駅から会社までの徒歩10分ほどの道。
これまでに何回歩いたことでしょう?
月20日としても、一年で20日×2往復×12ヶ月=480回。
5年で2400回。
10年で4800回。

もうすっかり見飽きた風景、退屈な道のり。

帰ってからの家事の段取りだったり、今日の仕事のことだったり、何かをぼんやり考えながら歩くのが常になっています。

間違いなく「歩くこと」そのものには、ほとんど集中していない…


集中してみました。

まずは、自分を取り巻く風景に。
ビルや、道や、木々や、空や…

すると、信じられないくらい、新たな発見だらけで、驚きました。

「え、毎日見てるこのビル、こんな奇抜な色やったんや…」
「こんなとこにこんなお店あったんや…」

笑っちゃうくらい、なんにも見れてなかった私。

「高速の高架の曲線、なんかカッコいいなぁ」
「この路地、今度通ってみようかな」
「この空の色、淡いオレンジからブルーのグラデーション、綺麗だな…一番好きな色だな」

なんぼでも新たな発見が湧いてきます。

次に、「動き」もじっくり味わってみる。
自分が歩くことで、景色の層が動いてどんどん、形を変えていく面白さ。
子供の頃は、飽きずにじっと見ていたっけ…

エレベーターを、いつものようにせかせかと歩いて登らず、ゆったりと身を任せてみる。
窓の外の景色がじんわりゆっくり変わっていく感じ、ちゃんと感じたのは初めてかもしれない。

都会の真ん中で緑は少ないけれど、街路樹や公園の木々、花壇の草花が風に揺れる様子を眺めてみる。
このさらさらと揺れる様には、間違いなく癒される。

音に耳をすませてみる。
踏切の「カンカン」と響く音。鳥の声。風の音。

空気の冷たさや匂いを感じてみる。
今日は雪もちらつくほどの寒さ、耳がチンチンに冷たくなっているな…


そして、「歩くこと」そのものにも意識を向けてみる。
背筋を伸ばしてお腹をひっこめて、きれいに歩くことを意識してみる。

一応「KIMIKOのポスチュアウォーキング」のレッスンを受けたこともある私…
最近はすっかり、猫背でだらしなく歩いていたなぁ、と反省。
全身に意識を配って歩くと、結構疲れるんです、これが。

さらに、自分の呼吸にも意識を向けてみる。
吸って、吐く。吸って、吐く。
冷たい空気が肺を満たしていく感じを、味わってみる。



何千回も歩いたこの道も、意識のありようを変えるだけでこんなに豊かになった。
たった10分の道のり、いつもは「ただ歩くだけなんてもったいない」なんて思っていたけれど…

私はこの10分をしっかり味わって生きた。

この実感を積み重ねていくことが、きっと、「今を生きる」ということなんだろうな。