第3話 魔王との再会

 

 アレンがハルバンドール王国の城下町にある地域包括支援ギルドでの活動に慣れ始めた頃、ある日、街の噂が彼の耳に届いた。それは、かつての魔王マルゴスが再び現れたというものだった。彼はかつて、モンスターや人間たちを恐怖と力で支配し、仕事を与えてその見返りに報酬を与えていた恐ろしい存在だった。各王国の王たちは、魔王マルゴス軍に大いに恐怖を感じていた。

アレンはその噂を聞きつけ、すぐにマルゴスがいるという場所に向かった。彼がたどり着いた先にいたのは、かつての威厳を失い、衰弱しきった魔王マルゴスの姿だった。虚ろな目でかろうじて息をしているその姿に、アレンは目を疑った。

**黒森の廃城**
 マルゴスが住んでいた場所は、「黒森の廃城(Darkwood Ruins)」と呼ばれる古びた城でした。この廃城は、ハルバンドール王国の北部に位置する深い森の中にあります。かつては魔王マルゴスの本拠地であり、その威厳と力を誇っていましたが、現在は朽ち果て、荒れ果てた姿をしていました。

廃城の周りには、巨大な木々が生い茂り、常に薄暗い霧が立ち込めています。森の中には、まだ魔王軍の残党が潜んでいるという噂もあり、一般の人々は近づくことを恐れていました。廃城の外観は、崩れ落ちた石壁や草木に覆われた塔が立ち並び、かつての栄光を感じさせるものでした。

**マルゴスとの再会**
 アレンが廃城にたどり着いた時、彼はかつての敵である魔王マルゴスと再会することになりました。廃城の広間には、破れたタペストリーや壊れた家具が散乱しており、廃墟感が漂っていました。その中央に、衰弱しきったマルゴスが座っていました。

「久しいのう、勇者アレン…」と、マルゴスはかすれた声で言いました。「わしを倒して手に入れた世界は、どうじゃ?平和とは、いかなるものよ…」

アレンは答えに迷い、しばらく言葉を探していました。魔王を倒し、平和を取り戻したことで、マルゴスの支配という資本主義を壊したことで失業したモンスターや魔王軍が増えた。各王国はナショナルミニマムの考えに基づき、全ての人に最低限の援助を与えていた。ただ、与えられるだけの世界は、争いもなく平和な世界だったが、アレンは何か物足りなさを感じていた。

「マルゴスさん、わたしは、社会福祉士に転職しました」とアレンは静かに答えました。「正直、あなたの野望を打ち砕くことが本当に正しかったのかは、分かりません。しかし、今は、人々が安心して暮らせるように全力で支援しています。」

マルゴスは虚ろな目でアレンを見つめ、「そうか、勇者よ。わしが支配していた時代には、恐怖と力で秩序を保っていた。しかし、今の平和な世界はどうじゃ?本当に人々は幸せなのか…」と問いかけました。

アレンは深く考えた。マルゴスの言葉には一理ある。彼が支配していた時代には、仕事と報酬があり、人々はその中で生きていた。しかし、平和な世界では、生活保護に頼らなければならない人々が増え、安定した仕事を見つけることが難しい現状があった。

「マルゴスさん、わたしは今、地域包括支援ギルドで働いています。多くの人々が生活に困っており、その支援を通じて少しでも役立てることを願っています」とアレンは言いました。

マルゴスはかすかな笑みを浮かべ、「勇者よ、お前が新たな道を見つけたことは喜ばしい。しかし、わしの支配が終わったことで失われたものも多い。それを考えるのも、お前の役割かもしれぬ」と言い残し、再び静かに目を閉じました。

アレンはその言葉に胸を打たれ、これからも社会福祉士として人々の支えになることを決意しました。かつての敵であるマルゴスとの再会は、彼に新たな気づきをもたらし、さらなる成長への道を示しました。

こうして、勇者アレンは新たな使命に向けて歩みを進めるのでした。