストリーに
ほのぼのと共感して人気が出たのかな。
専門学校に行っても都会が怖くて家事手伝いの名の元
病気の母の代わり、
家のスーパーの手伝いでごまかしちゃったあの頃、
体形も似たような比率のデブ仲間。
ただね、私が自意識過剰で人間怖いで
自分の世界に入っていたのと比べて
主人公は、デブコンプレックスはあるけど、
きちんと常識をわきまえ
人の心が読めているから社会生活上は
良い子として慕われています。うらやましい・・・・
そんな彼女がアルバイト先として選んだのが和菓子屋さん、
上生菓子と餅菓子が両方売られるタイプの
デパ地下の和菓子屋さんです。
これね、エピソートの関係で上生菓子と
餅菓子の両方を売られないといけないのですが、
和菓子を本当に扱っているのなら、
上生菓子と餅菓子は棲み分けが
出来ていないといけないはずなのです。
上生菓子は茶懐石から発達、分化したお菓子です。
懐石料理の最後にお濃茶を美味しくいただくために
上生菓子屋は時間の頃合いを見繕って仕上げるのです。
懐石はテーマを決めて、その季節に有った掛け軸や、
花、お道具をそろえ風流を楽しむものです。
お菓子もそのテーマに沿って作られます。
つまりとっても手間がかかる芸術品なんです。
それに比べて餅菓子は日々の楽しみとして、味わうもので
日常の菓子だからそうそう高い値段には付けられない。
細部をあまり凝らないことで沢山安く作るお菓子です。
そんな芸術品と、民芸を一緒に作って一緒に売るなんて
それは難しい、だから京都では棲み分けが出来ているんですよね。
それを一緒に作って、大福でも細心の注意でってのは
相容れない要素なはずなんですよね。
まあ、そんな小姑根性を抜きにしても、
この本は面白い、
要所要所に季節感をふんだんに取り入れた和菓子の由来が
色々ちりばめられ、それがちっちゃなミステリーの謎解き
に繋がっていています。
私がなんで上生菓子の由来をちと知っているかと言えば
実は、主人公と同じ年代のころお茶に通っていたから。
お茶は姉が行っていて、
それに感化させて一緒に行き始めたんですが
ものすごく不器用で、呑み込みも悪いので
一人、万年薄茶の稽古を延々続けていまして、
先生は70歳を超えたおばあ様先生でしたが
こんな出来の悪いお弟子さん一人もいないのに
毎回同じように付き合ってくださって、いやな顔もせず
急がせもせず、ありがたかったです。
そこで、和菓子の由来なども聞くことが出来たから
知っている話も有ったんです。
ただね、ここの先生のお宅が本来は士族の娘として
結構な暮らしをしていたおじょうさんだったのに
旦那さんに先立たれ、今度は息子さんに先立たれ
70歳過ぎの先生のお茶の稽古が生計を支えていたから
お菓子が最初は上生菓子が出ていたのが当たり前だったのが
徐々に少なくなって、
虎屋の竿もの羊羹ばっかりになっちゃったんで
お菓子の物語が聞けなくなっちゃって、
それはちょっと残念な事だったな~