これまた、名前は知っていたものの長らく未読であった作家、原田宗典くんを読んでみました。

まぁ、未読とはいっても、原田くんの場合は、本屋でエッセイ集を立ち読みしたことはあり、面白そうだと目を付けてはいたのですが。

十九、二十(はたち) (新潮文庫)/原田 宗典
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で、読んだのが、『十九、二十』。

これまた、川西蘭くんの 『春一番が吹くまで』  や村山由佳くんの 『天使の卵』  の主人公と同年代の、まもなく二十歳になるという男の子を主人公とした青春小説です。



主人公の大学生山崎は、「貧乏には飽きた」という理由で恋人に振られる。

そして見つけたバイトは、エロ本の配達であった。


お、このあたり伊達一行くんの『沙耶のいる透視図』や野坂昭如くんの『エロ事師たち』を思わせます。

ビデオやDVDではなく、「本」というところが時代を感じさせます。


田舎から借金取りに追われてやって来た父親に金を無心され、さらにカメラを無断で売り払われる。

さらに、エロ本会社の女の子から性病をもらっていたことが判明し落ち込む。


まさに踏んだり蹴ったりの山崎くん。

これぞ正しい青春、という感じです。


ですが、ここて゜ひとつ疑問が。


性病は本当にエロ本会社の女の子にもらったものなのでしょうか?

別れたはずの恋人とエロ本会社の女の子が鉢合わせする場面がありましたが、あの時、元恋人の女の子は何をしに来たのでしょうか?

もしかしたら、病気はその元恋人からではないのか?

彼女も発病し、山崎から感染されたと思い込み、そのことでやって来たのでは……?


作者はおそらくそのような読み方をされるとは想定せずに書いたのでしょうが、そちらの可能性を追求して書くとまた別の小説になったのに、と少し悔やまれます。



評価 ☆☆☆



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