統一球問題で、加藤良三コミッショナーは臨時に開かれた、12球団代表者会議で「大変な失態」と謝罪した。今後は新設する第三者委員会で真相を究明することとなった。
今回の事件にて究明すべき「真相」とは何か?
二つある。
①一つは、加藤コミッショナーの責任問題だ。
今回の統一球の「微調整」を、本当に加藤氏が知らなかったのかどうか。隠ぺいの指示は加藤氏から出たものではなかったのか。
要するに加藤氏が「嘘をついていたか、否か」の問題。
しかし、こっちの「真相」は、加藤氏が辞任する前提でいえば、あまり重要ではない。
むしろそのことよりも、
過去2年間、NPBで使われたボールはどんなものだったのか、ということが明らかになってほしい。
昨日の日刊スポーツ
NPBは14日、これまでの統一球反発係数の検査結果を公表した。2011、12年の計7度の検査では全て、平均値が目標の0.4134を下回ったが、許容範囲として認められている下限の0.4034よりは高かった。ことしの2度はいずれも0.416だった。
正直言って、NPBの発表が「嘘」でないとは言い切れない。今は、彼らの隠蔽体質に鑑みそういう色眼鏡で見てしまう。
それを置くとしても、昨日発表されたデータによれば、統一球は大部分が反発係数の下限を下回っていたのだ。
統一球は、NPBの公認球をWBC、MLBなどでの使用球に近づけて、国際社会での日本人選手の違和感をできるだけ少なくすることが目的だった。
しかし、昨年、日本で行われたMLB開幕戦の前に行われたエキシビションゲームで、MLB球を打ってみた日本の打者は「統一球はMLBの球より飛ばない」と語っていた。
今回の発表は打者たちの実感を裏付けている。
NPBの打者たちは、必要以上に不利な条件で戦っていたことになる。
それが許容範囲かどうかは別にして、MLBやWBCの使用球に比べてどれだけ「飛ばなかったのか」を明らかにしてほしい。
②こうしたことが事実であれば、ミズノの製造者責任はまぬかれないと思われるが、どうなるのか。
NPBはいつの時点で「反発係数が異様に低い球がある」と報告を受けていたのか。それに対し、加藤氏はどのように対処したのか。
加藤コミッショナーは、大リーグ通として知られている。就任時から、NPBをMLBの環境に近づけることに大いに熱意を持っていたと思われ、様々な策を講じてきた。
統一球はそうした加藤氏の思いから生まれたものだ。
しかし、どんなに野球好きであっても、結局、素人は素人だった。
熱意があろうとも、そこに経験、実行力が伴わないうえに、優秀な部下がいたわけでもなかった。
「反発係数を下げる」ということが、どれだけ難しいかを知らなかった。そこに1社で使用球を独占したいミズノの意向が相まって、このようなことになってしたったのではないか。
実態としてNPB事務局は、単なる「事務処理機能」しか持ち合わせていない。事業を推進したり、制度を改革したりする能力はないと断じざるを得ない。そんな中で、素人の加藤氏が旗振りをしたことが、今回の不祥事を招いたのではないだろうか。
加藤コミッショナーは「迷惑をかけたことは大失態だった」と、ファンや選手に謝罪したが、自身の辞任については、重ねて否定した。
確かに後任人事は難しそうだが、コミッショナーとしての最後の仕事は、不始末の責任を取ることではないだろうか。
そして今回の反省から、本当に有能な人材による、ヘッドクオーターとしてのNPB機構を構築すべきではないか。