出会ったのは、海だった。
夏、地元から30分くらいの海岸で、はじめてトオルさんに会った。

その日の午後は、地元で友達のアヤと遊んでた。私はフリーターで土日関係なかったけど、
その日は土曜で社会人のもアヤも休みで、朝起きてメールして、ねえ海行かないって、すぐに会ってぶらぶらした。
アヤには週2くらいで会ってて、わたしがリュウとうまくいってないのをいつもぶちまけさせてもらってた。

リュウは高校時代の友達で、卒業してからなんとなく遊ぶようになり、
告白したけど保留にされたりとかで、でも結局やっちゃって変な関係になって、
まあとにかくぐっちゃぐちゃになっていた。
その頃のわたしをひと言で言えば、ぐっちゃぐちゃだった。

だからそんな、夕方別の友達から電話で「今からのイベント来ない」って言われたとき、ふだんはクラブ行かないアヤを誘って半分無理矢理な感じで行っちゃったんだと思う。
毎日つらかったし、リュウのこと短時間でも忘れたかった。

それは、友達のDJが参加した、その海のいえのオープニングイベントだった。

海のいえは駅からめちゃくちゃ遠くて、後悔しながら、アヤに申し訳なく思いながら、6月の海岸を砂に足取られながらふらふら歩いてった。
足の感触をまだ覚えてる。

ふつーのクラブイベントとちがって、夕方からやって24時終わりだったから、6時でもまあ人いるだろうと思って行ったらガラガラで。
ちょっと来たこと後悔して、でも友達が喜んだからアヤとか帰りたかったかもしれないけど、そのへんでご飯食べて時間つぶして、また戻ってきたらやっぱガラガラで。
文句言わずにアヤはにこにこしてた。わたしは焦ってた。正直ごめんと思った。

音楽かかってんのに誰も踊らないとゆう、何だろうこのイベントと思いながらしょうがないから飲みまくってた。だって踊らない飲まないじゃなんも忘れられない。
8時くらいになってようやく人が集まってきたらしい頃には、わたしは相当飲んでた。

やっとダンサーが出てきてイベントらしくなって、ミラーボールも回ってて、私はダンサーのおへその辺りをずっと見てて、頭にはおへそがきれいですてき、みたいなことしかなかった。
だから隣に人が立ってたこととか、話し出したこととか、すごいびっくりした。

『ねえこれ見て。すごくない』
「え?」何この人
『ほら煙出るんだよ(笑)』
「え?」
その人は手元になんかリモコン持ってて、押したら天井から煙が出た。
『今年つけたんだ~お金かかっちゃったけど(笑)』
いくらかけてんすか、スモークに(笑)その辺にいた人もなんかまざった。
『はじめまして、店長のトオルです。』
「あ、店長さんだったんですか!?(びっくりした若くない?)...かなり飲んでますね」
『うーーーんわかんないっ!(笑)』
うわ、笑顔めっちゃかわいい。いやちゃんと見ると、ナニコレ

トオルさんは、すっごいかっこよかった。顔が。
今まで見た誰よりも、好きな顔だった。
完璧だった。顔が。
そのせいでしばらく口開けて見とれてた気がする。

わたしはこのときの横顔を、忘れられないでいる。