その日は、僕が勤務する音楽学校のオープンキャンパスの日だった。
昼休憩を終え、午後の作業も落ち着き、明日からのスケジュールを確認しようとスマホをウエストポーチから出してみたところ、LINEにメッセージ通知。
X-RAY featuring KENTAROのグループLINEに通知があり、開いてみると、清水くんから、白田の訃報が届いていた。
僕はあまりにも信じられず、「え、本当に?」と返した。
それから他のメンバーも含めてやり取りし、事実であることを理解した。
その後の連絡を待つ形にしてスマホを閉じて、業務を再開した。
僕はどうしようもなくて、誰もいない講師室の給湯室に行き、一人嗚咽した。
何で?
何でなん?
あり得へん!
絶対にあり得へんって!
そう頭の中で繰り返し。
僕は、デビュー仕立て〜グラスラの頃の白田とはあまり親しい中ではなく、親しくなってよく話すようになったのは、その後くらいからだった。
よく会話したのは、メガトンクラブなどの、セッション形式のライブで何度も会うようになってからだ。
そんな時白田は、僕を見つけると、
「アキラくんっ♪」
とあの元気な声で僕の名前を呼んでくれて、あの人懐っこい笑顔で近付いて来てくれて。
そして、いつもいろんな話をした。
音楽のこと。
タバコやお酒のこと。
お互い知っている音楽仲間のこと。
いつもそうだった。
いつも白田が、僕を見付けて、
「アキラくんっ♪」
とあの元気な声で僕の名前を呼んでくれた。
白田がハード・ロックナイトに出てくれた時。
相変わらず当日リハーサルに遅刻してきて、散々僕らにイジられて、本番が終わった楽屋。
白田に近しい人が僕に、「どんどん本気で叱ってやって下さい!いつもすみません!」と言った時、僕は、
「白田はこのままで良いんです♪」と言って笑った。
本当にそう思ったから。
そして、ある日Facebookを見ると、白田がかなり自虐的な投稿をしているのを目にした。
確か、自分の遅刻癖のせいで、バンドに大変な迷惑をかけた、という内容だったと思う。
かなりしょげていた風に読み取れたので、僕は、
「愛すべき悪ガキの白田!気にすんな!愛してるぜ〜\(^o^)/」
とコメントした。
すると白田から、
「アキラくんっ!ありがとう!」
と返信があった。
そしてこれが、僕と白田の、最期のやり取りになった。
確かに白田は、遅刻ばかりして、いろんな人にたくさん迷惑をかけただろう。
事前リハーサルに来なくて、本番がぶっつけになったこともあった。
ちゃんとコピーする曲をしてなくて、ちゃんと演奏出来なかったことも。
時間とお金を使って観に来てくれるお客さんに失礼だろ、と思った。
でも、それでも、僕を含め、白田のことを嫌いな人は、一人もいなかったと断言出来る。
白田は、誰にでも優しくて、周りの人に対して純粋で。
それだけ、白田は、みんなに可愛がられていた、愛されていた。
こんな人間は、他にいない。
とにかく、白田は可愛いかった。
後輩として。
音楽仲間として。
あの頃を一生懸命だった、友人として。
今日までの、白田のことを愛していた人達の、訃報に対するFacebookへの投稿を、全て読んだ。
ひきつけを起こしそうになるくらい泣いた。
白田、お前は幸せもんやで。
こんなにみんなが愛してくれていて。
こんなにたくさんの人が悲しんでくれていて。
何とかならんかったんかな。
最期は苦しまへんかったか?
今は、安らかにしてるか?
僕も、お前より後になってしもたけど、そっちへ行くからな。
そしたらな、また僕を見付けてくれな。
そしてまた、
「アキラくんっ♪」
って、あの元気な声で、あの人懐っこい笑顔で、僕の名前を呼んでくれな。
そっちでビール飲みながら、いろんな話をしような。
いろんな曲、セッションしよう。
それまで、ちょっと待っててな。