フィラデルフィア行きの早朝高速バスは、34th Street & 8th Aveの乗り場から出る。
バス停までアパートメントから近所、歩いて行ける。
アパートメントから着替えやIDと、タンス貯金を持って来たからバスでフィラデルフィアまで行ける。
あまり使いたくなかったけど、カードもある。
蒸し暑い夜のマンハッタンを歩きながら、
なんだか気持ちがもやもやしてた。
なんでフィラデルフィアなの?って思うけど
先日書いた、住み込みでモーテルかどっかで働こうか、
とか突飛な考えは置いておいて、
フィラデルフィアには縫製工場や刺繍工場が多いの。
前にEnjinさんに教えて貰った。
それと、子供の時にTVで観た映画「ウエストサイドサイドストーリー」。
ヒロインの女の子の兄さんの恋人の女性が、赤いドレスを創ってと、ヒロインにせがまれたけど、
「絶対白が似合う」って言って、凄いかっちょいい白いドレスを仕立てたの。
このシーン、と
「風と共に去りぬ」のグリーンのベルベットのカーテンで仕立てたドレスのシーン。
なんだか、ずっとずっと記憶にある。
子供の時に一回ずつしか観てないけど、
もちろん、今も。
※ちなみにこれはオレが、「風と共に去りぬ」のシーンをイメージして創った作品。↓
だから、フィラデルフィアに行けば
オレもあんなドレス創れるかな…って。
だから、あの時頂いた「和英洋裁用語辞典」も持って来たの。
オレには取り敢えず、縫えるって技術もあるし…
その夜は手持ちのタンス貯金もあまり使いたくなかったので、
バスが出る早朝まで、取り敢えずぶらぶらしようと思った。
気が付けばイーストビレッジ、「AKIUE-GO」の前までゆっくり、ゆっくり歩いてたよ。
「AKIUE-GO」。
世界に羽ばたくファッションデザイナーオーディションで、グランプリを獲り、
NYにオープンしたオレの店。
日本で何千人の中から選ばれて、NYに来た。
このNYでもライバル達と切磋琢磨しながら戦い、
それに勝って、「AKIUE-GO」がNYに出来た。
オープンしてからも、いろんな方々に助けられて今ここに「AKIUE-GO」がある。
そしてTVを観て、本当にいろんな方々が応援してくれた。
番組スタッフさん達とも、もうすっかり長い付き合いだ。
寂しくて、苦しくて、しょっちゅう怒られて…
でも、いつもオレを助けてくれて、そして守ってくれた。
さっき見たT田さんの疲れた姿見て、なんか凄い罪悪感感じたよ。
T田さんとはまだ、NYでのお付き合いは短いけど、短いのに
こんなに迷惑掛けちゃって。
他のスタッフさん達も心配してるだろうな。
HannaもMitsuも、AliceもLinaも
そしてNYで知り合った人達みんなに迷惑掛けながら、
結局オレは何をしたいの???
オレが居なくなってからも、AKIUE-GO
ちゃんとやってくれてる…
深夜の「AKIUE-GO」の前に一人立って見ていろんな事を思ったよ。
………………
「AKIUE-GO」があるイーストビレッジからSOHOの方面にBowery地区と言うところがある。
すぐ近くのトライベッカ地区にはあのナオミ・キャンベルが住んでたりするけど、
このBoweryは路上で生活する方々が集まる地域。
取り敢えず、一人で朝まで過ごすのは不安なので、
Boweryの人達の中に紛れて朝を待つ事にした。
割ときちんとした格好の方々が多いの。
オレが路上で、座って居ると
おじさんか、お兄さんかわからない人が話し掛けてくれた。
(欧米の方々は本当に年齢が見た目ではわからないー☆)
「Where are you from?」
「From Osaka, Japan」
「What's your purpose in visiting this NY? 」
答えられなかった…
いつもなら、片言とボディランゲージでハッキリと
I am a Fashion Designerとか、
オーディションでグランプリ獲ってAve.A&9thでAKIUE-GOやってるとか、
聞かれてない事まで勝手にペラペラ話してたのに。
オレは何の為にNYに来たんだろう!
なんか、この家出期間に堪えてた涙が一気に流れて来て。
とんとんとおじさんが肩を叩いて、ぬるい缶ビールをくれた…
いろんな考えが、想いが、ぐるぐるして、
その夜は一睡も出来なかった。
普段ならどこでも寝れるのに。
………………
「What's your purpose in visiting this NY? 」
オレはファッションデザイナー。
世界に羽ばたくデザイナーになる為にNYに来たんだ。
そう答えて良いの?
まだ、その資格はあるんだろうか。