まあ、いつものことなんですが、メディアやネットの放談ほどあてにならないものはありません。年の瀬を迎え、ようやく落ち着いたところなので、若干、コメントしておこうと思います。
HKT48のイベントに通う30歳のおっさんが、メンバーたちの足元ともいえるPayPayドームの地下駐車場付近で男性スタッフ1人をナイフで刺し、逃亡中にたまたま出会った女性もナイフで刺すという事件が発生しました。おっさんのXアカウントも見ましたが、女性のふりをした〝ネカマ〟を演じていて、ファンというより、最初からファンを装ってHKT48のアイドルに〝接触〟することが目的だったのではないかと、個人的には推察しています。
メンバーから認知してもらい、お互いの(客の側が勝手に感じる精神的)距離を埋めたいのであれば、SNSを匿名にし、性別まで偽ってしまうのでは目的とは真逆です。このおっさんは、ファンとして応援しているふりをして、実は劇場に通い詰めることによって、運営の管理の盲点がどこにあるのかを冷静に、まさに30歳なりの大人の視点で見極めていたのです。
その推理の結果が、ドームの地下駐車場です。
ここはメンバーのSNSに頻繁に登場する場所ですから、このおっさんに限らず、オイラですら、ああ、あそこねと思いついてしまいます。逆に、ここしか思いつかなかったのであれば、どこにでもいるファンと大して認識は変わりません。
しかも、オンライン握手会の会場がHKT48劇場であることも、ファンたちには周知の事実です。知らなくても、当日のSNSの画像や動画からすぐに推察できます。メンバー全員丸ごと網にかかる、非常に効率的な場所だったのです。
では、今まで事件など起きなかったのは、思いついても誰も実行などしないからです。立ち入り禁止区域にドヤドヤとおっさんが侵入したら、あっという間に警備員に見つかります。どんな距離感を誤ったキモヲタだったとしても、そんなアホなことはしないのです。
しかし、彼はやっちゃったんです。
当たり前ですが、見つかりました。警備員にも、男性スタッフにも、ウロウロしているところを発見されたのです。
このおっさんはXのポストや報道などからわかりますが、これに限らず、接触未遂はいくつもあって、当然、会ってしまったメンバーは運営に報告しているでしょう。会うはずのない場所で会っているわけですから。
運営も、メンバーも、表立って警告しなくても、あいつヤバいという認識だったに違いありません。
案の定、地下駐車場のエレベーターホールで見つかっちゃったわけです。男性スタッフは前日、ここで「出禁」をほのめかしています。この日、メンバーは水際で守られました。
本当にファンなら、ここで終わりです。出禁になったら、あらゆる劇場公演、ライブ、イベント、みんな入れません。普通、ここでおとなしく撤退するはずです。
ところが、翌日もおっさんはのこのことやってきました。
しかも、同じ場所にです。
本気でメンバーを殺したいのであれば、そんな愚はおかしません。見つかるに決まっているじゃありませんか。
おっさんは、そんなこともわからないほど、認知が歪んでしまっていたのです。
これまた案の定、おっさんはあっさりと男性スタッフに見つかりました。
そして、殺傷に及ぶのです。
逃亡する途中に鉢合わせしてしまった女性には、同情するしかありません。HKT48とは何の関係もないのに。
おっさんの供述で「警備が甘いところを狙った」などというのがありますが、そんなわけありません。甘ければ、誰にも阻止されません。
実際、おっさんはメンバーに近づくことすらできず、手を触れることすらできず、エレベーターホールで見つかって、男性スタッフからお灸をすえられたのです。
水際で、メンバーへの殺傷は阻むことができました。
前日、おっさんを見かけたことが、翌日の警戒にもつながっています。運営はさぼってはいません。確実に不審者を見つけ出し、水際で侵入を阻止したのです。警備が甘いどころか、真正面からやってきた不審者を、真正面で止めたのです。
想定外は、ナイフの所持です。
当日の詳しい状況はわかりませんが、不審者対応は複数スタッフを配置すべきなのでしょうね。「出待ち」に対する対処も、猶予を与えず、より毅然とすべきでしょう。
「警備が甘く、メンバーを殺せると思った」――。福岡県が拠点のアイドルグループ「HKT48」の男性スタッフら2人が刺された事件で、殺人未遂容疑で逮捕された同県糸島市の無職、山口直也容疑者(30)は複数のメンバー襲撃を計画していたとされる。近年、アイドルのイベント会場は警備強化が進むが、狙われたのは会場外の警備の死角だった。重傷を負った男性スタッフの機転によりメンバーは無事だったものの、関係者の間に動揺が広がっている。
さて、ここまで読んだあなたは、地下駐車場が「警備の死角」だと思っただろうか。
少なくとも、「死角」と思っていたのは、犯人のおっさんと毎日新聞の記者しかいなかったのではないか。
こんな目立つ、警備の真正面から攻めて、突破できると思った犯人がアホなのではないですか。
逆に、どうすれば事件が防げたと思っているのでしょうか。
さらに、有料記事なので中身まではすべてわかりませんが、見出しに「距離の近さが裏目に」とあります。
そお?(苦笑)
距離、近い?(苦笑)
だって、この日、劇場で開催されていたのは「オンライン握手会」でしょ。タイトルは「握手会」だけど、客とメンバーはお互いスマホ越しで、指を触れることすらできないのです。
いったい、何が裏目に出たのでしょうか。
メンバーを道連れにしようとしたのに、指一本、触れることもできなかったのです。接近すら阻止されています。
距離が近い?
どのくらい、近いのですか(笑)
かつてHKT48の追っかけをすると、その距離の近さに慌てることがありました。というのも、メンバーはもちろん、ファンも福岡だけでなく、東京はもちろん、全国各地に移動するわけです。
かつて、AKB48グループの全盛期は、毎週のように握手会がどこかで開かれていました(現在はグループごとに別個に行われています)。そこにツアーやライブが重なれば、ほぼ毎週末、メンバーの向かう場所にヲタクも移動することになります。
空港から飛行機に乗ったら、メンバーもいっしょだったなんて、ざらにあったわけです。
オイラも、何度か、推しメンである村重杏奈に遭遇してしまいました。
あーゆータイプですから、よおっ!て感じです(笑)
福岡空港で、羽田からの京急の切符を買っていたら、すぐ横に田島芽瑠がいたとか、空港内のカフェでコーヒー飲んでいたら、なこみくがキャッキャと搭乗口に移動していったなんてこともあります。
そう。
近い。近すぎるのです。
しかし、そこでメンバーと話し込むなんてことはめったにありません。握手券のまとめだしじゃあるまいし、デリカシーがなさすぎます。
福岡は狭い街です。夏の風物詩である、あのイベントや、冬のなるとみんなが訪れる博多駅前の、あのイベントとか、メンバーがそこにいてもおかしくない。実際、遭遇しちゃったなんてことはあり得る。
ご当地アイドルは、そういう地政学的に危うい舞台でたたかっているわけです。
ですから、運営側、アイドル側にも自制心が必要ですが、ファンも相当、自制心を養う必要があります。そして、HKT48の場合、危うい条件ではあっても、意外なほどアイドルとファンとの距離は常識的であったと思っています。
ところが。
主要メンバーが卒業し、グループとしての盛り上がりも一段落してしまうと、これまでの距離感にも変化が生まれます。
例えば、これまでの個別握手会は、現在では東京と福岡で、それぞれ年1回程度(各2日)しかない。年間4日間くらいしか、いわゆる〝接触イベント〟がない。
ハイタッチ会(昔でいう全国握手会ですか?)も、東京と福岡でそれぞれ年1回程度ではないでしょうか。
親グループとの合同握手会、イベントもありません。
こうやって接触機会が減ると、アイドルとの距離なんて埋まりようがない(ファンの側の勝手な精神的距離は別ですが…)。
相手が福岡となると、〝会いにいけるアイドル〟に会いに行くのも一苦労です。劇場公演くらいしか、メンバーに顔を覚えてもらえる機会がない。しかし、数百人が暗闇で参加する劇場公演で顔を覚えてもらうのは、これまた至難の業です。
正直、今のHKT48はかつてのように、「距離の近さが裏目」に出るほど、アイドルとの距離を詰められないのです。
あえて言えば、SNSがその距離感を混乱させている。
SHOWROOMのような投げ銭機能は、ファンの側の勝手な距離感を妄想させるには絶好の場です。
ただ、今回の事件の犯人は、投げ銭でタワーをどんどん投げるほどの財力がなかったのではないでしょうか。
逆にXではネカマをやっていたくらいですから、おっさんにとっての距離は、まさにリアルな距離でしかなく、よって「警備の甘い」出入口から侵入して接触するいか手がなかったのだと思います。
毎日新聞の記者が「距離の近さが裏目」と書いたのは、記者本人が現在のヲタ活の実態を知らないからです。
あのおっさんは、距離の近さが裏目に出て刺しに行ったのではなく、距離が遠いから、ああやって近づいたら、男性スタッフにあっけなく阻止されて、ナイフで暴れたのです。
メディアが警察発表だけ鵜呑みにして、おっさんの供述を頼りに記事を書くから、こういう誤解が生まれるのです。
ネットには、いわゆる〝秋元商法〟を持ち出して事件を評価する人たちもいます。これも、大きな誤解です。
各種の報道から明らかなように、おっさんは逮捕当時「無職」で、生活がひっ迫して人生に展望が持てなくなり、アイドルを殺して〝自爆〟しようとしたのです。
つまり、無敵の人です。
おっさんは無力で頭も悪いから、ヲタ活を控えてまじめに働こうとはならなかったのです。手元の金がなくなり、どうしようもなくなり、人生にも悲観し、しかし、強いやつらに立ち向かうような度胸もないので、よりにもよって無抵抗なか弱い10~20代の女子という、弱い存在を傷つけようとしたのです。
こういう無敵の人は、彼に限らず、これまで何度も世間を震撼させました。
〝秋元商法〟とは関係ないのです。彼は、どのみち人生が破綻し、どこかで自分より弱い相手を殺傷することが運命づけられていました。
この事件の原因を、〝アイドルとの距離感〟〝接触商法〟に結びつける議論は非常に乱暴で、現実を見ていないと言わざるを得ません。
あのおっさんが東京にいれば、標的はフルーツジッパーだったかもしれない。あいみょんだったかもしれない。
たまたま、彼の住んでいた街に、HKT48がいたのです。
アイドルイベントに限らず、無敵の人がそこにいれば、日本のどこが標的になってもおかしくない。政治家や皇室かもしれない。そういう事件だったという認識が求められます。単に、アイドル運営が警備を強化すりゃいいことではないのです。
さて。
事件以来、HKT48は、観客を入れた劇場公演を中止しています。
まずは、メンバーのケアが最優先で、妥当な措置です。ただ、この事件以前に、今年は劇場公演が開催できない期間があったこともあって、メンバーにとってもファンにとっても悔しい1年になってしまったことは否めません。
卒業を控えているメンバーもいます。
どうか、運営会社はアイドル・ファーストで優先順位を決めていただきたいです。
急がないで、納得できる対処を施してから、劇場公演を再開していただきたい。
慌てる必要はありません。
そもそも、この事件は、想像される惨事を未然に防いだ事案なのだということを、運営とアイドル、ファンとの共通認識にしていただきたいと思います。そのうえで、犯人の特性からして防ぎようのなかった事案でもあると理解してほしい。
来年、HKT48の復活を心待ちにしています。
